第204話 作戦会議
俺達はカタリーナの執務室に通された。そこで防音の魔道具を発動させた。
「今回は結構厄介になりそうなのじゃ」
カタリーナは部屋に入るなりすぐに話し出した。
「そんなに魔物の数が多いのか?」
ハワードがカタリーナに聞き返すと机に地図を広げた。
そこには王都が中央にかかれている。
「現在王都を中心に四ヶ所から魔物が攻めて来ているのじゃ」
カタリーナの説明では南にあるトライン街を除き、東、北東、北西、西の四ヶ所から魔物が攻めてきていた。
この間も思ったが、なぜ南のトライン街周囲は魔物が活発にならないのだろうか。
「まず、各々指揮官を立てる。北東はハワード、北西と西を騎士団と魔法士団に頼む。それで東は我が指揮をとるのじゃ」
東と北東はカタリーナとハワードが指揮する冒険者組、北西と西はマルヴェインとセヴィオンが指揮することになった。
「あのー、この話に私達は必要ですか?」
ガレインが申し訳なさそうに手をあげると今度は俺達に指示を与えた。
「ガレイン、ケント、ラルフを中心に救護班として王都周辺で活動を頼むのじゃ。ちなみに仮冒険者以外にも聖教ギルドにも頼んでいるところじゃ」
怪我人の治療も含めて、俺達は王都内で待機することになった。
ただ、聖教ギルドが絡むって言われるとどこか受け入れ難いところはある。
「わかりました。では私達は王都で待機してればいいんですね」
「念のために護衛を数人付けれないか?」
ハワードの一言にカタリーナは首を傾げた。
「ここに来る前にある貴族が襲われている。何か別のところで物事が動いている気がする……」
「なら魔法士団から数人護衛として送ろう。新人だがベズギット魔法国の卒業生だから大丈夫であろう。あとはケント達とも仲は良いからな」
セヴィオンはカタリーナに告げるとそれを許可した。たぶんゴードン達のことだろう。
「ケントの周りでは何かしら問題が起こるからな……。念のために冒険者のマルクスも王都に置いていくのじゃ」
しばらくすると話は無事に終わった。まずは救護施設と待機場所の確保が優先となった。
その後準備ができた隊から進行することとなった。
♢
日が暮れ出した頃にはマルクスを含む俺達は王都北側の門近くに待機していた。
基本的には前線に出ている負傷者が離脱後に治療する手筈となっている。
「よっ、また会ったな!」
挨拶してきたのはゴードンだった。その後ろにはいつものように同期の二人もいた。
「ケントこいつらは誰だ?」
冒険者であるマルクスは魔法士団のゴードン達のことを知らなかった。ただ、服装からして魔法士団と認識していたがあえて聞いたのだろう。
「この人達はセヴィオンさんの部下で魔法士団の方達です」
マルクスは一度強く三人を睨んだ。
魔法士団に所属しているということは、本来は貴族だから警戒しているのだろう。
「ああ、挨拶が遅れました。私達はセヴィオン様から指示を受けたゴードンと申します」
ゴードンはマルクスの前に手を出した。
「ああ、すまない。こちらこそよろしく頼む」
それに応えるようにマルクスはゴードンの手を握った。
「ゴードンさん、オラの時と態度が違くないですか?」
ラルフがゴードンに突っかかると彼は鼻で笑っていた。
「君達は見た目からして弱そうだからね。クレイウェン王国は身分や種族の違いに対しての差別はあるが、一番は強さが重要だからな。強い者に対して礼儀がなってないのは貴族としての醜態だよ」
単にマルヴェインやセヴィオンが戦闘狂や脳筋ってことではなく、この国自体がスキル重視で能力や強さによる差別が一番大きいことを再認識した。
「だから今はこんな接し方だろ? むしろ今回俺達は必要なのか?」
ゴードンがそう思うのは仕方なかった。
それだけマルクスが冒険者として実力があるのが伝わっていた。
「まぁ、護衛は僕達だけじゃないですからね」
俺が指を差す方には異世界病院に所属している医療スキル持ちの孤児達がいた。
「そういうことか。それと聖教ギルドの奴らには気をつけろってセヴィオン様からの伝言だ」
それは俺も同意見だ。あの事件から関わることも避けたいぐらいだ。
「わかりました。私がいるので少しは良いかもしれないですが気を付けておきます」
あの後聖教ギルドから何も言ってこないのはガレインがいたことに気づいていたからか、あの男自体に力がなかったかのどちらかだろう。
「ではそろそろ私達も待機場所に向かうとしますか」
周りの準備が整ったため、俺達異世界病院所属のメンバーを含む仮冒険者達も待機場所に向かった。
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