第137話 決意 ※ガレイン視点
私は二人の話を聞いて呆然とした。今までこんな人達が現実に存在するとは思わなかった。
孤児院で生活が出来るだけ、食事を与えてもらえるだけでも幸せなことって二人は言っていた。
外れスキルでウジウジとしていた私がどれだけ幸せ者だったのだろうか。
そして貴族会の憧れの存在でもあり、私にスキル関係なく優しく接していたアスクリス公爵家がそんな人だったとは……。
「二人がそこまで言うってことは嘘では――」
「嘘をつく理由もない」
二人の顔はいつもに増して真面目な顔をしていた。
この二人は王族の私に隔てなく親身に接してくれる。そんな二人が私に嘘をつく理由も思い当たらない。
「だから俺達もどうにかしたいけど、俺もラルフも今はそんな力もない。今のガレインの話しを聞く限りでは最悪俺達は反逆者扱いになっちゃうしね」
「ははは、苦しめられてるのはオラ達だけじゃないとはね……。ほんとにどこまでオラ達最下層民を苦しめたら気が済むんだろうな」
そんな二人を見て何もできない私に無性に腹が立った。だから私はすぐに立ち上がった。
「二人の力になれず申し訳ないです」
「いやいや、ガレインは何もやってないから謝らなくてもいいでしょ」
私は頭を下げたが二人はそれを止めようとした。それでも私は顔を上げられなかった。
「何もやっていないのはその通りです。私は何もやってないし、力もないからこれぐらいのことしかできない。でも、二人の話を聞いてどうにかしないといけないと思った」
「ガレイン……」
このままでは私は大事な友達を助けることができない。結局何もできずに傍観する人になってしまう。
私はそんな人になりたかったのか……。
いや、私はみんなを守れなくても必要としてくれる友達だけでも守れる力が欲しい。
「私は……貴族会にスキルが使えるようになったと公表します」
「えっ? でもそれじゃあ貴族同士の争いに……」
「そこは王である父上と協力します。幸い兄さん達とは仲が良いですからね。まずは私自身の価値を上げて、いつかはアスクリス公爵家を止めようと思います」
きっとアスクリス公爵家を止められるのは王族である私達しか無理だろう。
「だから私は私の方法で二人に協力しようと思います」
するとケントは拳を突き出した。
「俺、ケントは亡き冒険者クロスのため、そして外れスキルの子ども達のために!」
「俺、ラルフは亡き家族のため、そしてスラム街の人達のために!」
二人は私の方を見た。私も覚悟を決めないといけないのだろう。
「私、ガレインはこの国の民のため、そして自分自身のために!」
私が拳突き出すと互いに拳を押し当てた。
「未来永劫全ての人が幸せになれるよう、今後の将来に祝福あれ」
私達はこの日初めて今後の未来に向けて決意を固め、お互いを祈るように拳を打ち付けた。
後にこの話は異世界病院の教科書に載ったのかどうかは今後の話でわかるだろう。
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