第136話 公爵家
今日はガレインに呼ばれて、ラルフとともに王城に来ている。
「ガレイン久しぶり」
ガレインと会うのは約三週間振りだ。
「すぐにこっちに来てください」
王城に着くなり人気がいない道を通り、奥の部屋に案内された。
部屋に入ると扉に何かをつけ、それに魔力を込めていた。
次第に部屋全体が魔力に包まれている感覚を感じた。
「今何をしたの?」
「この魔道具は防音になる魔道具で、魔力を込めると魔力の壁が部屋全体に広がるんだ」
「そんな魔道具あるんだね」
「ってことはオラ達に何か大事な話があるってことだよね?」
ラルフの問いかけにガレインは頷いていた。
その手には数枚の紙を持っていた。それを机の上に置いて話し出した。
「これは王城で管理されている孤児院の運営費とこっちが孤児院が実際に受け取っている運営費です」
俺達が渡されたのは孤児院の運営費が書かれたものだった。
俺達がいない間にガレイン孤児院と王城内部で情報を集めていた。
王城で管理されている方は月一枚の大金貨と四十枚の金貨だった。でも実際に受け取っているのは四十枚の金貨のみだった。
大金貨は一枚およそ日本円で百万円程度の価値がある。それがどこかで着服されているのをこの紙は物語っていた。
「それで誰が着服してるかはわかったのか?」
「そこまではまだわからないんです。ただ、財務大臣は父上が選んでいる人だから着服以前にお金には厳しい財務省自体が何かすることはないと思う」
この国の財務省は財務貴族と言われており、大体は計算系スキルを持った貴族たちがこの財務貴族と言われている。
必要なお金を財務省が管理し、各部署にお金を振り分けることになっている。
それに合ったスキルの子ばかり生まれてくる貴族のため着服なんてやってしまえば生きていけないらしい。
「ってことは財務省も問題なければ、その後の部署先に問題があるということだよね?」
「そういうことです。ただその貴族の権力も高いので力がない私では何も出来ないんです」
スキルが使えないという扱いになっているため、王位継承権も三番目なのにも関わらず、現在もガレインにはほぼ権力がない状態になっている。
実際には王に報告すれば問題ないが、周りの貴族に反対されれば王も動きにくいのだろう。
「その貴族ってどこですか?」
「マーベラス・アスクリスです。アスクリス公爵家で元々王族の血を引く分家になります」
「ん? どこかで聞いたことあったかな?」
俺は聞き覚えがなかったが、ラルフはその名前を聞いた途端になぜか震えていた。
「ラルフ大丈夫ですか?」
「ああ、ごめん。続けてくれ」
「アスクリス公爵家は貴族としても敏腕で、今は領主と王都の一部を運営している。さらに奥さんとは恋愛結婚しているため、貴族会の中でも憧れの存在でもある有名な方ですね」
「あいつが憧れの存在?」
ラルフは歯をくいしばり、苛立ちを抑えようとしていた。
「ラルフひょっとして……」
俺はラルフの態度に驚きつつも、確認するとラルフは頷いていた。
--マーベラス・アスクリス
俺を奴隷時代に助けてくれた、元冒険者クロスとラルフの家族を殺した男だ。
「二人とも大丈夫ですか?」
態度が変わった俺達をガレインは心配していた。
「ガレインだから言うけどあとは自分自身でどうするのか考えてくれ」
ラルフは自身の生い立ちを説明し、それに続いて俺の奴隷時代を話すことにした。
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