第126話 家庭に一人は必要です
翌日俺達は王都の門前で集まっていた。
門前に今回トラッセン街行きの馬車乗り場があるからだ。
「おはようございます」
着いた頃には破滅のトラッセン達は既に待っていた。依頼を受けるのに事前に打ち合わせをしていたのだろう。
「ケントくん、今回もあれをお願いね」
気づいてすぐ声を掛けてくれたのはリチアだった。リチアのお願いとはきっとお風呂であろう。
「ちゃんと持ってきました」
「楽しみながら故郷に帰れるわ」
御者に挨拶をして乗り込むとそこには一組の家族が乗っていた。
「ではトラッセン街へ向かいます」
御者に声をかけられると馬車は動き出し、王都の門から出発した。
♢
王都からトラッセン街まで二日程度のため俺は馬車の中でゆっくりとしている。
医療ポイントがちょうど貯まり念のために異次元医療鞄の容量を増やした。
これで異次元医療鞄の中身は五枠となった。
――――――――――――――――――――
スキルツリー『Lv.2 異次元医療鞄』
空間に異次元の医療鞄を出すことができる。
[ポイント消費]
※医療ポイント100消費で必要医療器具および機器が解放可能。10消費で容量を増やすことができる。
1.打診器(テイラー式)
2.角度計
3.大樽
4.中樽
――――――――――――――――――――
「君達は何しにトラッセン街に行くんだい?」
前に座っている男性が俺に声をかけてきた。
「冒険者ギルドの依頼でトラッセン街に行くことになりました」
「はは、そうか。私達も小さい頃からトラッセン街に住んでるけど良いとこだぞ」
一緒に馬車に乗っている四人は家族でトラッセン街から王都に行き、現在は帰っているところだった。
「トラッセン街ってどんなとこなんですか?」
「トラッセン街は養蜂業と養蚕業が盛んな街だよ」
「両方とも虫ですか……」
虫だと聞いて特に嫌いではないものの若干行く魅力が減った。奥に海があるのなら海産物などが特産品だと思ったのに……。
「虫って言っても昆虫型の魔物と共存しているんだ」
「魔物と共存?」
「そうだよ。彼等は魔力を餌に魔力を含んだ物を作ってくれるんだ」
養蜂業では、魔力を含んだ蜜を作り養蚕業では魔力を含んだ糸を作る。どちらも名前に魔力が付き、"魔力蜜"と"魔力糸"と言われていた。
どちらもこちらから襲わない限り攻撃することはないようだ。
「魔力蜜は回復ポーションに入れれば、回復効果は高まるし、魔力糸で作った装備は魔法に強くなるんだ」
男性の話からはすごく実用性が高いものだと理解した。
「うちはどっちもしているから良かったら遊びに来てね」
「時間があれば行ってみようと思います」
話をしていると自然に時間も経ち、馬車は野営をする場所に止まった。
「今日はここまでだ。テントと干し肉を渡すから各々受け取ってくれ」
御者から人数分のテントと布団、干し肉を渡された。
すると護衛をしていたリチアは近づいてきた。
「ケントくーん! 今回もお願いします」
リチアが急に来て頭を下げたためトラッセン街から一緒に乗っている男性も驚いていた。
「この少年がどうかしたんか?」
「ケントくんは一家に一人欲しい便利屋ですよ」
「便利屋って……」
リチアの説明に呆気に取られていたが、事前にある程度は準備していた。
「私達がお肉を取ってくるから、マルクスさんはこの辺の護衛をお願いします」
「わかった」
「おじさん達もケントくんのご飯食べるなら取ってくるけど?」
「じゃあ、私達もお願いしようかな」
いつのまにか話が進み、俺は全員分の食事を準備する羽目になってしまった。
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