第118話 勉強会

 食事を終えた俺達は食堂をそのまま借りて外れスキルの子を集めた勉強会をすることになっている。


 道具は全てガレインのお小遣いで持ってくると言っていたがさすが王族の財源の確保と準備だ。

 

 今後は各々で依頼費の一部を貯金し、異世界病院の運営費や道具費として集めていく方向性だ。


 今回用意した道具はノートとペン、そして黒板がわりに異世界版のホワイトボードを持ってきていた。


――通称"魔力ボード"


 名前通りの物で学校では普通に使われている一般的な物らしい。


 文字を書くときは自身の魔力を指に集めて書くことでき、消す時は魔石に魔力を流すことで自動的に魔法が発動、消してくれるという簡易的な魔道具だ。


 ちなみに魔石は魔法を使う魔物から得ることができるものだ。


 人は少なからず魔力は有しているため少しの魔力で済む便利魔道具らしい。


 子ども達は勉強より新しい自分の道具をもらえたことと見たこともない魔道具に驚いていた。


 俺も事前に使い方を聞いた時は一人でテンションが上がっていたからな。


「あっ、全部消えちまった」


「お兄ちゃんしっかりしてよー!」


 使い方もいまいちわからなかったため、使い方からガレインに聞いてやっと覚えたが、黒板とは異なり、一部分を消すということが出来ない。


 だからこそ見やすく書くことが必要になりそうだ。


「まずは医療スキルって言ってるけど、医療は何か説明するね」


「医療とは人間の健康の維持や回復、促進などを目的とした活動のことを言います」


 ラルは手を挙げて質問をした。 


「ケントくん、私達がコルトンさんにやってる介護はどれに当たる?」


「介護は健康の維持って部分が強いかな。どうしても生活できない人の手助けをするって意味が強いから維持になると思うよ」


 概要から説明しているが俺もあまり習ったこともないし、そもそも医療と言われてもパッとしないのが現状だ。


 三人組少年のうち、俺と同じ【理学療法】のマークが手を挙げて発言した。


「兄ちゃん、俺らのスキルはリハビリ関係って言ってたけどリハビリは何になる?」


「リハビリは基本的に回復という印象が強いけど健康の維持って部分も大きいんだ。例えば、冒険者で魔物に殺されそうになっても生きてる人は居るよね?」


「んー?」


「前に住んでるおじさんがそうだよ」


 悩んでいるマークにウルが答えていた。


「あっ、あの人か! 足が片方しかないから代わりの物を付けてるもんね」


 孤児院の前に住んでる夫婦の夫が冒険者の依頼中に魔物に襲われ、左脚を切断したとウルが話をしていた。


 教会に行くにもお金がかかるため何か理由があったのだろう。


 今は義足のようなものを使っているらしいが俺も実際に見たこともないため気になっている。


「そういう人にとっては回復というよりは維持になるのか」


「だけど何かしらの原因で動けない人に対して、動けるようにリハビリをやっていけば回復にはなるかな。まぁ、今は医療って言葉を知って貰えばいいよ」


「じゃあ医療は人を治すことだとすると、まずは人の構造を知らないといけないですよね」


 俺はラルフを呼ぶと前に出てきてスキルを発動させた。


 すると何もない空間から一枚の紙が落ちてきた。


 それを拾うと魔法ボードに貼り付けた。


「これは人間の骨格構造です」


 貼り付けた紙には全身の骨格構造がうつしだされていた。


 そうレントゲン画像だった。


 ラルフは回復ポイントが貯まり自動的に新しいスキルを習得していた。


――――――――――――――――――――


《スキル》

固有スキル【放射線技師】

医療ポイント:5

回復ポイント:0

Lv.1 透視の目

Lv.2 画像投影

Lv.3 ????

Lv.4 ????

Lv.5 ????


――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――


スキルツリー『Lv.2 画像投影』


 医療系スキル放射線技師の専用スキル。透視の目で見たものを画像として、紙に投影することができる。投影できる内容は様々。


※医療ポイント200を取得すると自動解放される。


――――――――――――――――――――


「人ってこんなに骨があるんだな」


 ガレインはレントゲン画像を見て驚いていた。


「人の骨っていくつ有ると思いますか?」


「はい! 5個!」


 マークは手を挙げて答えた。いくらなんでも少なすぎる。


「うん、マークはスライムなんだね……」


「はいはい! 100個!」


 スキル【作業療法】のエルクが答えた。


「うん、エルクはマークと違って人間になったね。でもまだまだだなー」


 質問式の勉強は子ども達の興味を引いていた。今まで学ぶことがなかったからか知らないことに対して意欲的だ。


「じゃあ、ミィは300個!」


「そんなはずないだろー! ミィ言い過ぎだよ」


「ミィは300がいいもん」


「正解だがミィはほぼ合ってるぞ!」


「ほら!」


「兄ちゃん絶対嘘ついてる! ミィに300個もあるはずないじゃん」


「実は諸説あるけど赤ちゃんの時は約305個の骨があり、成長すると次第に骨がくっついたり、減ったりすることで約206個になると言われてるんだ」


 解答に子ども達は驚いていた。反応があるということはしっかり集中して聞けているようだ。


 その後も質問形式で解剖学を教えて、休憩を途中入れがら二時間が過ぎていった。


「じゃあ、今日はここまでです」


「ありがとうございました」


「今度はコルトンさんに協力が得られそうであればみんなにも介助をやってもらおうと思います。その時はウルとラルが先生になるので準備だけしておいてください」


 急に言われたウルとラルは驚いていたが、俺は本人達がアウトプットする環境として計画していた。


 実際に一般知識に関してコルトンに教えてもらった方がスキルの影響で知識になる。


 勉強が終わった子ども達は急いで他の子ども達が遊んでいるところに戻っていった。


「ケントお疲れ様」


「ラルフとガレインには助けられたよ。ありがとう」


「いやいや、オラはスキル使っただけだしね」


「私なんて道具を用意しただけだからね」


「まずは無事に終わって良かったよ。来週もまたやる予定だから二人ともよろしくな」


 初回の勉強会は特に問題も起きず無事に終えることができた。

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