第105話 ダブルウィッチ

「リチアさんのせいで怒られたじゃないですか!」


「いやいや、まさか私がダブルウィッチだとは思わなかったからついね」


 リチアは舌をペロッと出して笑っていた。


「ガレもずっと笑わないの!」


「だってこんなこと経験したことないもん」


 俺もこんな火事になるような経験はしたことない。ガレインは楽しそうに笑っていた。


「まぁ、楽しかったからいいんじゃないの?」


 ラルフはラルフで能天気だった。


「シングルでも外れじゃなかったから良かったけどまさかのダブルだからね」


「えっ……魔法使いでも外れスキルってあるんですか?」


 外れスキルに敏感なガレインが話に入ってきていた。


「ああ、それは私も知っているよ。氷属性とか雷属性などがそれに当たるはずだ」


 基本的に魔法使いは一種類の属性を使えるものが多く、シングルウィッチやシングルウィザードと呼ばれている。


 過去に【賢者】のスキルを持つものは基本の六種類である火・水・風・土・光・闇属性の中から光と闇以外が使えるクアドラプルウィザードと呼ばれる者もいたらしい。


 稀に魔法使いでも外れスキルと呼ばれるものが存在しており、その属性はどれも発動することできず、魔法使いなのに魔法が使えないことから【外れ魔法使い】と言われている。


「それだけシングルウィッチでも魔法が使える人が少ないこの国では魔法が発動するだけで有用なのよ」


 リチアは無い胸を張って威張っていた。子ども達が魔法使いに憧れるのはこういうところからだろう。


 そんな中話に入らずラルフはずっとルチアを見ていた。


「ラルフどうしたんだ?」


「んー、やっぱ魔法使いも独特なスキルなんだなと思ってね」


 ラルフは紙にスキルツリーを書き出していた。


――――――――――――――――――――


スキルツリー『Lv.1 魔法の心得』

 魔法系スキルの基本の心得。魔力量に応じて攻撃魔法が可能となる。魔力が少し上昇する。

Lv.1 魔法の心得→制御の心得→?


――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――


スキルツリー『Lv.1 制御の心得』

 魔法系スキル【魔法使い】の魔法の心得。魔法を発動時の魔力をコントロールを行いやすくする。

 魔力を増やすことでコントロールできる容量を増やすことができる。魔力が少し上昇する。

※魔法ポイントを取得すると自動解放される。


――――――――――――――――――――


 そこには俺達と変わらないような書き方のスキルツリーの内容が書いてあった。


 どれもポイントを入手することでスキルツリーが解放され、スキルとしての幅が広がっていくらしい。


「ガレと違うところってやっぱ魔力の制御が無いのと魔力量が増えないってことかな?」


「ああ、多分私のスキルとの違いはラルフが書いたものを参考にするとケントが言う通りで合ってると思う」


 ガレインのスキルにはどこにも魔力上昇や魔力のコントロールということが書いていなかった。


 このことからわかったことは、スキル【魔法使い】の魔力はスキルの影響で魔力量が増加していた。


「これじゃあ、コロポが言っていたことは知られてなかったかもな……」


 魔素が多いところでの生活による魔力の増加は、魔法使い自体がスキルの効果で魔力を増やしていたため、知られることはなかったのだろう。


「ちょっと私だけ除け者にして……他に何かやることはあるの?」


「特に無いと思います。ありがとうございました」


 一人にされていたルチアは少し怒っていたが、ダブルウィッチだとわかったのかどこか機嫌は良かった。


「また何かあったらこのダブルウィッチのリチアを呼んでね」


 検証が終わったため協力してもらったリチアはしっかりご飯を食べて帰っていった。





 今度はガレインとラルフを連れて孤児院の前に来た。


 スキルを知るには外れスキルの宝庫と言われている孤児院に来ることで何か子供達の手伝いになると思っていたのだ。


 また、ガレイン自身に孤児院を見てもらうことで王都の現状を知ってもらうきっかけになると思った。


「あっ、ケントくん」


 ケントは声をかけられた方を振り向くと、そこにはウルとラルが立っていた。


「コルトンさんのとこの帰り?」


「ああ、そうだよ」


 ウルとラルはコルトンさんの介護の帰りにちょうど俺の姿が見えたため声をかけた。

 

「ケント……達何かあったんか?」


 隣にラルフとガレインがいたから何かあったのかと思ったのだろう。


 お互いに自己紹介をして孤児院の中に入ることにした。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る