第104話 魔法使いのステータス

 コルトンの介護に行ってから数日が経ち、特にウルとラルは問題なく毎日が過ぎて居る。


 そんな中、ガレインから手紙が来ていた。


 手紙には明日王都を回るから以前話していたスキルの検証をしたいとの内容だった。


 やっと貴族街から出る許可をもらえたのだろう。


 俺はすぐにラルフと破滅のトラッセンのパーティーに所属しているリチアに声をかけた。


 リチアにはケントの食事とマッサージで交渉するとすぐに話に乗ってきた。


 マッサージをされているリチアは座りながら寝ないように話しかけていた。


「ケントくん今日は何をするの?」

 

「リチアさんのステータスボードをある人に見せて欲しいんだけど良いかな?」


「私の全てを見たいって――」


「いやいや、誰もそこまで言ってないですよ」


 何か誤解を招きそうなことを言っていたためすぐに訂正していた。だが、実際は全て見ることになるのだろう。


――カラン!


 扉の音がすると平民の格好をした少年が入ってきた。


 服装はその辺にいる人と大差ないがどこかオーラは隠しきれていないようだ。


「ケント、ラルフおはよう」


「ガレおはよう!」


 事前にガレインが王族とバレるのを防ぐためにガレと呼ぶように決めていた。


「へへへ」


 笑って挨拶するその姿は完全にどこかの貴族から放たれるオーラだ。


 初めて家族以外に愛称で呼ばれたのか、ただでさえオーラを隠せてないのにガレインは笑顔をばらまいていた。


「やっぱケントくんの友達だから規格外な感じがするね」


「えっ? 俺普通ですよ?」


「えっ? ないない、Eランク冒険者であれだけ魔物に引けを取らずに動ける人のどこが普通なのか……」


「まぁケントはオーガ――」


 ラルフがよからぬことを言おうとしていたためジッと見つめた。


「よし! じゃあ、始めようか。リチアさんはステータスボードを開示してもらっていいですか?」


 マッサージを終えた俺はリチアにステータスボードの開示をお願いした。


「どうぞ!」


 リチアはステータスボードを開示した。


――――――――――――――――――――


《ステータス》

[名前] リチア

[種族] 人間/女

[固有スキル] 魔法使い

[職業] Cランク冒険者


――――――――――――――――――――


「じゃあ、ガレインとラルフはお願い」


「わかった」


 二人は各々のスキルを発動させた。ラルフには色々見えているのだろう。


 しばらくするとスキル【魔法使い】を詳細に紙に書き写した。


――――――――――――――――――――


《スキル》

固有スキル【魔法使い】

魔法ポイント:256

Lv.1 魔法の心得

Lv.2 風属性魔法

Lv.3 火属性魔法

Lv.4 ????

Lv.5 ????


――――――――――――――――――――


 俺次々と書き出すは紙を見て驚いた。


 スキル【魔法使い】にも俺達と同様に医療ポイントと似た、魔法ポイントというものが存在していた。


 きっと医療ポイントと似て消費することでスキルツリーが解放される可能性があるのだろう。


「リチアさんって火属性魔法も使えるんですね」


 リチアは一緒に王都まで移動してた際も風属性魔法しか使っていなかったはずだ。


 ラルフは書いた紙をリチアに渡した。


「えっ、何言ってるの? 私風属性魔法のみのシングルウィッチよ?」


 リチアは冒険者になってから風属性魔法の才能があると判断され、リチア自身も風属性魔法しか使わなかった。


「でもリチアさんから火属性魔法が使えるって見えてましたよ?」


 ラルフはリチアのステータスボードを開示してもらい、スキルの詳細を見ていることを伝えた。


「ラルフくんってスキル【鑑定士】だったんだね」


 一般的にスキルツリーは見ることが出来ないため、スキル【鑑定士】に高いお金を払うことでスキルの詳細を聞くことができる。


 そもそも鑑定士のスキル持ちも少なく、巨額な費用がかかるため、使うのは魔法使い関係のスキル持ちか貴族ぐらいであった。


「それでもラルフみたいに何の魔法が使えるまではわからないよ」


「えっ? そうなの?」


 ガレインの言葉にリチアも頷いていた。


「わかっていたら私もシングルウィッチって言わないわよ」


「一回だけでいいからやるだけやってみてよ? ラルフが本当に鑑定のスキルが使えているか確認するためだと思ってさ」


「できな――」


「ご飯大盛りに――」


「やります!」


 やはり餌付けは重要だと改めて思った。


 リチアは火属性魔法の初歩であるファイアボールの呪文唱えた。


 するとリチアの手元に魔法陣が現れファイアボールが浮かんでいた。


「えっ……ほんとに使えた……」


「ねぇ? ラルフの言った通りでしょ?」


 内心俺も発動するかわからなかったが本当に発動してよかった。


「私もこれでダブルウィッチなのね!」


 リチアは嬉しさのあまり、ファイアボールのコントロールを失うと憩いの宿屋の壁に向かって放ってしまった。


 すぐに反応した俺は水治療法を発動させた。


「リチアさん何やってるんですか!」


「ごめんごめん」


 そんな様子を遠くで見ていたホーランが俺達の元へ近づいてきた。


「あんた達……魔法を使うなら外でやってらっしゃい!」


「すみません」


 俺達はホーランに謝ると裏にある庭に行くことにした。

 

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