外れスキルで異世界版リハビリの先生としてスローライフをしたいが、異世界も激務のようです〜チーム医療で様々な問題を解決します〜

第65話 いざ森へ

――数時間前

「ケントくん助かったわ！」

「うげっ……」

　てっきりプラナスが抱きついたと思ったら既にギルドマスターのマリリンが抱きついていた。

「さすがケントキュンだわ！」

　スキルを使って疲れている俺にさらに大胸筋プレスでかけられ視界が白くなってきた。

「あー、マリリンケントくんが死んじゃいますよ」

　出来れば早く止めて欲しかったものだ。その後は冒険者を運んだ男性と女性に頭を下げられた。俺もまさか本当に助けれるとは思いもしなかった。

　それでもなぜか女性冒険者の顔はまだ顔を曇っている。

「マルクスさんが――」

「マルクスさんがどうかしたんですか？」

「彼は大丈夫――」

「私達を守って一人でバイオレンスベアーと戦っている」

　俺は彼女の言葉聞き逃さなかった。プラナスは彼女の言葉を遮るように話だが、それでも俺の勢いに負けたのか女性冒険者は話し出した。

「マルクスさんのところに行ってきます！」

　俺はマルクスの元に行こうとするがマリリンは強く締め付けた。本気の締め付けは全く身動きが取れないのだ。

　今までは優しくやっていたのだろう。俺の体からは骨が軋む音が鳴っていた。

「お前が行ったらすぐに死んで終わりだ」

　いつもとは違うドスの効いた声がギルド内には響いていた。それでも俺の大事な家族であるマルクスを助けたい気持ちが勝っていた。

「コロポお願い」

　ボソッと呟くとコロポのスキルで俺の存在感は薄くなった。マリリンも急に消えた俺に力を緩めた。

　その瞬間に俺はマリリンの筋硬結に触れた。

「痛っ！？」

　痛みでできた隙間を俺は逃さなかった。そのまま勢いよく冒険者ギルドを飛び出た。

「くそ！　プラナスこの後は任せた！」

「マリリンも気をつけて！」

「狂筋のマリオ……マリリンを舐めるなよ」

　マリリンの声は冒険者ギルドに響いていた。

♢

　必死に走っていると前から大きな鞄を持ったアスクレとラルフが走っていた。

「ケント！？」

　急にラルフが俺に向かって名前を呼んだためアスクレは驚いていた。スキルを使っているラルフには俺の存在が見えているのだ。

　コロポのスキルは視覚を遮断するが、真実を見抜くラルフは誤魔化せない。

「マルクスさんが危ない」

　ケントはそれだけ伝えると門に向かって走った

「アスクレさんは冒険者ギルドに向かってください」

「えっ？」

　ラルフに突然荷物を任されたアスクレだが、彼も冒険者に呼ばれて冒険者ギルドに向かっていた。

　気づいたらラルフは追いつき、異変を感じたボスも合流した。以前、コロポとボスは話してもないのに意思表示が出来ていたことがあった。

　スキルの影響でボスも俺のことが探知できるのだろう。

　門に着くと門番にステータスを見せるとすぐに外へ出てることができた。

　特に門番からは止められることなく、冒険者ギルドから情報はまだ届いてなかった。

　災害級の魔物が出ていれば普通は外に出ることは不可能に近いからな。

　俺は森に向かいながらラルフに冒険者ギルドであったことを説明した。

　マルクスは今も災害級の魔物と一人で戦っている。邪魔になるかもしれないが、少しは時間を稼げる可能性があった。

　また、俺にはコロポの視野を遮断する魔法が何かの役に立つと思ったのだ。

　俺達は森に向かって全速力で走った。