第38話 新武器

 あれから数日が経ち普段と変わらない依頼をこなす生活をしていた。


 狼のボスは頼もしい護衛として受け入れられ俺の番犬として常に寄り添っている。


 それからわかったことといえば"医療ポイント"と"異次元医療鞄"そしてスキルツリー"Lv.3????"の出現だ。


 一つ目の医療ポイントは森から帰った後、ステータスを確認すると医療ポイントは6になっていた。


 翌日にいつもどおりマッサージの依頼を受けると3ポイント増えていた。


 また、コロポに打診器を使うと1ポイント増えていた。


 相変わらずコロポは打診器に吹っ飛ばされていたが、威力の検証はまだできてない。


 この検証でわかったことは以下の通りだ。


1.慈愛の心:3ポイント

2.医療器具使用:1ポイント


 回数は何回なっても医療ポイントが増えないことから一日で獲得できる医療ポイントは、最大4ポイントまでと気づくことができた。


 二つ目はスキルツリー異次元医療鞄についてだ。


 集めた医療ポイントのうち10消費して容量を増やすともう一つ道具が入ることがわかった。


 近くにあった石を入れてみると収納できたため、医療器具のみしか入らないわけではないらしい。


 そこで前世の記憶を頼りに色々と試してみたが以下の通りになった。ルールが存在していた。


1.生物は入れることが出来ない。

2.温度調節が出来ない。

3.保存機能は付いていない。

4.物の大きさは特に制限はない。


 簡潔的に言えばただの大きくなった鞄だ。


 試しに家にあった椅子を入れるとそれも収納できた。ただ、自身の手で取り出すため俺が取り出せる大きさが限度だ。


 使い勝手は良いが前世のゲームや小説にあった『アイテムボックス』よりも下位の物だろう。


 ちなみにスキル『運搬』についてギルドに確認すると、サイズや機能は人それぞれとのこと。


 温度調節や保存スキルが使えるものは食品関係、容量が多い人は大量に運ぶ商会に所属していることがわかった。


 3つ目は、新しいスキルツリーの習得についてだ。新しく習得するには医療ポイントが300ポイントも必要だった。


 普通に考えて1日医療ポイントは4しか稼げないため75日かかってしまう。


 異次元医療鞄を習得するのに必要なポイントは100だったため、今回も100もしくは200程度だと思っていたがさらに消費が多く驚愕した。


 そこでまずは目標の300ポイントを貯めるためにポイント貯蓄生活をする方向性にした。


 この世界に来てもポイ活をするとは思いもしなかった。





 採取依頼後、家に戻りスキルボードを見ながら悩んでいる。


「やっと108ポイントか!」


 医療ポイントは108となっていた。ちなみに今週でエッセン町に来て一ヶ月程度経った。


「100ポイント使ってもいいのかな」


 この世界の暦上一年で医療ポイントが1200ポイント稼げることから100ポイント使って医療器具を増やすか迷っていた。


 打診器でさえ武器?扱いになっているため、ひょっとしたら使える武器が出るのではないかと予想している。


 実際はコロポ専用の武器になっているが……。


 また、器具を一つ使うことで1ポイント入れる可能性を考慮すると一日に最大5ポイントとなるため効率が良くなる可能性もある。


「よし、100ポイント使うか」


 スキルツリーを開きポイント消費を押し、医療器具解放を選択した。


 すると二つ目に入っていたものは勝手に消失しそこには違う物が入っていた。


 ということは毎回一つだけ空白を開けておく必要があるということだ。


――――――――――――――――――――


スキルツリー『Lv.2 異次元医療鞄』

 空間に異次元の医療鞄を出すことができる。


[ポイント消費]

※医療ポイント100消費で必要医療器具および機器が解放可能。10消費で容量を増やすことができる。


1.打診器(テイラー式)

2.角度計(東大式)


――――――――――――――――――――


「角度計か! 懐かしいな!」


 角度計とは理学療法評価で関節の動きを測るものだった。


 角度計には二種類あり、360°持ち手が回転する神中式と180°しか持ち手が動かない東大式だ。


 東大式はたまに指を挟むし見にくいため神中式を愛用していた。だから東大式を使うのは学生の時依頼だ。


 俺は角度計の片方を持ち、扇子を開く時のようにもう片方を反動で開いてみた。


「なんじゃその新しい武――」


「ぎやあぁぁぁー!」


 タイミングよくベッドの下から出てきたコロポがまたも角度計の持ち手に当たると吹き飛ばされた。


「コロポ大――」


「痛っ!?」


 すぐにコロポに駆け寄ろうと腕を後ろに引いた。


 俺は角度計の恐ろしさを忘れていた。もう片方の持ち手が戻って来ることで見事に指は角度計に挟まれた。


 医療器具を遊びで使ってはいけないことを再認識した。それよりもこれを武器として使うのも間違えだろう。


「ケント痛いのじゃ」


「ごめんね」


「それでその新しい武器はなんじゃ?」


「いや、武器ではないけどな」


「それはれっきとした武器じゃ! しかも呪いシリーズじゃ!」

 コロポはケントの手に出来た血豆を見ていた。


「呪いシリーズ?」


「武器には呪いシリーズと言って使うと自身にも被害を被る武器があるのじゃ。それを呪いシリーズと一括りにしているのじゃ」


 ある意味呪いではなあるけど、使用方法をしっかり守って使用すれば特に危険なことはない。


「これはただ勢いよく戻ってきて――」


「その武器は危険なんじゃ! もう使うのではないぞ!」


 コロポは俺の話を聞きそうになかったため、角度計を異次元医療鞄に戻した。


「わしはもう寝るのじゃ!」


 コロポはただ角度計が気になって起きただけらしい。俺もお昼の疲れからベッドの中に入って眠りにつくことにした。

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