第505話

 回収した枝をホワイトディアの埋まっている地面に突き刺した。


 「ナビィ、手伝ってくれ。」


 「分かりました。」


 世界樹の棒に魔力を送り、突き刺した枝に世界樹の棒の先端を触れさせて魔法を発動する。


 木属性魔法をメインに幾つかの魔法を使用して発動した魔法の効果により、突き刺した枝から根っこが生えて行き、少しずつ少しずつ枝が小さな苗木へと姿を変えて苗木は大きく育って行った。


 そうして育った木には丸々と大きな柑橘系の果実が実る。それも枝のあちらこちらに大量に。


 「ふぅ、これで良いな。」


 一つ実った果実をもぎ取ると、少し厚い皮を剥いて中の果肉を口に入れる。


 「甘酸っぱい。みんなも食べると良いぞ。ほら、ロク。食べな。」


 『口、入れて。』


 口を大きく開けたロクの口の中に果肉の半分を入れると、ロクは口を閉じて動かし始める。


 『ん、美味しい。』


 「今回は俺がやるけど、いずれはこうやって自分で出来るように頑張れよ。」


 見本の様に魔力腕スキルで作り出した魔力の腕で器用に果物の皮を剥いていく姿をハルトはロクに見せる。


 『ん、頑張る。』


 「ハルト、皆さんが欲しいそうですよ。」


 ナビィに言われて見てみると、そこには先ほど皮を剥いた果物を凝視しているヒスイたちの姿があった。


 それに苦笑しながらハルトは次々に実った果物の皮を剥いてヒスイたちにも食べさせていく。


 その傍でナビィが果物を加減せずにパクパクと食べていた。ちなみに今のナビィが操っているゴーレムはホムンクルス技術も使用している為、食事も可能になっている。


 そうしてハルトたちは実った果物を食べ終えたが、まだ実っている果実を全てアイテムボックスに収納してから、今後どうするかを話し合う。


 「やっぱりここはゴブリンキングを始末しておこうか。」


 「そうですね。ゴブリンキングを放置すればスタンピードを起こすのは確実です。ここで倒しておくのが良いでしょう。」


 ヒスイたちもホワイトディアの敵討ちの為に殺ってやろうと殺る気を見せる。特に親のホワイトディアを殺されたロクと友好があったヒスイとプルンは凄い。


 そして、どうするかを決めたハルトたちがまずゴブリンキングが居るだろう場所を探す事にする。


 一応、ロクにゴブリンキングの棲家を知らないを聞くが知らないらしく。どうやらホワイトディアと一緒に襲われたのは、この泉の近くらしい。


 だが、ハルトたちの感知系スキルの範囲にはゴブリンキングが居るだろう規模の大きなゴブリンの群れを感知する事が出来ておらず、これから探さないといけないだろう。


 まだ時間的には午後も始まったばかりの時間な為、夕方になる前にハルトたちは魔境ゴブリン森林崖上のエリアの捜索から開始した。


 移動はロクの移動スピードに合わせて行動しているが、森の中を棲家にしているロクは慣れ親しんだ動きで動き回る為、かなりの範囲の探索が行なえた。


 そして遭遇したゴブリンの群れと戦うのは主にツララとロクの役目だ。


 実戦経験の少ないツララと、生まれてからそれなりの回数ゴブリンを相手に戦闘を行なっているロクとでは、ゴブリンを倒す速度に違いがあるが、二匹ともハルトたちのサポートを受けて余裕にゴブリンの群れを倒している。


 氷属性のドラゴンブレスで全体攻撃でゴブリンの肌の表面を凍らせたり、爪や牙に尻尾や体当たりでの攻撃でゴブリンをツララは倒して行き、ロクは角から繰り出される聖属性魔法や頭突きに前足や後足からの蹴りでゴブリンを倒していた。


 そうしてツララとロクの二匹を中心にゴブリンの群れとの戦闘を行ない、自分たちも倒したいとヒスイとプルンは倒したゴブリンから魔石を採取後、ゴブリンの亡骸は魔法や斬撃で消し飛ばしていた。


 その影響で魔境ゴブリン森林の中には少し大きめなクレーターが何ヶ所か出来ているのだった。

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