世界樹を巡る旅

第36話

　それからしばらくして夕食を持ってアイラがこちらに来た

　「はい、お待たせしました」

　「ありがとうございます」

　「ありがとう。アイラお姉ちゃん！」

　お盆に乗っていた今日の夕食はグラタンと切ったリンゴの様だ。熱々のグラタンが美味しそうだ

　『「「いただきます」」』

　まずはスプーンで熱々のグラタンをふぅふぅと息をかけて冷ましながら一口食べる

　「美味いな」

　「そうだね、ハルトお兄ちゃん！でもおいしいけどふぅふぅしないと口の中が火傷しちゃいそう」

　『ホクホクのジャガイモにホワイトソースとチーズが絡まって美味しいですね。今度はベーコンやマカロニも一緒にお願いしますね、ハルト！』

　（ナビィ……わかったよ）

　グラタンを半分食べ終わった頃膝の上に乗っかっていたヒスイがプルンプルンと身体を震わせて何かを訴えていた

　「ヒスイもグラタン食べたいのか？」

　『そうみたいですね』

　「ヒスイちゃん、グラタン食べられるの？」

　「食べてみたいって言ってるよ。冷ますから少し待ってろよ」

　グラタンを冷ましてから膝の上にいるヒスイにグラタンを差し出すと器用にスプーンの上のグラタンだけを取って食べた。ヒスイの身体の中にグラタンが浮いていて少しずつ消化されていっている

　「美味しいかヒスイ」

　そう聞くとプルンと身体を震わせている

　『美味しいそうですけど薬草の生命草や回復草の方が好きとヒスイが言ってますね』

　（苦いのがヒスイは好きなのか？）

　『植物を主食にしていたからではないですか。生命草や回復草などの薬草からその成分を取り込みますからねヒールスライムは』

　「ハルトお兄ちゃん、ヒスイちゃんはなんて？」

　「美味しいそうだぞ」

　「熱いけど美味しいもんね、グラタン！」

　グラタンを食べ終わりデザートのリンゴを食べながら四つあったリンゴの内二つをヒスイに上げるとリンゴはかなりヒスイの口にあった様で嬉しそうにプルンプルンと震えている

　「リンゴも瑞々しくて美味しかったな」

　「わたしも好きだよリンゴ！」

　『シャリシャリとした食感も良いですね、リンゴ』

　夕食を食べ終わって人が多くなった食堂からお手伝いをするサーヤと別れて部屋に戻りベットに座って隣に抱えていたヒスイを膝の上に置いてプルプルボディを撫でたり触ったりする

　「思ったよりも早く冒険者ランクが上がったな」

　『最初の内は早くてもランクが上がれば上がりにくくなりますよ』

　「まあ、そうだような。転生してから数日だけどだいぶ早く強くなったから一年も鍛練しなくても世界樹の迷宮に行けるくらい強くなれるんじゃないのか？」

　『ハルトなら半年くらいで強くなれるでしょね。でもそれだとこの町を離れるのは寒くなり始める時期ですからね。雪が降る中移動しなくてはなくなりますからね』

　「流石に雪の降る中での旅は辛いだろうからな、なるほど。もう一つ聞きたいんだけど魔石からスキル結晶の欠片をどう取ればいいんだ」

　『スキル結晶の欠片を使うんですか？』

　「使わないけど聞くだけ聞こうかなと」

　『魔石から取り出さないと何のスキルの欠片か分かりませんからね。取り出す方法は簡単ですよ。魔石に魔力をながしてスキル結晶の欠片に魔石内の魔力を一緒に流すだけですからね。さっそくやりますか？』

　「じゃあやってみようかな」

　アイテムボックスからスキル結晶の欠片が入っている魔石を取り出して魔石に魔力を流してみると魔石が薄っすらと輝き魔力感知と操作で魔石内の魔力をスキル結晶の欠片に流し込んでいく。魔石内の魔力を全て流し終わると魔石は砕けて魔力になり魔石内のスキル結晶の欠片が出てきた

　「出来たな。これがスキル結晶の欠片か」

　『跳躍のスキルですね。この大きさなら一時間くらい跳躍のスキルを使える様になりますね』

　「跳躍か……スキル結晶はスキルの取得しか出来ないしな」

　『いえ、装備に装備スキルとして付けることも出来ますよ』

　「あれ、そんな事前言ってたっけ？」

　『言ってなかったですか？』

　「言ってなかったと思うぞ。それで装備スキルってどういう事なんだ」

　『付与スキルで装備品にスキルを付ける事が出来るんですよ。このスキル結晶の欠片では付与で付けてもほとんど効果はないと思いますけどね』

　白い結晶の欠片を片手で持ち眺めていると膝の上にいるヒスイがプルプルしていた身体の一部を伸ばして欠片を触ろうとしてきたのを躱してヒスイに注意しているとナビィがスキルの練習をしようと言ってきた

　『もうそろそろスキルの練習をしましょうか。気配察知のいい方法を思いつきましたので試して欲しいですしね』

　昨日の全然出来なかった事を思い出すが今度はどんなやり方か気になってきた

　「前のやり方は出来ている気がしなかったしな。今度はどんなやり方なんだ？」

　『少しの間サポートする力が減りますが私がハルトの身体で使ってみてそれを感じてください。これなら出来ると思います』

　どうやらナビィが気配察知を使用したのを真似してみる様だ

　「昨日よりはそっちの方が早く取得出来そうだな。さっそくやってみてくれ」

　『わかりました』

　身体をナビィに預けるとナビィはさっそく気配察知を使用した様だ。目を瞑ったナビィが使用した気配察知の効果か膝の上のヒスイの気配を最初に感じそのまま気配察知の範囲が広がったのか隣の部屋には気配はない事が分かったりしたが最終的に食堂まで気配がわかる様になった所でナビィから念話が届いた

　『気配がわかりましたか？ハルト』

　「わかったけどこれが気配なのか？」

　『そうですよ。ハルトに身体を返しますから今度はハルトがやってみて気配を感じてみてください。ハルトが練習をしている間にヒスイと今後どんなスキルを取得したり鍛えるか話しますので』

　身体をナビィに返されてさっそく目を閉じて気配を感じとる様にしてみる。さっき感じだ気配を探ろうと昨日とは違いまずはヒスイのいる膝を意識してみる事にした。膝の上にいるヒスイがプルプルしている事はわかるが先ほどの様な気配はわからない。集中スキルまで使って気配察知の取得の練習をしたが集中力が切れ始めた頃に一旦休憩に入る

　「ヒスイがプルプルしている事はわかったけど気配はわからないなやっぱり」

　『すぐには出来ませんよ。でも昨日よりは出来そうな気がしてきませんか？』

　「それはあるな。気配察知の取得の練習をしている間にナビィはヒスイとどんな話をしたんだ？」

　『今度のヒスイの鍛練の事ですね。ハルトと違い能力値の才能やスキルの才能もヒスイはハルトよりも低いですからね。ですけどヒスイは思ったよりも能力値の才能もスキルの才能もありましたからどうするかちゃんと決めましたよ。体力と耐久はスライム種だからか高かったですけど力が低い事から近接戦闘はあまり得意じゃないですね。そして魔力量と魔力が力よりも高いから魔法系スキルの取得する事に決めましたね。その中で特に高かったスキルの才能は生命魔法と水魔法でしたからその二つの練習をしようかと思います』

　水と生命魔法か生命魔法はともかく水魔法なら桶を出して置いた方がいいか

　「なら桶を出して置いておくよ」

　『はい、お願いします』

　ヒスイを抱えてテーブルにヒスイと取り出した桶を置きイスに座る

　「桶に水を入れといた方がいいか？」

　『最初は水があった方が良いでしょうね。お願いしますね』

　世界樹の棒を持って魔力を多く使い時間が経っても消えない水を桶に注いでいく。水が入った桶になんとヒスイは桶を這って身体の一部を桶の中に入れた

　「鐘が鳴る時間になっても気づかずに練習をしていたら教えてくれナビィ」

　『わかりました。もしまた気配察知の感覚を知りたくなったら声を掛けてくださいね。では練習を頑張ってくださいね』