第3話

「…ん……ここは?」


目が覚めると見渡す限り黒い世界が広がっていた。ただ、辺りに淡い金色の光が無数に浮いており、凄く幻想的な空間があった。


「俺は死んだはずだが…?」


「ああ、お主は確かに死んだ」


「ッ!誰だ」


「儂は神と呼ばれるものじゃよ」


そこには70代くらいの白いひげを生やしたお爺さんがいた。


「神…様…ですって!?」


「そうじゃ、お主には話さねばならぬことと、謝らなければならないことがあってここに来てもらったんじゃよ」


「ここはどこなんですか?」


「そんなに畏まらずともよい、ここは星峡の世界、神界と人界の狭間にあると言ってもほとんど神界のようなもんじゃ」


随分と大雑把なんだなぁ。


「ほっほっほ、確かになそうじゃな」


「…え?心を読んだのか?」


「まぁ神じゃからの」


「はぁ、さすがと言うべきですね」


「さて、それじゃあ本題に入ろうかの」


「さて、それじゃあ本題に入ろうかの。」


「まずは、話さなければならないことじゃが、お主の世界[マース]に突然現れた魔神族についてなんじゃが、いにしえの時代、神々と邪神・悪神の大戦が起こった。

かなりの神が犠牲になったが、なんとか勝つことができたんじゃ。じゃが、邪神・悪神の中で超越神と呼ばれる神の中でも上位の者たちが、各世界に魂を逃がすために神術を使った。

なんとか本体を一部封印することには成功したが、大戦で力を使い果たした儂らにはそれが精一杯じゃった。

邪神・悪神の使った神術は、他の神を贄とする禁術の類で強力でじゃった。そのせいで、封印が弱まり邪神の力が漏れ出してしまった。

その漏れ出した力を使い邪神は、自分の封印を完全に解くため、魔神族を生み出したんじゃ。その世界の生命を奪い尽くし己の糧とするために」


「じゃあ、俺の世界にその魔神族がいきなり現れたのは、それが理由だったのですか」


「…あなたが言った、謝りたいこととはそのことですか?」


「それも含めてなんじゃが…」


「?」


「実はな、本来お主は、あのシアという娘とは出会うことはなかったのじゃ」








「……え?」







何を言われたのか理解ができなかった。


俺がシアと出会うはずがなかった?何を言っているんだ?


言葉を理解してもその意味が全く理解ができなかった。いや、理解したくないと頭が、心が拒絶しようとした。


「すまない、いきなり結論から言って混乱させてしまったようじゃな」


だが、不思議と拒絶しようとする心とは別に、聞かなければならないという思いがあった。


「…いえ……それは、どいうこと…ですか?」


「それは本来ならば神は、人界に直接干渉することはできないからじゃ。じゃが邪神たちは、禁術を使い人界に干渉してしまった。そのせいで、もともとの因果律が歪んでしまったんじゃ。

じゃからお主は、シアという娘と出会うことがなかった。いや、全く別の出会い方をしていたかもしれなかったんじゃ」


「それに、人に力のほとんどを失っているからとはいえ、神を、それも超越神を倒せるはずがないんじゃよ」


「では、なぜ倒すことができたのですか?

それ以前に、その邪神と戦った覚えがないんですが」


「それなんじゃが、お主が最後に獲得したスキルのおかげじゃよ」


「あの、<英雄等価>のことですか?」


「そうじゃ」


「その<英雄等価>は、邪神や悪神が封印された世界の代替措置なんじゃ」


「代替措置ですか?」


「ああ、人界に直接干渉することが出来ない儂らが、もしものために取った措置なんじゃ」


「じゃがあれは、使用させるつもりも、ましてや獲得させるつもりもほとんどなかったんじゃが、儂らが思っていた以上にお主のいた世界の封印が弱まっていたみたいなんじゃ。

そこに歪んだ因果律が交わり、お主にとって最悪の結末になってしまったんじゃ。だから、お主があの様な絶望を味わったのは、儂らが歪んだ因果律、弱まった封印を甘く見ていたせいなんじゃ」


「本当に…本当にすまなかった」


そう言って神様は深く頭を下げた。


「…………いえ、頭をあげて下さい神様。全く恨んでないかと言われれば嘘になりますが、もう終わったことですし、シアを守れなかったのは自分自身の力が足りなかったからだと思っているので、気にしないでください」


因果や邪神、魔神族が神様のせいだとしても、結局はそれらをはねのけるだけの自分の無力さが原因なんだから。


「お主は、本当に優しいのじゃな。これは儂らからというよりは、上位神の方からの提案なんじゃがお主、他の世界に転生しないかの?」

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