君の歌声をきかせて

うらら

唄と僕

「おい 響 真面目にやれよ」

「分かってるって」


俺は、小柳響

中学1年生

今はあと2ヶ月に迫った音楽祭の合唱の

放課後練習中

音楽祭はクラス対抗の合唱バトル

クラス全員本気だ。


なんでこんなに本気なんだ....?


俺は疑問符を浮かべながら練習をする。

俺は歌が苦手だ。

苦手になった理由はいろいろあるが....

かといって音楽は嫌いじゃない。

母親がいなく父親だけで育った一人っ子の俺には音楽だけが相棒だった。



この時はあんなことがおこるなやて思いもしなかった。







次の日の朝のホームルーム前

教室は相変わらずのガヤガヤ状態

俺はいつものように教室の隅で音楽を聴いていた。


ガラガラガラ

突然教室のドアが開き先生が入ってきた。

次の瞬間教室は一気に静かになった。

俺も音楽を止めて席に着いた。



「みんな おはよう」

「「おはようございます」」


先生が挨拶すると生徒たちも挨拶を返す


「突然だが転校生を紹介する」


わっ と一気に教室がざわめく


「入っておいで」


先生が呼ぶと教室のドアが開き 見たこともない真白い肌の少女が 入ってきた。

少女は黒板の前に立ちスラスラと名前を 書いた。


花風 唄


そう綺麗な字で書いてあった名前に俺は見とれていると、先生が少し真面目な表情で言った。


「みんな聞いてくれ 花風さんは失声症だ」


ざわっ と教室は騒がしくなった

先生は言った


「彼女とは優しく接してくれよ」

「「はーい」」


と生徒たちは返事をした


俺はなんで優しくしなきゃいけないんだと思った。

他の人と同じように接すればいいのに.....


「んーと じゃあ花風は小柳の後ろの席で」


げっまじかよ

俺はそう思いつつも後ろに来た花風に俺は ペコッとお辞儀をした。


その日から花風の噂は学校中に広まり

花風はたちまち学校の人気者になった。


新聞部も取材に来たり、

花風はいつもスケッチブックに話したい ことを書いて会話をするので花風のために 手話を覚えてくる生徒まで現れた。


花風はいつも笑顔でいた。


俺とは違って良かったな そう心の中で 思った。


俺は父親の仕事の都合で6月に東京から大阪に引っ越してきた。

6月なのでもう教室のグループはもうできていて特に特徴のない陰キャな俺に話しかけてくれる人はいなかった。

むしろ東京から来たということもあり、

いろいろ変な噂も流れていた。

どこから掴んだのか知らないが俺に母親がいないことまで知られていた。


初めて声をかけてくれたのは吹奏楽部の 2年生の先輩だった。

これもどこから得た情報が知らないが、

東京にいた頃 吹奏楽部に所属していたことを知られており吹奏楽部の勧誘に来たのだ。

とくに断る理由もなく吹奏楽部に入った。

部員は前に所属していた吹奏楽部と比べ 、

20人と少なかった。

俺は東京でやっていたフルートパートに 所属した。

俺は経験者ということもあり 、 フルートパートの中で1番上手だった。


活動日は週に4日と少なく部活がない日や 学校の昼休みは、音楽室でフルートを吹いて過ごした。


ある日の放課後 部活はなかったのでいつも通り音楽室に行くと誰かがいた。

そっと扉を開けると花風がいた。


「どうしたんだ?こんな時間に」


俺は声をかけた。

すると花風はスケッチブックにこう書いた


人から逃げてきた


は?っと俺は疑問符を浮かべた。


「逃げてきたってなんで?」

疲れたの。人と会話するの。

「ふーん 人気者なのにな」


俺はぼそっと言った。

彼女は真っ直ぐな瞳でこちらを見てから、

ピアノへと向かいピアノの椅子に座った。

彼女は真剣な表情で鍵盤を見つけてから

美しいメロディーを奏でた。

俺は彼女の手が止まるまで彼女を見続けていた。















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