アイリス
私が記憶を取り戻したのは5歳の時、木登りをして落ちた時だ。小説とかではよくある展開だと思う。その後送り主が分からない手紙が届き、この『世界』の概要を知った。手紙の差出人は人と表現して良いか分からないけれどアテナ様だった。
以前プレイした事があるゲームの世界と聞いて、地球での人生が終わりを迎えたと知った。残念と思いながらも少し期待した。ゲームでは知らない貴族の家で、若干のチート能力[戦乙女]って職業もあった。剣技の上達や使える攻撃魔法は上級まで回復は中級まで使えると知り凄く嬉しかった。
地球にいた時はフェンシングを頑張っていたし、この『世界』にも貴族の剣術としてスタンダード。皆んなに天才と褒められた事もある。順風満帆っていう感じの状況だったのに、ある日やっぱりここは物語とは違うと思い知った。弟と数人の使用人を連れ王都に向かっていた時、盗賊に襲撃された事だ。
私は執事のアルフレッドに弟を頼み飛び出した。私だけなら何とかなると信じていた。だけど何の経験も無い私では何も出来なかった。私は捕まり恐怖で何も考えらず、これで終わりだと諦めかけていた時に助けが現れた。
盗賊の頭領が蹴り飛ばされ、そこには見知らぬ少年が立っていた。見た限り私と同じ歳に見えた。実際、中身以外は同い年だった。
彼は素手で大の大人を薙ぎ倒し、私と弟達を救ってくれた。勿論救ってくれた中には辺境伯のゲイツさんもいた。でも助けられたという事実から彼に対する印象の方が強かった。
別に好きになった訳じゃない。恩人的な意識という事だけど。とにかく一緒に王都に向かう事になり色々話すと彼が運命の女神ノルン様達の使徒だと知った。
アテナ様から他にも使徒がいると聞いていたけれど。もう少し知的な人かと思ったら中身は私より世代が上のおじさんだった。まぁ、親しみは持てたけど。その後、お互いのこの『世界』に来た経緯や近況を話し合い私は学園に入学するジンのサポートをするという事になった。
どういう状況であれ仲間がいるのは悪くない。これから使徒として、シナリオの予定通りに上手くやろうと思っていた。あの時までは。なんとジンはシナリオとは違い決闘に勝ち、あまりの強さに孤立した。
アイリス「あいつどんだけ鍛えたのよ!」
自室で叫んでいた。あのイベントに着いては地球で色々調べた。誰もあの勝負に勝てた人はいなかった。なのに勝ったという事は相当な異常事態だと感じた。その後色々手を尽くしたけどジンに仲間が出来る事は無かった。そんな時に久々の再会を果たす。
シリウス「よ。久しぶり。」
何呑気に挨拶してんの!鍛えるのは良いけどお陰でシナリオが成立してないじゃない。彼と話すと謝罪は受けた。けど果たしてちゃんと分かってるのかそれすら疑わしい。とにかくこの日のイベントで今までの埋め合わせをしてもらう。
イベント開始直後から若干違う。例の第一師団長をシリウスが相手をしてジンがこっちを助けに来た。それ所か魔将というのまで出て来た。誰よ!って聞きたいけど今はこの状況を乗り切らないといけない。事態が動いたのはその直ぐ後、シリウスがハンマーで吹き飛ばされた時だ。あまりの事で驚いた。私は叫びながら駆け寄りそうだったけど私より先に
ジン「シリウス!」
ジンが走り出そうとした。私は腕を掴み
アイリス「行っちゃ駄目!まだ戦闘中よ!後ろから攻撃されたらどうするの!」
ジンに言ったけど本当は自分に言ったんだ。駄目だと。ただジンの姿を見て私は少し冷静さを取り戻していた。助けに行きたいのは事実、でも今は駄目だ。それに不思議と信じられた。あいつなら大丈夫だって。そしてあいつは直ぐに平気な様子で立ち上がる。私は向き直り自分の仕事に集中する。しばらくするとジンが走り出す。状況が変わったんだ。そう思った時
オード「スワロウ嬢、あちらの援護へ。ここは引き受けます。」
私は頷いた後、直ぐにシリウスの所へ向かう。ジンがエリスとか言う幹部に攻撃されそうになっていた。
アイリス「は!」
エリス「く!」
私は何とか間に入り止める。その後はジンの言葉もあり魔族軍は撤退、私達の勝利に終わった。
ただその日の事で1番腹が立ったのは、全て終わった後シリウスが挨拶もせずに帰った事だ。話したい事もあれば相談したい事もあったのにジンから"もう帰った。"と聞かされただけ。社会人としてどう?って聞きたい程だったから直ぐに連絡した。助かった事もあったからとりあえず説教はしない方向で言いたい事は伝えた。
それからも学園で生活しながらジンのフォローをするけど、ジンはシリウスの影響か私の思っているのとは違う行動を取り続ける。気が付けばベヒーモスを単独撃破出来る程強くなった。お陰で孤立度合いが増す事になる。私が苦労しているのにシリウス自身は、ドラゴンに遭遇したりと異世界生活を楽しんでいた。私も冒険がしたい。だけどこのままだとそれすら出来ない。とりあえず戦争を何とかしないといけない。
次のメインイベントは遺跡調査で聖剣を手に入れる事だ。シリウス達のチームは絶対入れる。私だけ苦労するなんて嫌だ!文句も言いたい!
アイリス「瞬撃の狂犬って?」
クロード「アイリス様が入れたいと言っていたチームのリーダーです。何故その様なあだ名が付いたのか調べた所、誰彼構わず諍いを起こしているからという事の様です。」
あいつ本当何してんの!
はぁ〜、考えるのやめよ。疲れる。そして合流した後の失敗。聖剣をジンに渡し損ねた。ただ今回の災難はこれだけじゃなかった。王都を魔族軍に襲撃され、最後にはシリウスが魔王との一騎打ちで負けた。このままじゃ不味いと思って割って入ったけど怖くて仕方なかった。私は圧倒的に弱かった。能力はシリウスより凄い筈なのに。
私は強くなる事を決めた。先ずは戦力強化だ。幸いにも次のイベントこそ聖剣集めだ。
王様に進言し聖剣集めを開始した。エレナ達やジン、お父様の私兵も引き連れ船団を組み離れ小島に向かう。シリウスは用事があるとかで一緒にいなかった。そういう時に限って事件が起きる。船旅の途中で襲撃を受ける。相手は人じゃない。私達を襲ったのはクラーケン、巨大なイカだ。
騎士1「クラーケンだ!」
騎士2「こんなにデカい魔物見た事ないぞ!」
騎士3「慌てるな!攻撃用意!」
合図と掛け声で大砲が火を吹く。当たってはいるけどサイズの所為かあまり効いていないみたいだ。
エレナ「チッ、あれをやるぞ!皆んな時間を稼げ!」
キース「はぁ?こんな密集してる時にあんなの使ったらどうなるか分からないですよ!」
トリッシュ「じゃあどうするの!」
ジン「動きを止めてくれ!」
ジンは何かするつもりだ。でもどうやって?あまり考えている時間もない。
アイリス「大砲は?撃てる?」
クロード「準備は出来ています。」
アイリス「撃って!」
ドンッ、ドンッと一斉に撃つ。クラーケンを多少退がらせる事は出来たけど、次の攻撃をする為にクラーケンが動き出す。
エレナ「よし!行くぞ!」
エレナの右手にある杖の先端と左手が光っている。
エレナ「サイクロン・ブラスト、アイス・バース。」
エレナが4つの竜巻で海を巻き上げ氷で固め動きを封じる。
エレナ「ほら、止めたぞ。」
ジン「よっしゃ!まかせろ!どりゃ!」
ジンが剣に凄い量の魔力を流し大きな刃を固めて作る。氷で動けないクラーケンの身体をバツの字に斬り、ボンッと大きな音を立て海に沈む。
あれ?もしかして魔王ってこの2人だけで楽に倒せるんじゃない?そう思わせてくれる程あっさり倒す。
騎士達「うわ!」
騎士達がイカ墨に染まる。私達の船で無くてよかった。それにしてもあんなにデカい魔物、普通簡単には倒せないよね?え?もしかして私、間違ってる?
アイリス「私、何処か変?」
クロード「いえ、あのお2人が変わっていらっしゃるんですよ。」
そして色々あって今に至る。
シリウス「へぇ〜、クラーケン!見たかったなぁ。」
何を呑気な。
アイリス「2度とごめんよ。あんなヌメヌメ。」
シリウス「え?イカ嫌い?」
アイリス「別に食べるのは良いわ。でも食べられるのは嫌よ。」
シリウス「お、おう。確かに。」
彼と話してると、たまに自分が変なのかと錯覚してしまう。だけど彼がいると何故か少し安心する。不思議だ。
ともかくこれで皆んな揃った事だし、これから本気のダンジョン攻略だ。
アイリス「さて、何にせよ。ここから本気で行くわよ!」
シリウス「気合い入ってるな。」
アイリス「フフッ、当然!」
さぁ!頑張ろう!
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