第14話 新たなリア友
兼近さんが俺の部屋に訪れるようになり、日に日に俺の勉強時間が確保できなくなっていることに悩まされていた。
「いや、兼近さんがいることで勉強が出来ないのは言い訳に過ぎない。勉強時間が確保できないのは俺の未熟さだ」
そう思った俺は自分なりに一日のスケジュール表を作成した。
無茶なスケジュールは続かないことは読めていたので可能な範囲で計画を練った。
結果、一日の勉強時間は八時間を確保した。
「これで計画通り進めれば問題ないだろう」
教室の自席でそんな計画表を眺めていると後ろから誰かに取られた。
「何、これ?」
兼近さんが不思議そうに眺める。
「か、兼近さん?」
「スケジュール表ね。真面目だねぇ。でも、スケジュール通りに生きる人生ってつまらなくない?」
「べ、別にいいだろ。返してよ」
「嫌だ」
そう言って兼近さんは俺が作ったスケジュール表を破いた。
「な、何をするんだ」
「人生は何が起こるか分からない。計画通りに物事は進まないものだよ」
「だとしてもおおよそのスケジュールは大事だろ」
「このスケジュールに私と過ごす時間が一切入っていない。作り直して」
「なんで兼近さんとの予定を組み込まなきゃいけないんだよ」
「そういう仲でしょ? 私たち」
兼近さんは俺の予定に無断で入ってくることは避けられないことだった。
「何? お二人さん。そういう関係?」
間に入ってきたのはクラス委員長の
赤縁のメガネが特徴で兼近さんとは正反対の見た目で清楚系の女の子である。
「いや、そんなんじゃないけど」
「へー。でも仲良さそうだね。意外な組み合わせだから気になっちゃった。ぶっちゃけどういう関係なの?」
「え、えっと……」と俺は助けを求めるように兼近さんに視線を送る。
「別にただのリア友だよ」
兼近さんはあっさりと俺たちの関係を公言した。
「あの、兼近さん。内緒にしなくていいの?」
「内緒にするのは私がVtuberだってことで充分。別にリア友であることは隠す必要はない」
「そ、そうなんだ」
そんなことをヒソヒソと小声で話している最中、速水さんは不思議そうに見つめる。
「やっぱり二人は付き合って……」
「「ない!」」と二人で否定する。
「そうなんだ。でも仲が良いってことだよね。きっかけはなんなの?」
「きっかけって言われても」と、悩む俺に対して兼近さんは即答で答えた。
「ただのお隣さんだよ」
「え、そうなんだ。あ、そういうこと」
そこは言ってもいいのかと俺は思う。
すると速水さんは言いにくそう身体をくねらせた。
「あ、あのさ……」
「どうしたの? 速水さん」
「えっと、ちょっと言いにくいんだけど、私も二人のリア友に加えてくれないかな? なんて」
「私は構わないよ。ねぇ、冴島くん」
「え? あ、あぁ……そうだね」
「本当? ありがとう。これからよろしくね。兼近さん、冴島くん」
何故か話の流れで俺に新たなリア友が出来た。
嬉しいという気持ちは勿論あるのだが、俺の中ではまた勉強に支障することが大きかった。
兼近さんは兼近さんで自分がVtuberと隠しながらリア友を続けることに不安はないのだろうか。
その件にそれとなく聞くと「あぁ、別に私の部屋にさえ上げなかればバレる心配はないから問題なし」と前向きな感想を述べた。
「そうだ。リア友になった記念にどこか遊びに行かない?」
と、速水さんはある提案をする。
「それなら冴島くんの家に行こう。私はいつも行くとしたらそこだし」
兼近さんはそのような形で提案する。
「ちょっと待ってよ。兼近さん」
「え? 行きたい! じゃ、よろしくお願いします」
速水さんは既に乗り気だった。
これは回避できず、受け入れる方向になってしまう。
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