隣人Vtuberにクレームを言いに行ったらクラスの美少女ギャルだった件〜誰にも言わないでと定期的に俺の部屋に訪れるようになり、溜まり場と化す〜

タキテル

第1話 クレームにいざ出陣


 ガガガッ。バンバンバンッ。

 ドドドドッ!

 ガガガガッ!


 二十二時を過ぎた頃である。


「……ちっ。始まったか」


 俺、冴島保高さえじまほだかは机に向かって勉強をしていた。

 しかし、この時間になると決まって集中力を阻害される。

 理由は簡単。

 隣人のゲーム音がうるさい事だ。

 家は都内の家賃五万円のボロアパートの二階だ。

 高校生でありながら俺は一人暮らしをしている。

 有名大学に入るため、進学率九十パーセントの進学校に俺は通っている。

 実家は田んぼが多いのどかな田舎だった為、親と相談した結果、俺は都内で一人暮らしをすることになった。

 学生寮に入ることも視野に入れていたが、寮内のルールに従った生活に抵抗があった俺は都内の激安アパートで一人暮らしを始めた。

 老朽化が進んでおり、所々壁や床が変色しているが、住む分には問題ない。

 築三十年以上とのことでボロアパートであるが、長く住むつもりもなかったので目を瞑っている。住むとしても数年の話だ。

 台所、トイレ、風呂など生活をする上で必要なものが揃っているだけで充分だ。住み始めて半年ほどは特に不便さは感じなかった。

 そう、隣人が引っ越してくるまでは。

 俺が住み始めた直後は、隣は空室だったが、半年が経った今になって引っ越して来た。別に引っ越してくる分には問題ない。

 基本、賃貸物件にご近所付き合いはあってないものが一般的。

 言い換えれば無関心。

 だが、隣人は決まって夜中に音漏れが激しい。

 ボロアパートのせいもあって隣同士の壁は薄く、ちょっとした音でも聞こえてしまうのだ。

おそらくゲームでもしているのか、爆音で誰かと喋りながらプレーをしている。それが朝まで続くのだ。

 ほぼ毎日、俺はその爆音により勉強への集中力が低下していた。

 隣人はどんな人物か見た事がないが、大体は想像できた。

 実家から追い出されたフリーターかニートの中年おっさんだろうか。

 理由は簡単。

 普通のサラリーマンは毎日のように夜中から朝にかけてゲームなんてするわけがない。と、いうよりする時間がないはずだ。

 そんなことをすれば翌日の仕事に影響してしまう。

 それを気にせずゲームが出来るということは時間の概念がないニートか好きな時間にシフトが取れるフリーターしか考えられない。

それにPCゲームはいい歳のおっさんしかやらないだろう。

 将来が掛かっている俺としてはこれ以上、勉強の邪魔をされるのは困る。

 大家さんに苦情を入れたこともあったが、騒音は一向に収まることはない。


「こうなれば一言、ガツンと言ってやる」


 毎日の騒音に頭を悩ませていた俺はついに我慢の限界に達して机から立ち上がった。

 怖い人だったらどうしようとか、喧嘩になったらどうしようとか頭に過ぎったが、こっちは何も間違っていない。

 履物を履いて隣人の扉の前に俺は立つ。

 今もなお、扉の奥からゲーム音が鳴り響く。丁度、今楽しんでいる最中だろう。だが、それももう終わりだ。


「ふぅ……」と深呼吸で整えた俺は行動に移した。


 このボロアパートは呼び鈴が壊れていて直すこともなく放置されている。

 よって呼び出す方法はこれしかない。


「おい! お隣さん。隣人の者だけど!」


 ガンガンと扉を強くノックする。

 だが、開けるどころか反応を示すそぶりもない。

 無視か。それともゲームに夢中で気づいていないのか。

 ここまで来て引き下がるわけにはいかない。

 今日という今日はガツンと言ってやらないと気が済まない。


「おい! おいってば!」


 ドアノブを回すとあっさりと開いた。

 鍵はかけていないようだ。

 まぁ、ボロアパートに住んでいるくらいだ。盗まれるものなどないと強気の覚悟でもあるのだろう。いい度胸だ。そっちがそのつもりならこっちにだって考えがある。


 ――直接会って一言、言ってやる!


 廊下は真っ暗だが、リビングへつながる扉からは光が漏れている。

 なおも爆音は続く。


「おい!」


 廊下に向かって声を張り上げるが、一向に来る気配がない。


「全く!」


 痺れを切らした俺は無断で部屋の中に入る。

 不法侵入ではない。俺は確かに呼びかけた。

 だが、聞こえなかった隣人が悪い。

 俺はリビングへつながる扉を開けて怒鳴り付けた。


「おい! さっきから呼んでいるのが聞こえないのか! ドンドンドンドン毎晩のようにうるさいんだよ!」


 リビングを覗いたその時である。

 コントローラーを持った美少女がキョトンとした顔で俺を見ていた。 

 

……………………………………………

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