第45話 プラス1は城下町北側を散策する
カルビーンお爺さんとカリーナさんに状況を聞いた私はベッドに戻り再び眠りについた。(途中で2度も起きたから私の睡眠ゲージがマックス状態だ。お休みなさい‥‥)
そして翌朝。私は清々しい朝を迎えベッドから上半身を起こして両手を広げて軽く背伸びをした。そして深く息を吸って一言。
「うっさいんじゃ!!私が寝ようとしたら『パレードするぞー!』『7人の聖女様が降臨されたー!』とか叫び声が延々と続くし、やっと聞こえなくなったと思ったら今度は街の人達がまだ暗いのに外に出てドンチャン騒ぎ始めやがった!お前らなにやっとんじゃ!」
(いや、知ってるけどね。ただ、せめて朝になるまで待とうよ?お前らいい大人だろ?)
そして私はそれに対抗するようにうるさい中で頑張って朝まで寝てやったのだ!(ん?私の方が大人げないって?私はまだ13歳の子供なんだからいいんだよ!)
それから私はベッドから起きて台所に向かった。そこには2人がテーブルを挟んで楽しくお茶を飲んでいた。
「カルビーンお爺さん、サーシャさん、おはようー。2人ともあれからずっと起きてたんだね。体調は大丈夫?」
その私の言葉に笑顔で迎えてくれた2人。そしてカルビーンお爺さんが答えてくれた。
「おお、おはよう。ワシらは奏嬢ちゃんに聖女の力で体の悪いところを全部治してもらったからすこぶる元気じゃ。1日寝ないくらいなんともないぞ。わはははは!」
(ホント元気そうで安心した。内心は息子のカールさんが心配なんだろうけど)
私は2人が朝食は不要と言ったので簡単なものを作って2人と話ながら手早く食べて席を立ち、街に出掛ける準備を始めた。
「奏嬢ちゃん、本当に街の北側に行くのか?あそこは見て楽しい場所ではない。それと少し危ない場所じゃ。ワシは仕事があるから一緒には行けん。昼からじゃあ駄目なのか?」
そう、私はこれから城下町の裏の顔と言われている街の北側の散策に行くのだ。
「カルビーンお爺さん、私は大丈夫。それに少し急いでるから朝一番に行って見ておきたいの。それに知ってるでしょ?私が強いこと」
それを聞いたカルビーンお爺さんはサーシャさんの方を見て困った顔をしていた。そのサーシャさんも「どうかしら?」といった顔をしている。(そんなに心配しなくてもホントに大丈夫たからね)
「いや、奏嬢ちゃんがまたトンでもないことしないか心配なんじゃ」
「そうねぇ‥‥」
「そっちかよ!それもサーシャさんまで!」
そして3人で顔を見合わせ笑った。
「まあ、奏嬢ちゃんなら大丈夫だろう。信じてるからな。ホントに信じてるからな!」
そう言ってカルビーンお爺さんは仕事に出掛けた。(それってフリですか?やらかさないと駄目なやつですか?)
「それじゃあ私も準備を始めましょうかね」
そしてサーシャさんもそう言って私に手を振ったあと台所から出ていった。(えーと、ちょっとボッチ感満載なんですけどー)
そしてやって来ました街の北側。
(ここまでの道のりは大変だった‥‥‥なんであんなに人が溢れてるの?いや判ってるよ?でもね、もうパレード終わってダジール女王陛下も聖女も出発して居ないよ?お前らいい加減仕事しようね。そこっ!朝から酒を飲むな!)
そして私は城下町の裏の顔と言われる場所を眺める。ここは城下町で一番最初に出来た区域。だから建物も古くどこか寂れた雰囲気が漂っている。ただ建物は石やレンガ造りなので老朽化はしているが廃墟のようにはなっていない。だけど住む人の雰囲気がとても暗いので、スラム街のように見えてしまう。
カルビーンお爺さんから聞いた話では、ここは仕事も出来ず収入もほとんど無い人達に王国が開放した区域。教会から日に1度の炊き出しで飢えをしのぎ、なにもせずただ生きているだけの人が集まる場所。
(だけどそれだけじゃない。私は知っている。ここには生きる希望を捨てていない人達が居ることを)
実は私は以前、花売り幼女チッチェから聞いていた事があった。
『あのね、おっきいお兄ちゃんとお姉ちゃんが孤児院に住む私達にポーションをたくさん持って来てくれるのー』
その時はただ善良な住民が居るんだなぁとしか思っていなかった。でもこの国の状況や色々な人から話を聞いて行くと何かおかしいと感じ始めていたの。そして極めつけがこの区域。どうやらここに、その善良な住民が住んでいるみたいなのだ。
そして私は廃墟のような街並みを見渡しながら目的のものを探す。それから10分ほどでその場所は見つかった。それは北の外れにある寂れた教会だった。私は教会の前に立ち大きな声でご挨拶。そして勢いよくドアを開けた。
「たのもーー!」
「しゃーーー!ドンガラガッシャン!」
(ひょえー!久々で忘れてた。この世界の両開きタイプのドアには危険がてんこ盛りってこと!そして今回は最悪だ。老朽化しててドアが教会の外まで飛んで行ってバラバラになってるーー!)
「ん?ここはお嬢ちゃんが来るような場所じゃあ無いぞ。迷子にでもなったのか?」
私の『たのもー』挨拶に気がついて注目するまだ歳若い男女達。
(そして誰もドアの事を気にしてなーい!)
そんな私は気を取り直し、その人達を前にしてニヤリと笑いこう言った。
「さあ、治療を始めようか」
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