第7話 坂本さんと告白

「……ッッッ」


 放課後の教室に忘れ物を取りに戻ると声を押し殺すような声が聞こえた。

 誰かいるのだろうか?


 ドアが少し開いていたので中の様子を伺うために体を近づけると足がドアに当たってしまった。


「だれ!?」


 バレてしまったようだ。しかしこの声坂本さんか。俺は教室に入った。


「……オタク君か……」


 彼女の目が少し赤くなっていた。それに声が震えている。

 泣いていたのだろう。


「……………」


 お互いに何も話さない。沈黙の時間だ。その事に耐え切れなくなり何かあったのか? と質問した。


「あはは……泣いてるところ見たら心配もするよね……」


 そういう彼女の声は普段のような快活な声ではなかった。


「……君はどうしてここに来たの?」


 そう聞かれたので忘れ物を取りに来たと言った。


「忘れ物を取りに来た、か。こんな偶然あるんだね」


「……何があったか聞いてくれる?」


 少しの間を開けた後そう言われたのは俺は当然だと頷いた。


「じゃあその前に屋上に行こうよ」


 そう言われて俺は屋上まで手を引っ張られた。


「……風が気持ちいいね」


 坂本さんはフェンスの前に立ってそう言った。俺は何も言わずに続きを待った。


「今日さ、有名な雑誌の表紙に載らないか? って話が私のところに来たんだよね」


 俺はそれに対して凄い事だ。おめでとうと言った。


「おめでとう? うん、ありがとう。

 それでね私がモデルになった理由なんだけどお母さんとお父さんに認めて欲しかったからなんだよね」


 そうだったのか。でもなんで?


「なんで? か。私ね、お姉ちゃんが居るんだ。そのお姉ちゃんがね、すごく頭がいいの。それも誰もが知っている大学に受かるくらいはね」


「それが理由なのかは分からないけど両親は私のことを褒めてくれなかったの、どれだけ勉強を頑張ってもお姉ちゃんならもっといい点数を取れるってね」


 それは……


「それでね、ある時からか勉強で勝てないなら他のことでお母さんとお父さんに認めて貰おうって思ったの、それで目指した世界がモデルだった。

 本に載ってるみんなはカッコよくて可愛くて、とてもとてもキラキラしてたの、憧れも強かったのかな? 私自身もこんなにキラキラできるのかなって」


「それから努力して努力してみんなが段々と私の事を認めてくれて、今では大きな雑誌の表紙に乗れるようになったの。それをさっきお父さんに伝えたんだ。

 そしたらそうか。だってさその後にそれだけか? だって」


 …………


「そしたら何してんだろ私って急に思っちゃってさ」


 フェンスを握る力が強くなったのか音が鳴る。そして顔は見えないが肩が震えている。


「ごめんね、急にこんな話して……迷惑だったよね……」


 そう言って下を向いて去ろうとする坂本さんの手を握って近くに引き寄せた。


「えっ!?」


 驚いている彼女をよそに俺は俺の思いを告げた。


「迷惑じゃない……それに俺から見た君はキラキラしていて憧れだ……たとえ親が君を認めなくても俺がその倍、君を認める! って……」


 言ってやったぞ。

 少しキョトンとした後坂本さんは笑った。


「あはは、それじゃあ殺し文句みたいだよ」


 そう言われて恥ずかしくなる。やっぱ今のなしという。


「今のなし? ダーメ! 言った責任とってもらうからね!」


 そう言って抱きつかれた。


「っ」 


 短いキスをした。


「私達付き合ってみよっか?」

 

 そう言って囁かれる。

 俺はそれに頷く。


「これからよろしくね」


「っ」


 それから俺と坂本さんは長いキスをした。

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