第5話 坂本さんと勉強
「オタク君、おはよ!」
朝学校へ行くと坂本さんは既に教室にいた。こんな早い時間に教室に人がいるとは驚いた。
いつもは俺1人なのに。
「いやはや朝の7時の教室にまさかオタク君がいるとはびっくりだよ。こんな時間に学校に来て何してるの?」
と言われて俺は本を読んでいると答えた。
「朝の時間は静かだから集中して本が読める……ってオタク君が読んでる本って勉強に使う本じゃなくて、ライトノベルだっけ? 主人公が女の子全員から好かれるやつでしょ」
お前は俺を怒らせた。というかそれだけが全てじゃない! 確かにハーレム作品は多いがそればかりじゃない!
「うん、ごめん、ごめん。怒らないで、そういつもりで言ったんじゃないから。でもそこまで力説するって事は今日読もうとした本は普段と違う本なの?」
当然だ!
「そんなに力強く頷く君をみたのは初めてだよ……じゃあ見せてよ今日持ってきた本」
うん? それはダメだ。見せられない。おれは右手に持っていた本を強く握りしめた。
「えー、なんでダメなの。それじゃあ仕方ないか………なんてね!」
諦めたと思って力を緩めた瞬間、坂本さんに本を取られてしまった。
俺は取り返そうと思い動くが坂本さんの方が早かった。
「えー、なになに……猿でも分かるモデルさんを彼女にする方法! って猿シリーズ好きなんだね……」
うるさいほっとけ! 猿でもシリーズは初心者でもできるって評判なんだい!
「ふーん、でもいいこと知っちゃった。前回は彼女を作る方法だったのに、今回はモデルを彼女をする方法なんだー」
ニヤニヤしながら聞いてくる坂本さん。俺はそれに対して目を逸らした。
「あっ、そう言えばエリナさんもモデルやってなぁ。あれあれ? オタク君そんなに目を逸らしてどうしたの?」
もうやめて! こんな処刑方法があるなんて聞いたことないぞ!
俺は声を振り絞って坂本さん以外にも知り合いでモデルをやっている人がいると言った。
「へー、私以外にもモデルの知り合いがいるんだー? なんて名前なの教えてよー」
なんで白々しいんだ。この声色俺が嘘をついているとわかって言ってるんだ。
「えー、もしかして名前も言えないのー? 私そういう嘘つく人嫌いだなー?」
ぐっ、傷付くぞ。くそ、なんとかして会話を変えてやる。
そういえばなんで坂本さんはここにいるのと質問した。
「んー? 無理やり話変えてきたね。それで私がこんな早くに学校にいた理由?
実はモデルの仕事が原因で学校休んでることもあるんだけど、そのせいで進級のピンチで……
これ、補修のプリントなんだけどこれを提出しないと留年のピンチなんだよね」
あー、なるほどそういう理由か。
「だけど意外と難しいんだねー、エリナさんってば頭から煙出しそうだよ。それで学校に早めにきて誰かに教えてもらおうと思って」
ならば、さっきの事を忘れてもらう代わりに俺が勉強を見よう。
「えっ、本の事を忘れたら勉強を教えてくれるって……いくじなし」
最後の部分が小さすぎて聞こえなかったぞ。
「ううん、なんでもない! じゃあそれでいいからこれ教えてよ!」
俺は坂本さんの机の前に座って彼女に勉強を教えるのだった。
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