第4話 坂本さんとデート その2
「さあ着いたよ!」
坂本さんに案内してもらった店の前までやってきたが、自分が知っているカフェの中でもかなりおしゃれだ。
「今日はオタク君もいるし、前から気になっていたあれを頼むぞー!」
と坂本さんは意気込んでいる。
店に入ると店員さんに案内されて席へと通された。周りの客はカップルばかりでムズムズする。
「ここの限定ケーキとジュース食べてみたかったんだよねー……ってそんなにソワソワしてどうしたの?」
俺の様子を見てそんな事を言ってきたので正直話す事にした。
「えっ、周りの人がカップルだらけで落ち着かないってそんな理由でソワソワしてたの? 大丈夫だよ、私達も周りから見たらカップルに見えてるよ」
そう言われてドキッとする。だけど坂本さんはこっちの気分も知らないで店員さんを呼んだ。
「すみませーん! これとこれください! 以上です! えっ!? あっ、はい。ありがとうございます」
坂本さんがその2つを頼むと店員さん坂本さんと何かを話すと去っていった。
店員さんに俺の姿は見えてないのだろうか。あれ? 目から汗が……
いやそれよりも坂本さんだ。俺の注文を待たずに頼んでしまうなんて酷い話だ。
「え? オタク君の分? あっ、ごめん忘れてた」
と素のトーンで言われて泣きたくなる。
「うそうそ! 大丈夫だよ、オタク君の分も頼んであるから!」
それならいいけど2つしか頼んでないよね? まあいいか。頼んだって言ってるし彼女を信じよう。
「………」
少しの間沈黙が続く。いつも坂本さんが話していてくれたから俺から声をかける事なかったな。よ、よし俺からも声をかけるぞ……
「そ、その、さ。さっきの話だけど、私達、やっぱり恋人に見られてるのかな? 注文した時に店員さんに彼氏さんかっこいいですねって言われちゃった」
と言われてこっちが恥ずかしくなる。でも俺がカッコよく見えるのは坂本さんのコーディネートのお陰だ。
俺はその事を彼女に伝えた。
「私がコーディネートしたお陰って……もっと自分に自信持とうよ。でも、その、ありがと」
彼女は少し顔を赤くしながらそう言った。思わずその表情に見惚れてしまう。
そうこうしていると注文が届いた。
注文されたものを見るとカップル用の飲み物1つに対して2つのストローが刺さった飲み物とハート型の大きなパンケーキだった。
「おっ、キタキタ! カップル限定のジュースにパンケーキ! 一度でいいから食べてみたかったんだよねぇ」
そう言ってフォークを手に取る彼女を俺は止めた。
「いっただきまー……ってそんなに止めてどうしたの? カップル限定のメニューなんだから多めに作られてるよ?」
そう言う問題じゃない! パンケーキはいいにしてもジュースはダメだろ! 2人の距離が近すぎる!
「このジュースがだめなの? 相合ストローって言うのかな? あっ、もしかして2人で1つの飲み物を飲むのが恥ずかしいんだ! ぷぷぷ、高校生にもなってそんな事気にしてるの?」
と凄く馬鹿にされた表情と声でいわれた。ここまで馬鹿にされたら流石の俺も引くわけにはいかない。
「わかった。なら一緒にジュースを飲もうって? ……その、まずはパンケーキの方から……」
などと言って逃げようとしたので挑発をする。
「逃げるのか? ってべべ別に逃げてないんですけどー! エリナさんに喧嘩を売るなんていい度胸じゃん! いいよ! ジュースから飲もう!」
と言ってストローに口をつけたので、俺も逆側のストローに口をつけた。
「そ、それじゃあの、飲むよ?」
こんなに近くだと予想してた以上にこっちが恥ずかしい。だがなんとか頷く。
「ん、んん。……美味しいね」
確かに美味しいけどそれどころじゃない。坂本さんが気になって飲みづらい。
「そ、その恥ずかしいね」
坂本さんが照れている。こう言うのには慣れていそうなのに。
「こう言うのには慣れてそうってオタク君はちょっとデリカシーを身につけた方がいいよ……私だって初めてなんだから」
ジト目で言われた後に上目遣いで聞こえるか聞こえないかの声でそう言われた。
ぐふっ、可愛すぎる。
俺はその場で顔を突っ伏した。
「可愛すぎるって! な、何言ってんの! あれ? 急に倒れてどうしたの!? オタク君! オタクくーん!」
そんなこんなで俺達は食事を終えて店を出た。勿論俺がお金は払った。
「お会計ありがとうございました! 服をプレゼントしてくれたから? そんなに気にしなくてもいいのにー」
外に出た頃には空が暗くなってきていた。
「もう夜だね。楽しい時間はあっという間に過ぎちゃうね」
俺もそれに頷いた。それにしても坂本さんも楽しいと思ってくれたのか。
「私さ、オタク君といる時は本当の自分でいれるっていうかなんていうか……って何を話してんだろ! ごめんね! 急に変な話して!」
続きが気になる話だが、聞ける雰囲気でもない。
「……そのさっきの話は忘れて! じゃあ私はこっちだから!」
と彼女が言ったので家まで送ると言った。
「送ってもらうほどの距離もないよ! あそこに見えてるマンションがうちの家だから!」
と指を差した先にはでかいマンションがあった。
「じゃあまた学校でね! オタク君も気をつけて帰るんだぞー!」
と言って坂本さんが走り出した。俺はマンションの中に入るまで手を振ってからその場を去るのだった。
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