この素晴らしい探索者に祝福を!

@myasa-n

この素晴らしい探索者に転生を!

「如月沙月さん。不幸にもあなたは、死んでしまいました」


 気がつくと、何もない空間に立っていた。


 私、なんで死んだんだっけな......


 あぁそうそう、バカな仲間が納骨堂でゾンビを召喚しちゃってガチギレしたモルディギアンっていう邪神と戦闘になったんだった。


 ぐぬぬ、納骨堂で祭られてるのがモルディギアンだって知ってれば止められたのに......


 まぁあっさりと死ねただけマシかな。永遠に悪夢を見せられるとかよりは全然いい。


「ちょ、ちょっと、何一人で満足したみたいな表情してんのよ!? 水の女神であるこのアクア様がわざわざ出迎えてやってんのよ!?」


「ん?」 


 改めて辺りを見回してみると、目の前には美しい女性が立っていた。たぶんAPPは18。ちっ、負けたか。


「んっんん、如月沙月さん。あなたは不幸にも、死んでしまいました」


「マジかー、ついに死んじゃったかー」


 死んだは死んだけどなんでとか悔しいとかじゃなくついにかーっていう感じ。


 まぁ132回も神話に巻き込まれちゃそりゃ死ぬよね、うん。


「そこであなたには、3つの選択肢が残されてるわ」


「へー」


 死んだ後にも選択肢ってあるんだ。ゾンビになるとかはやなんだけど。


 てかこの人水の女神っていってた? そんなの私が今まであった中にはいなかったけど、グレート・オールド・ワンかな? それとも外なる神? まぁそこまで強そうではない感じはするけど......


「1つは記憶を消してもう1度地球で別の生を受けること」


「ふむふむ」


 いわゆる「輪廻転生」ってやつ? でも記憶がなくなるのはやだな~。


「次は天国に行くこと」


「天国?」


 え、こんなにアッチ系に触れてきた私が天国なんていけんの?


「ん? 今え、こんなにアッチ系に触れてきた私が天国なんていけんの? て思った?」


 何この人、心理学99なの? ピッタリ当てられたんだけど。


「アンタ前科持ちかなんか? まぁ面倒だから履歴は見ないけど」


 それでいいのか女神とやら、ニャルでももうちょっとはマシな仕事するぞ。


 ......訂正、まったくもってマシではなかった。


 あの神にいったい何回弄ばれたことか......思いだすだけで寒気がする。


「まぁ天国なんて老人の話を延々と聞き続けて日向ぼっこするぐらいしかすることがないくっそ詰まんないとこよ、やめときなさい」


「あっはい」


 確かにそれはやだ。ただでさえ刺激的な毎日に慣れてるからそんなになったら退屈すぎてまた死んじゃう。


「そして最後! それはこことは違う世界にチートを持って転生し、魔王を倒して世界を救うことよ!」


 え、なんか最後だけスケールちがくない?


 てかこの女神にそんなことできるのかな、この口振りだと記憶とかも消えずそのまま行くらしいし。


 それに異世界って本当にあるの? 神々ですら遠い宇宙からきた存在だってのに。


「ま、当然これよね? それじゃチートを選んでちょうだい」


「ちょ、ちょっともう少し説明くれない?」


 いやまぁ異世界転生楽しそうだし別にいいんだけどさ、もうちょい情報プリーズ。


「はぁ、めんどくさいわね」


 本当にこれでいいのか女神様。


 そう思いはしたがグッと胸に飲み込む。だっていったら何されるかわかんないし。


 いのちだいじに。ガンガンいこうぜのやつは大抵すぐ死ぬからね、できるだけ機嫌を損ねないようにしなくちゃ。


「この世界は今魔王のせいで滅びそう。だから地球で死んだ若者に雑なチート付けて勇者として送り込む。んで魔王倒してもらって世界は救われ報酬として勇者は好きな願い事を一つ叶えれてwin_winってワケ。わかった?」


「大体は」


 つまり魔王、いくら強いっていっても外なる神よりは......


 あれ? アザトースって魔王とか呼ばれてたきが......


 いやいやいやちょっと待て、いくらチート? を持った所でアレには絶対勝てないんだけど。てか私の正気値だと姿見見ただけで発狂までありうる。


「ね、ねぇ、その魔王アザトースって名前だったりしないよね?」


「あざとぉす? 誰よそれ」


「あ、違うならいいの」


 よかったよかった。あれじゃないならまぁなんとかなるでしょ、所詮は常識レベルだろうし。


「さ、早くチートを選んでよ。後がつっかえてるんだから」


「はいはい」


□■□■□■□


 チートの一覧が載った分厚い本に一通り目を通してみたけど、いまいち食指が進まない。


「ねぇ、ここに載ってないのってダメ?」 


「はぁ? ちょっと強欲すぎない? こんなにたくさんあるのに」


 だって装備とかが殆どなんだもん。それじゃ盗まれたりしたらおしまいじゃん。


「で、どうなの?」


「まぁ全ステータスカンストとかの無茶苦茶なのじゃなければかまわないわよ」


 よしきた。


 てかアッチの世界ステータスまであるんだ。魔王とかステータスとか、まるでゲームみたいだね。


 まぁMP持ってる私が言えたことじゃないけどさ。


「じゃあ、正気度とMPを無限にして欲しい」


「うーん、まぁそれぐらいならいいんじゃないかしら? 火力とかが上がるわけじゃないし」


 キタコレ。これは勝ったね、うん。


「てか正気度ってなに? よくわかんないけど取り敢えずそれも減らないよう設定しといたわよ」


「さっすが女神様! あ、それならついでに呪文の詠唱に必要な時間もゼロにしてくれない?」


「ちょ、流石にそれは欲張りすぎよ! アンタどれだけ強欲なの?」


「まぁまぁいいじゃないですか、美しい水の女神、アクア様?」


「ま、まぁ、しょうがないわね。今回だけよ?」


 流石の言いくるめ85。


 さっきは仕事しろとか思ってすいませんでした。その素晴らしい働きっぷりに私感激。


「それじゃいってらっしゃーい......はい、次の方どうぞ~」


 訂正する。せめて最後までその人の相手せんかい。


 その瞬間、私の意識は途切れた。


□■□■□■□


 次の瞬間、目が覚めると草原に立っていた。


 少し遠くには、街の外観が見える。


「ホントに異世界に来たんだな~...... 」


 さっきもらったチートっていうのが本当か試してみよう。


「『肉体の保護』」


 注ぎ込むMPは10点。呪文を唱えた次の瞬間、体の周りに薄い膜のようなものができたのがわかった。


 しかし、いつもならくる体の一部を持ってかれるような感覚はなかった。


「すご......ホントにデメリットなしで呪文が使える......!」


 今ならどんな神話生物にも負ける気がしない! だってSAN値ももう減らないしね!!


 取り敢えず、いつまでも何もない平原にいても仕方ないしあそこに見える街に行こう。




「待て、身分証明書を提示しろ」


 門のところに行くと、門番さんに止められたのに。


「すいません、実はカクカクシカジカで......」


 雑にお涙頂戴エピソードをでっちあげ、街にいれてもらえるよう言いくるめる。


「そっか、大変だったんだな嬢ちゃん。ほらよ」


 そういって涙ながらに紙幣を渡してくる。


 それと、私は断じて嬢ちゃんという年ではない。もう成人だってしてる。


 これも全部SIZ10のせいだぁぁぁぁ!!


 ま、私は大人の女性だからこの程度で取り乱したりはしない。


 それどころか利用させてもらおう。


「あの、これは?」


 上目遣い&涙目。これをAPP17でやるんだから落ちない男はいない(断言)。


「千エリスだ。これで冒険者登録をして身分を造れ」


「え、お金まで貰って......いいんですか?」


「あぁ、安心しろ。ここには嬢ちゃんを怯えさせる怖い緑のタコはいない。俺たちが守ってやる!」


「ありがろう......ございます!」


 あの緑のタコが来たらこの世界は終わると思う。


 まぁその時はこのお兄さんに守って貰おっかな。たぶん秒で死ぬけど。


「じゃあな、アクセルの街はお前を歓迎するぜ!」


「はい!」


 ロリk、親切なお兄さんの元を離れ、冒険者登録をしに行こう。


 てくてくと歩き出して数秒、私はある事実に気付き踵を返す。


「あの......冒険者ギルドって、どこですか?」


 ......なんとも締まらないスタートだなぁ......。


□■□■□■□


「冒険者ギルドへようこそ! なんの御用ですか?」


 受付で出迎えてくれたのは超がつくほど(どことはいわないけど)大きいお姉さん。


 ......その大きさを私に分けて!? お願い!


「えっと......どうしたの? そんな怖い顔して......」


 はっ、私としたことが妬みの視線が顔にでちゃってたか。


「冒険者登録お願いします」


 周りの冒険者や受付のお姉さんが「またか」みたいな顔をする。


 やっぱり子供がこういうことをしにやってくるのかもね。


 で、危険だからそれを止める、と。


「......えっと、今いくつ?」


「21です」


「「「は?」」」


 周りの冒険者や受付のお姉さんが「マジか」みたいな顔をする。


 私は断じて子供ではない!!


「21です」


「えっと、年齢詐称は犯罪ですよ?」


「に・じゅ・う・い・ち・で・す!!!」


 わたしは! だんじて! こ、ど、も、で、は、な、い!!!


「そ、それじゃあこの水晶玉を触ってもらえますか?」


「はい」


「えーっと......うそっ!? ホントに!?」


 ......そこまで驚く?


「......どーせわたしは幼女体型ですよーだ」


「ご、ごめなさい! そんなつもりじゃ!」


「いいです、いつものことなので。それより続きお願いします」


「あ、はい! ......敏捷がレベル1でこんなに高いの!? それに魔力無限ってなにそれ!?」


 ドヤッ! これがチートの力。


 まぁ前半は私の才能だけどね。


「筋力低......えーっと、随分と偏ったステータスですね?」


「ぐふっ」


 ず、随分とスパッというなぁこの人......


「こほんっ、適正のある職業はっと......ん? 魔術師? なにこれ、見たことない」


 流石は友人に「神話生物より魔術に詳しいんじゃね?」とまで言わしめた私、世界を跨いでもその魔術師っぷりは健在みたいだね。


「えっと、このステータスですと基本職業か魔術師、あとアークウィザードになれますね。どれになさいますか?」


 アークウィザードもかっこいいけど、やっぱり魔術師でしょ!


「魔術師で」


「か、かしこまりました。本来ならこの後その職業にあったレクチャーなども受けることができるのですが、申し訳ありません。魔術師という職業は前例がいないためなしとなります」


「あ、はい」


 ん? まてよ、魔術師がいないってことは......もしかして神話生物もいないんじゃない!? 


 いないかもとは思ってたけどこれで確信に近くなった。どうか本当にいませんように......!


 こうして、私の冒険者生活は始まった。


□■□■□■□


「......ふぅ、助かったよ嬢ちゃん。また頼む」


「はいはーい、それと私二十歳越えてますから! 嬢ちゃんじゃないですから!」


「......まじでか」


「マジです!」


 毎回初対面の人とはこの会話が入るのちょっと傷つく。


 ん? いま何してるのかって?


 それは......


「それではテレポート屋『門』、またのご利用お持ちしております」


 そう、「テレポート屋」だ。


 テレポート屋というのがあると知った瞬間、私はこれをすると決めた。


 だってこれ絶対に需要は途切れないし、MPも無限だからノーリスクだもん。


 使う呪文は『門の創造』。


 ホントにこの呪文便利だよね。いつもお世話になってます。


 そんな風にテレポート屋を始めてから一週間、順調に利益を伸ばしていると、私はある出会いをした。


「うえぇぇん、生臭いよぉぉ、ヌメヌメするよぉぉ」


「うるせぇ! 周りから俺が変な目で見られるだろうが!」


 そんな会話が聞こえてきて、ふとその方向を見ると、そこには青い髪の女性がなんかヌメヌメしていた。


 ちょっと、いやかなーり見覚えあるぞこの顔。


「......何やってんですかアクア様」


「ん、ぐすっ、あんた誰だっけ?」


「あ、もういいです」


「ちょ、嘘! 冗談だってば! えっと......あ、そう! 沙月さん!」


 やっと思い出したかこのエセ神。本当の神はもっとちゃんとしてるぞ。


「ん? おいアクア、こいつも日本人か?」


「ええ、そうよ!」


「てことはそっちの茶髪のちょっとイマイチパッとしない人も日本人?」


「悪かったなパッとしなくて」


「で、ホントにどうしたんですかアクア様」


 まさかこの男にやられて!?


「おいロリっ娘、俺をそんな目で見るんじゃない」


「おいそこ誰がロリっ娘だコラ、私は21だぞ」


「はぁ!? おいおい、あんま見え見えな見栄を張るなって。流石にわかるから」


「ぶっ殺す」


「お? いいぞ、やってみろよ、真の男女平等主義者の俺はロリっ娘相手でもドロップキックができるぞ」


 なんだこいつ。なめとんのか。


「ちょ、ちょっと! なんで話題振っときながら誰も私のこと聞かないのよ!?」


「あ、すいません、つい」


「あのね、聞いてよ。さっきカエルにゴットブローしたらね? ぽよんってしたの!! それでパクって! パクって食べられたの!!」


「はぁ......てかゴットブローなんて技あるんですね」


 なかなか強そうだけど......ヨグパンチとどっちが強いかな?


「私も使えますよ、パンチ技」


「え? パンチ技なんてゴットブローぐらいしか......はっ! さてはあなた、アクシス教に!」


「入りません。それとパンチは『ヨグ=ソトースの拳』です」


「? そんな技存在しないわよ? あ! わかった! さてはあなた中二病を拗らせちゃってるのね!」


「は?」


 急に何言い出すんだろうこの女神は。


「きっと私にはシステムに存在しない恐ろしい技が使えるんだ! とか思い込んじゃってるんでしょ? プークスクス、カワイソー」


 イラッ。


「......カエルごときに跳ね返されるなんちゃらブローよりは全然強いと思いますけどね~」


「ん? ヨグ=ソトース? どっかで聞いたことあるような......」


「クトゥルフ神話最強の一角であるヨグ先生のパンチ、見せてあげる」


 全力でぶっぱなしてやんよ、塵も残さないほどね。


「クトゥルフ神話......あ! あの創作神話の!」


「へ? なによカズマ、しってんの?」


 え、もしかしてこの人も探索者?


「あぁ、実際には存在しない神話だろ? ヨグ先生もそれに出てくる神格だったはずだ」


「あ、てことはあれ? 自分には神の力が宿ってる的な? アイタタター」


 イライライラッ。


 この呪文手に入れんのめっちゃ大変だったんだからね、よし、めにもの見せたる。


「『門の創造』」


 最初に私がいた平原に3人移動する。


 今日の朝ここにジャイアントトードが出るって書いてあったから間違いないだろう。


「お、おい! もしかして今のテレポートか!?」


「門の創造? あ、もしかしてテレポートにイタいルビ振っちゃったの? あれ? でもテレポートってそんな簡単に取れたっけ? ......まぁこれも私の加護のおかげね!」


「な、なあ。お前って職業アークウィザード? いや、でもパンチって......」


「私? 私のクラスはねぇ」


 近くにいたジャイアントトードとの距離を詰め、呪文を発動する。


「『ヨグ=ソトースの拳』!」


 MPを取り敢えず50ぐらい注ぐ。ついでに萎縮を10MP。破壊も使って無力化しよう。だってMPは無限にあるもん!


 このためのMP無限。このための正気度無限。


 ダメージをわかりやすく表すと、大体50d6+10点だね。


 えーと、結果も分かりやすく書くと......186点、だね。


 殴った瞬間、ジャイアントトードはとてつもない轟音がなった後、跡形もなく消し飛んだ。


「「は?」」


「『魔術師』よ。どう? すごいでしょ、ヨグパンチ」


 そういって私はぱっぱっと手を払い、ニシシっと笑った。


 ......ちなみにさっきの火力、クトゥルフ様が一撃で沈むレベルだね。やばい。


 今ならモルディギアンなんかに負ける気がしない! だって今の火力無限に伸ばせるんだもん。


 実質モルディギアンのダメージ:死と大差ないね!

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