異世界ではあえない

葉桜冷

アバン

 幼馴染の女が死んだ。

 トラックに轢かれた。

 雨がしとどに降っている。

 ぼくは彼女の葬儀にきている、

 葬儀は粛々と予定通りに進んでいく、

 大して大きくもない寺だか神社だかのなかに黒い服を着た大人がこうも敷き詰めている。

「カイくん、辛いでしょう……、あなたとメイちゃんは小さい頃からずっと一番の仲良しだったものねぇ……」

 知らないおばさんにそんなことを言われた。

 おばさんは涙ながらにハンカチを目元に充てていた。

 ぼくはてきとうな返事をして、自分の席に着いた。

 親族席ではおばさん(さっきの人じゃなくて信乃メイの母親だ)が一人でぽつんと号泣している。

 周りの大人たちもよくよくみたら泣いていた。

 年若い彼女の突然の死に、みんなわんわんと泣いていた。

 ぼくはトイレに立った。

 小奇麗なトイレの洗面台の前に立つ。

「……」

 真顔の自分がそこにはうつっている。

 くしゃ、と顔面を歪めてみた。


 一秒後に鏡にうつっていたのは、ぼくの泣き顔ではなく、さっきとおんなじ真顔だった。

 ―――、ぼくは泣けなかった。

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