第917話 あなたは私たち魔族の魔法を侮り過ぎです!!
「残念かどうかで言えば、別に……なぜなら、潜入がバレて捕まるかもしれないお前には、どうせたいした情報も持たされてはいないだろうからな、そもそも論として期待しとらんよ……でもまあ、いくらなんでもお前に直接命令を下している上役についての情報ぐらいなら持ってるだろうから、それを白状してくれてもいいぞ? そんでもって、ソイツを一緒に殴りに行くのもいいな!」
「な、何を勝手に私が裏切る前提で話をしているのですか!? それに、いつ私が上役に憎しみの感情を持っていると言いましたか!?」
「……えっ……違うのか……?」
「その白々しいキョトンとした顔をやめていただきたい!!」
「いや、だって……お前の努力、そしてその努力によって培った実力に一切の理解を示すこともなく、侮蔑の笑みを浮かべながらカスみたいな役を押し付けてくるような奴なんだろ? よく思い出してみろよ」
「……ッ」
「ほら、すぐに反論の言葉も出てこないところを見るに、ぶっちゃけお前もカスみたいな上の奴らにムカついてたんだろ? まあ、さすがに秘密主義の行き届いたお前らのことだ、直接の上役より上の連中までボコボコにしに行くのは現実的ではないにしても……とりあえず、接点のある上役ぐらいは殴っとこうぜ?」
「フゥ~ッ……まったく、ムチャクチャなことを言ってくれますね……しかしながら、いいですか? あなたも知っているように、私には裏切り防止などの目的で自滅魔法が施されているのですよ? そんな気を起こせば、すぐにでもこの魔法が発動して、私の命の灯は消えてしまいます……ですから、そのような荒唐無稽な話をするのはお控えいただくのが賢明というものです。そして、だから言ったのです……あのまま華々しく散らせてくれていれば、美しく終われた……それはあなた方にとっても、こうして無駄な時間を過ごす必要がなく、よかったのでは?」
そうして、やれやれといった雰囲気を出すマヌケ族の男……
だが、この男の心にはくすぶりのような何かがあるのは確かだと思う……そんな感じがするのだ。
だから俺は、その感覚を信じて言葉を重ねるのみ! 負けへん!!
「ああ、だからな……その自滅魔法を俺たちで解除しようと思うんだ。そうすれば、お前を縛るものがなくなり、心置きなく上役を殴りに行ける! そうは思わないか!?」
「……ハ、ハァァァァッ!? アレス・ソエラルタウト! あなた、どこかおかしいのではありませんか!? そんなこと、私たちの族長ぐらいにしかできるわけがありませんよ! いえ、ひょっとしたら……そのことをご存じなかったとか!? いや、でも……自滅魔法の存在を知っていて、そのことを知らないのも変だ……やはり、あなたはおかしいです! それも途轍もなくね!!」
「うむ、お前らの族長レベルにしか解除できない魔法と言われていることは俺も知っているよ」
「だったら! わかるでしょう!? そんな無理なことはおやめなさい!!」
「無理かどうかは、やってみなければ分からないだろう?」
まあ、実際のところ俺は一度成功しているので、全くの無理ってわけじゃないんだ。
とはいえ、失敗も一度しているからね……
そう考えると、今のところ一勝一敗ってところになるのかな?
「いいえ! 絶対に無理です! あなたは私たち魔族の魔法を侮り過ぎです!!」
「まあな、現時点の俺だけの力では、確かに無理かもしれん……そう思えばこそ、こうしてソニア夫人方に協力をお願いしているわけだ」
「協力って! たった4人ではありませんか! それも3人は成人していない……どころか、そのうち1人は学園にすら入学していない! その程度の協力でどうこうなる魔法ではありませんよ! ふざけるのも大概にしていただきたいッ!」
「……んだとぉ? 黙って聞いてりゃ、俺らのことを見くびりやがって」
「そうだ、そうだっ! 僕たちだってできるんだいっ!!」
「とはいえ、たびたび話題に出てきている保有魔力量の面から見れば、我々は子爵家相応の域を出ていないし……経験の面でも、まだまだ足りていない、それゆえ見劣りしてしまうのも仕方ないことではあるだろう……だが、だからといって、全くの役立たずで終わるつもりもないがな!」
「そうねぇ……私も久しぶりに本気を出すつもりだし………………何より、リリアン様に憧れて磨いた光属性の魔法……甘く見てもらいたくはないわね」
「……ッッ!!」
やる気になっているワイズたちはもちろんのこと……
ソニア夫人も、迫力ある笑顔を浮かべていらっしゃる……
その笑顔は美しく……そして、凄い氣魄です……
それには、さすがのマヌケ族の男も圧倒されてしまっているようだ……
「どうだ? 人数こそ少ないと思ったかもしれないが、千や万の軍勢にも匹敵するぐらいの力を感じるだろう? でもな、自滅魔法の解除には外側からの力だけではなく、内側からの……そう! お前自身の意志の力が何よりも重要になってくるんだ!!」
「私自身の……意志の力……」
「そうだ! 自滅魔法に打ち克て! さっきみたいに命の灯を燃やし尽くして戦い抜こうとしたお前になら、それぐらいできるだろ!? それに! お前も一端の武人のつもりなら、あの程度の戦いで満足するんじゃない!!」
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