第886話 では、これより作戦行動を開始する
「しっかりね……そして、くれぐれも油断なきよう、気を付けて行ってらっしゃい」
「はい、それでは行って参ります」
「母上! 期待して待っててねっ!!」
「ワイズとタムのことは俺たちがしっかりサポートしますんで!!」
「お忙しい中、見送りいただきありがとうございます!」
俺たちがベイフドゥム商会に向けて出発するといったところで、ソニア夫人が見送りに来てくれた。
とはいえ、ソニア夫人もアレコレと忙しい状況の中なので一声だけかけにきたという感じだが、その気遣いが嬉しいものである。
いやまあ、大事な息子たちが参加する任務なわけだから、それも当然といえば当然のことかもしれないけどね。
また、こうして美しい年上女性に見送られながらの出発というのは、俺のモチベーションを爆発的に高めてくれる……実にグレイトだね!!
そんなこんなで俺たち4人はソニア夫人にそれぞれ返事をし、第3と第4小隊の皆さんも敬礼で応えて出発したのだった。
さぁて……マヌケ族に踊らされたベイフドゥム商会のアホ共を取っ捕まえに行くとするかね。
まあ、あらかじめ魔力探知で調べてみたところ、ベイフドゥム商会の連中が発している魔力にそこまで極悪人って雰囲気はなかったので、どっちかっていうとマヌケ族に騙されたんだろうなって感じだ。
ただ、かといって心のキレイな聖人って感じの魔力を発しているわけでもないけどさ。
そうはいっても、全人類がピュア度100パーセントの澄んだ心を持つなんてことは無理に近いことだろうから、大まかに分けたあとは程度問題になってくるんだろうけどね。
そこで俺の見立てとして、ベイフドゥム商会の連中は積極的に悪事を働くわけではないが、グレーゾーンなら行っちゃうぐらいの精神性なんじゃないかと思う。
それから……ベイフドゥム商会には、俺たちがメイルダント領に来たそもそもの発端となったトードマンがいるかもしれない。
うん、ようやくだね……
どんなツラ……というか、体型をしているのか確かめるのが微妙に楽しみでもある。
ただまあ、うぅ~ん……下手したら「イメージまんまやん!!」って笑っちゃうかもしれないので、腹筋に力を入れて準備しておかねばなるまい。
そうじゃないと、捕縛ってシリアスな雰囲気を弛緩させてしまうかもしれないからね……
うむ……ワイズの華麗なる指揮を台無しにさせないためにも、しっかり注意しておこう。
よし、クールだ!
俺が日々精進してきたクール道は、こういった場面で役立てるためのものだったんだ、それを忘れちゃいけない!
アレス、イコール、クール!
アレス、イコール、クール!!
さあ、皆も一緒に!!
アレス、イコール、クール!
アレス、イコール、クール!!
こうしてベイフドゥム商会本店までの道のりのあいだ、頭の中で念仏のように唱え続けていたのだった。
そうこうしているうち……目的地に到着した。
ここでまずは、第4小隊の皆さんが店の周囲を取り囲んで展開。
そのあいだ、ワイズを先頭に第3小隊の皆さんが隊形を整える。
うんうん、これで秘密の地下通路でも掘っていなければ、とりあえず地上でどっかに逃亡するのは不可能だろう。
もちろん、あの中にありえないぐらい戦闘能力が高い奴が混じっていれば、包囲を突き破って出て行くことも可能ではあるだろうけどね。
ただ、巧妙に実力を隠していない限り、あの中にそんな奴はいなさそうである。
となると……警戒すべきはマヌケ族の擬態のみといったところか。
そこで、微妙に俺はマヌケ族共から要注意人物としてマークされているっぽいので、こちらも闇属性の魔力で自身とタム君に隠形を施しておこうと思う。
というのも、ワイズやケイン、そして領軍が相手だと思えば、マヌケ族のほうもそれなりに侮ってくるだろうからね。
なるべくなら俺が出張ってきていることを悟られないほうがよかろう。
それに、タム君の安全にも万全を期す必要があるからね。
といいつつ、既に魔法的防御もガッチガチに固めてあるので、俺の防御を突破できる攻撃力を持った奴が相手でなければ、タム君に指一本触れることもできないだろうけどね!
「ワイズ様、第4小隊の配置が完了いたしました」
「そうか」
「ワイズ様、第3小隊もいつでも行けます」
「よし、準備が整ったな……では、これより作戦行動を開始する」
「「ハッ!!」」
「うっし! 気合一発、キメるぜッ!!」
「キメるぜっ!!」
「うむ……キメ時だな!」
こうして、俺たち4人と第3小隊の皆さんがベイフドゥム商会の本店建物の正面に向かって歩を進める。
そして、まだ開店前のため閉ざされた扉の前で領兵の1人が声を張り上げる。
「こちらはメイルダント領軍である! ベイフドゥム商会、直ちに扉を開けよ!!」
まあ、ベイフドゥム商会サイドとしては「えっ! い、いきなり……何事!?」って感じかもしれないが、仕方あるまい。
そして少々の間をおいて、カチャリと硬質な音が響き渡る。
もちろん、あちらさんが扉の鍵を開けた音である。
そうしてゆっくりと扉が開かれる中、不安そうな表情を浮かべながら1人の男性店員が俺たちを出迎えるのだった。
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