第807話 鮮明なイメージの共有
人数ねぇ……確かに、多過ぎるのもどうかなって感じがしちゃうもんなぁ……
「多過ぎても、かえって邪魔になる……か、そう言われてみれば、そうかもしれん……」
「う~ん、トードマンがどれぐらいトードマンか……この目で確かめてやろうって思ったんだけどなぁ……」
「いや……もしかするとトードマンの風貌の凄さは、俺たちの意識を深く深く抉るほどの威力があって、しばらく眠れない日々が続くことになるかもしれない……そう考えると、行かなくて正解だったってことになる可能性もあるだろうよ」
「なるほど、トラウマ級ってことか……」
「むしろ、しばらく眠れない程度ならまだマシで……二度と忘れられないほどの精神的ダメージを負うかもしんねぇぞ?」
「な、なぁ……そこまでいくと、もうトードマンを討伐しちまったほうがいいんじゃねぇか?」
「オイ~ッ! そいつはやり過ぎだろォ!!」
「ああ……あくまでもトードマンは風貌がトードのようになってしまっているだけで、種族の分類としてはれっきとした人間族に属するわけだからな……」
「つぅか、さすがにそのレベルになっていれば……メイルダント領でそれなりに有名人になってるんじゃね?」
「ふむ……そこまでの有名人なら、トードマンがどのような男かこれから確かめに行くまでもなく、ワイズが領内で生活している時点で知っていてもおかしくなかっただろうしなぁ……」
「そっか! 言えてる!!」
「一応、この相談中に何度か言及されてきたことではあるが……放蕩息子というだけで、トードマンの実態を我々は知らないのだからな?」
「は、ははは……そんなこと、言われるまでもなく承知していたさ……ねぇ、みんな?」
「お、おう……そうだな……」
「も、もちろん……!」
「と、当然のことを言ってくれちゃってぇ! いやだなぁ、まったくぅ!!」
「「「ハハハ……ハハハハハ!!」」」
うん、みんなの頭の中では、完全にトードマン像が確立されちゃってるね……
「お前らなぁ……」
「……ハッ!? も、もしかしてこれも……魔力操作で僕らのイメージ力が強化された結果なんじゃ……?」
「マジか!? スゲェぜ、魔力操作!!」
「ほう……そんなことにまで効果を発揮するのか……」
「確かに……僕の脳内に、ギットギトに脂ぎったトードマンの姿が鮮明に描かれていた……きっと、みんなもそうだったんでしょう?」
「ああ、おそらく俺たちのイメージに違いはなかったはず……」
「おおっ! 俺たちは鮮明なイメージの共有を成し遂げたってわけか!?」
「この調子で行けば……皆で協力して、そのうち極大魔法の生成だって可能かもしれんな?」
「おいおい、極大魔法って……お前はどんだけ強大な敵を想定してるんだよ……」
「ま、まあ、近頃は他国と大きな戦争がないからといって、備えを怠るわけにもいかないからなぁ……」
原作ゲームのシナリオ的には、復活した魔王との戦争が起こる可能性があるからねぇ……
「というか、この前の武闘大会でファティマちゃんが放ったインフェルノだって、あのまま止めずに黒い炎が育っていれば……物凄い規模の魔法になっていたかもしれないんだよ? そう考えると僕らだって、努力次第ではその領域に到達できるかもしれないじゃない?」
「まあ、そもそも論として、極大魔法の規模感については統一した見解が定まってなくて、学者とかによって意見がバラバラみたいだからなぁ……」
「そりゃイメージに魔力さえついてくりゃ、どこまでもデカくできるんだろうから、決めることなんかできねぇだろ」
「下手に決めちゃうと、魔法の天才が生まれるたび、極大魔法の定義を改めていかなくちゃならなくなるだろうねぇ……」
「そこんところ、アレッサンのイメージ力と保有魔力量なら、めちゃくちゃデケェ魔法を撃てそうですよね?」
「ん? ああ……そういえばこの夏、ソエラルタウト領でなんとなく思い付きで山ひとつぶんぐらいの雪と氷を生成したなぁ……それを兄上がスキーとかスノーボードができるレジャー施設に活用して新しく街を開発したんだっけ……というわけで、皆も気が向いたら遊びに来てくれ!」
ちょうどいいタイミングだったので、地味にソエラルタウト領の宣伝をしておいた。
「や、山ひとつぶん? しかも、それをなんてことなさそうに言うとは……」
「やっぱ、アレスさんは規格外だ……」
「アレスさんの魔法も凄いが……その雪や氷を活用して新しく街を開発しようと思うセス卿も並の器じゃないよな……」
「聞いたことあるぞ、ソエラルタウト領の雪の街……この夏の暑さもあって、かなり盛況だったってな……」
「うん、僕の姉さんも早速行ってきたって、つい先日自慢されたばかりだよ」
「そういえば、俺んとこも叔母が行ったって言ってたっけ……」
「もともと武系貴族として、ソエラルタウト家の武力の高さは有名だったが……文化的な側面にも力を入れ始めているというわけか……」
「もしかすると今、ソエラルタウト家の勢いが王国一かもしれないな……」
「ああ、そんな気がしてくるぜ……」
……さて、この脱線しがちだった相談会も、そろそろ締めに入るところかな?
それに、あまり長く湯に浸かり過ぎていると、のぼせてきちゃうからね……
とはいえ、それぐらいならポーションを飲むとか……回復魔法までいかなくても、丁寧に魔力操作をして全身に魔力を循環させたら治るだろうとは思うけどさ。
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