第473話 生徒たちの曇った顔
再会の挨拶や、新しく交友を深めようとしてか、クラスメイトたちがあちらこちらでワイワイと会話を繰り広げている。
こういった風景は前世の学校となんら変わることのないものだね。
なんて思いつつ俺も周囲と同じように、ロイターやサンズと会話を続ける。
「それにしても夏休み明けで久しぶりだったというのに……いつもどおりでなんというか、安心したぞ」
「ええ、確かにですね」
「フッ、そういうお前たちも、相変わらず元気そうじゃないか」
「ああ、もちろんだ……それに後期は武闘大会が予定されているからな、この夏休み中しっかり鍛錬も積んできている」
「僕もそれなりの成績を残せるよう、ロイター様と一緒に励んできました」
「ほほう、それは面白いじゃないか」
「面白がっていられるのも今のうちだ、今度こそお前に勝利してやる」
「へぇ……その言葉、期待しているぞ?」
「アレスさん、僕がいることもお忘れなく……とまあ、燃えてきたところではありますが、武闘大会は来月です。学園で予定されているイベントとしてはまず、再来週の秋季交流夜会からですね」
秋季交流夜会か、そういえばさっきファティマに誘われたんだったな。
そしてアイツが予測したとおり、さっそく女子から昼メシに誘われてしまった……
だが、とりあえずアイツのおかげで、そこらの小娘から夜会の誘いを受けても断ることができそうだ。
その辺は感謝しておこう。
なんて思ったところでグッドタイミングというべきか、ファティマとパルフェナが教室に到着。
「おはよう~みんな! 久しぶりだねぇ」
「……パルフェナのおかげで危うく遅刻するところだったわ」
「あ、あはは、こんなに朝が早いのも久しぶりだったからねぇ……」
「まったく……パルフェナにも困ったものだわ」
「なるほど、パルフェナの朝寝坊は未だ健在というわけか……」
「なんと申しますか……ファティマさんに起こされて、なかなか起きない剛の者はパルフェナさんぐらいでしょうねぇ……」
「うぅ、みんなひどいよぉ~」
寝る子は育つ……おっと、ファティマの鋭い視線が飛んできそうなのでこれ以上はやめておこう。
「まあ、明日から早く起きれるよう頑張ってくれ」
なんて当たり障りないコメントをしたところで、エリナ先生が教室にやってきた。
ああ、今日もステキです! エリナ先生!!
「おはよう、みんないるようね……さっそくだけれど、始業式が始まるから講堂へ移動しましょう」
まあ、こういった流れも前世と一緒。
それはつまり……学園長のありがたいお言葉が眠たいのも同じということである。
いや、俺が知らないだけで、話芸に秀でた校長や学園長っていうのも、もしかしたらいらっしゃるかもしれないけどね……
そんなことを頭の片隅で思いつつ、魔力操作やレミリネ師匠と脳内模擬戦をして始業式の時間を過ごす。
フッ……こんなふうに周囲の環境がどれだけ退屈でも、今の俺には有意義に活用する術がある!
おいおい、そこの小僧……あくびをしている暇があれば、お前も魔力操作をしたらどうだ?
そんなこんなで始業式が無事終了。
続けて今日は、生徒会任命式がおこなわれる。
一応、この学園にも生徒会っていうものがあるみたいだからね。
先ほどから度々話題に出てきた秋季交流夜会や武闘大会など、そういったイベントの運営とかで主に活躍するらしい。
そして俺にはさほど関係ないことだが、生徒会長等の役員は後期から交代するみたいで、残りの期間は暇なときに顔を出してアドバイスとか手伝いをする程度って感じらしい。
まあ、3年の後期ともなると自分の将来のことで何かと忙しくもなるだろうし、そんなもんだろうね。
それで、1年生から生徒会入りするメンバーとして注目を集めているのは……まあ、当然というべきか、王女殿下である。
ちなみにこの学園の生徒会では、特に選挙とかはない。
そのため、現職の生徒会長の指名により次期生徒会長が決まるらしい。
また、ほかの次期役員についても一応現職役員たちの合議によって決まることになっているみたいだが、やはり生徒会長の意向がそれなりに強く反映されるようだ。
まあ、そういう政治とか派閥運営の練習みたいなことも兼ねているんだろうねって感じ。
「ロイターセンパイは生徒会入りしないんですか?」
「そろそろ、その『センパイ』というのをヤメロ……それで生徒会入りについてだったな、一応夏休み前に打診はされたが断った」
「へぇ、そうなのか」
「まあ、向こうもあまり本気ではなさそうだったしな……おそらく私が公爵家の人間だからとりあえず声をかけただけ、といったところだろうさ」
「ふぅん、そんなもんかね?」
「アレスさんは打診されなかったのですか?」
任命式中の俺とロイターのコソコソ話にサンズも加わってきた。
「俺だぞ? あるわけないだろ」
「まあ、お前が入ったら良くも悪くも生徒会の色が一気に変わっただろうしな……」
「確かに、そうかもしれませんね……」
「ふむ、仮に俺が生徒会に入ったらか……そうだな、とりあえず全生徒に魔力操作を徹底させることから始めることになるだろうか。まあ、俺レベルになると、一目見ただけで魔力操作をサボってる奴も分かってしまうしな」
「フフッ……そうなった場合の生徒たちの曇った顔が目に浮かぶようだ」
「魔力操作を嫌がる方は多いですからねぇ……」
なんて話をしているうちに、任命式は終わった。
まあ、壇上の生徒会メンバーたちを眺めてみたところ王女殿下とその取り巻きは魔力操作をきちんとこなしているようだったが、それ以外は全員とまではいわないが、微妙って感じだったからなぁ……
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