第420話 そんなこともできるんだ
「それで、傾向としては20階のボスに何が出てくるんだ?」
「情報によると、スライムキングが多いようです。あとはそうですね……19階のようにスライムジェネラルを中心とした部隊を編成して出てくるなんてこともあるそうです」
「へぇ、キングかぁ~」
「流れとしては、順当といった気がしますわね」
「ジェネラルだった場合……アタリなのかハズレなのか微妙」
「まだ会ってないし、俺としてはキングのほうが嬉しいかな?」
もちろん、スライムキングも原作ゲームに登場している。
頭……といっていいのかは分からんが、球形のボディ上部に王冠を載せている奴だ。
まあ、この辺はゴブリンやオークなどといったほかの種族と同じような進化の過程を経ているのだろうと思う。
「とはいえ、今は大繁殖中であることも踏まえると……スライムエンペラーが出てくる可能性もありそうですね」
「おおっ! エンペラー!!」
「……あり得る」
「既にアレス様はゴブリンダンジョンでエンペラーの出現を経験されていますものね……それを考えると、ますますそんな気がしてきますわ」
「ゴブリンエンペラーか……あれはなかなか見どころあるナイスガイだった」
そういえば奴のこと、最初はキングだと思ってたんだっけ……あとでギルド出張所のオッサンにいわれるまで気付かなかったんだもんなぁ。
そしてゴブリンエンペラーに関しては、俺の夢に何度か出演してくれているだけに、あんまり遠い存在って感じもしなかったりする。
というか、俺のイメージの中では、今も武骨な剣を磨いているぐらいだし。
「アレス君がそういうぐらいだから、敵ながらアッパレなゴブリンエンペラーだったんだろうねっ!」
「そして、今なおリスペクトの念をお持ちのアレス様、さすがですわ」
「リスペクトを向けられて……そのゴブリンエンペラーが少し羨ましくもある」
そんなふうに肯定してもらえると悪い気はしないが……照れくさくもある。
「さて、休憩はこれぐらいでいいだろう……ここからはボス部屋、スライムダンジョンラストバトルだ! 気合を入れていくぞ!!」
というわけで、ボス部屋に突入。
「あれっ、ボスが……いない?」
「ええと……ダンジョンのボスというものは普通、部屋の中央に鎮座しているものですわよね?」
「もちろん例外もあるが……基本的にはそうだったはず」
「出迎えなしとは、失礼なボスだな……それとも留守か?」
「そんなはずは……おやおやなるほど、皆さん上空をご覧ください」
そしてギドが指し示す方向に目を向けてみると……
上空からスライムが翼をはためかせながら降りてきた。
「えらくカッコいいご登場だな……演出に凝りたいお年頃のスライムかな?」
とかなんとかいいつつ、翼の生えたスライムなんか知らんぞ?
俺の記憶が正しければ、原作ゲームに登場していなかったハズだ。
そして3人娘も、俺と似たような反応を示している。
「あんなスライム、見たことありませんわよね?」
「うん……とはいっても、私はそこまでモンスターの種類に詳しいわけじゃないけどね」
「……私も知らない」
俺たちがそういっているうちに、スライムは翼をたたみ、そのままボディに収納というか溶けて一体化した。
これにより、見た目はいつもどおりのスライムとなった。
ふぅん、そんなこともできるんだ……便利だね。
なんてのんきに考えていたら、物知りギド君が何やら気付いた様子。
「あれは、もしや……」
「ほう、ギドには心当たりでもあるのか?」
「はい、あれはおそらく……トランスフォームスライムでしょう」
「トランスフォームスライム? 初めて聞いた名前ですわね」
「ユニオンスライムもそうだし、このダンジョンは珍しいスライムの宝庫だよねっ?」
「……だからこそのスライムダンジョンなのかもしれない」
「それで……能力としては、変形といったところか?」
「はい、先ほどの翼を見ても分かるように、あのスライムはボディを変幻自在に変えることができると考えてよろしいかと思います」
「う~ん、今まで出てきたスライムたちも体を引き伸ばしたりしてたと思うけど……」
「それよりもっと上手というか、変形の精度が高いということなのかしらね」
「なるほど、それは地味に厄介」
「いずれにせよ、そんな珍しいスライムが出てきてくれたってことは、とても喜ばしいことだ」
フッ、これも日頃のおこないのおかげかな?
「今回も実物を見たのは初めてですが、珍しいだけではなく実力も兼ね備えたスライムだと聞いておりますので、油断されませんように」
「ほほう、実力も兼ね備えているとは……これはなかなか燃えてくるじゃないか」
そうして俺たちが話しているあいだ、スライムはゴワゴワとボディを変形させていく。
そしてなんと、人型に姿を変えた。
とはいえ、単色のボディなのでマネキンとかブロンズ像って感じがする。
ちなみに、色としては真鍮みたいな色だ。
そんな人型真鍮スライムが「ヘイ、カモン」とでもいうように手招きをしている。
「あれって、私たちを挑発しているつもりなのかな?」
「そうであるなら、あちらも相当自信がおありのようですわね」
「ちょっと変形できるぐらいで、生意気」
3人娘も燃えてきたところで、戦いの幕が上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます