第341話 これからもよろしく頼むぞ!!

 しばらくのあいだ、自滅魔法の解除を成功したことによる興奮と喜びに熱狂していた。

 それもいくらか落ち着いてきたところで、ギドが今回の成功について感想を述べてきた。


「それにしても、あの自滅魔法は各部族の族長クラス、さもなければ特別な力を持った方にしか解けないはずでしたのに……それも解き方を知っていることが前提という……それを力業で解除してしまうとは、アレス様には本当に驚愕させられます」

「いや、この成功は俺だけの力じゃない……みんな……みんなに力を貸してもらったからこそできたことだ」

「みんな、ですか……」

「ああ、今回使った解呪の光を教えてくれたのはエリナ先生だし、イメージの補強にソイルという阻害魔法の得意な友人を参考にさせてもらった。そして、その光属性の魔法を強化するための装備品を与えてくれたレミリネ師匠たちスケルトン……それから、母上にだって(原作アレス君が)力を貸してくれるよう頼んだし、神々にもギドを助けてもらうよう祈ったからな……そうしたみんなみんなが、俺に力を貸してくれたおかげだ」

「なるほど、そうでしたか……いわれてみれば、あの光の中でリリアン様の魔力を感じたような気もしましたね……おそらくアレス様の願いにリリアン様が応えてくれたのでしょう」

「……そうか」


 確かに原作アレス君の願いに呼応するような形で、俺も魔力が湧き上がってくるのを感じたからな、ギドのいうとおりだろう。

 母上、ありがとうございます。


「それから、その首飾りとレミリネ様の剣……特に首飾りは表に出すと少々厄介かもしれませんね」

「……やっぱり?」

「はい……長いあいだ身に付けたり使ってたりしているうちに、使用者の魔力を宿すようになった物というのは大なり小なりあるものです。そこで、武器の場合は頻繁に魔力をとおして使うこともあり、比較的そういったことにもなりやすいです……そのため、レミリネ様の剣も秘めた力は強大ものの、まだ言い訳が利きます。加えて、アレス様は武系貴族であり、お血筋も最上位クラスですからね……」

「まあ、ソエラルタウト家は武系の侯爵家だし、母上の実家は公爵家だったわけだからな……家宝みたいな感じで凄い武器を持っていてもおかしくはないかもしれん」

「おっしゃるとおりです……しかしながら首飾りのほうは、今申しましたように、日常的に魔力を流して使う物ではありませんので……まあ、そういった物を人為的に造ることもありますが、その場合はそれ用に材質からデザインまで全て特注品ですからね……それで、見たところその首飾りはごく一般的な物で、おそらく平民女性が身に付けていたであろうことが想像できます……だからこそ、厄介なのです」

「そうか……平民だと、普通は保有魔力量もそこまでじゃないもんな……」

「まさしくそのとおりで、その首飾りは『本物の信仰の顕れ』ともいえるものであり、教会関係者が目にすれば『聖女の遺物だ!』と叫びだすかもしれません……いえ、それだけで済めばいいのですが、あの手この手で教会に納めさせようとしてくる可能性すらあります……」

「うわぁ……」

「……」

「……どうした?」


 今まで饒舌に語っていたギドだが急に黙りだし、何かに気付いたとでもいわんばかりの顔をしながら見つめてくる……


「……そもそもとしてアレス様のその神々しいお姿……教会から『聖者』として認定されるかもしれません」

「いや、さっきの『聖者(仮)』っていうのは、ちょっとしたノリでいっただけなんだけど……」

「魔族の特別な秘術ともいえる自滅魔法を解除したのですから、そこいらの自称聖者たちよりよっぽど聖者らしいことができますよ?」

「あれはそう何度もできることじゃない……」

「いえ、あのレベルの解除を求められることなど、そう何度もありません……あるわけがないです」

「ああ……そう……」


 ……って、そんだけヤバいならさっさと魔纏も通常の無属性に戻して、装備品たちもマジックバッグにしまっておこう。

 あまりの喜びで、うっかりそのままになっていたからね……

 そして、今回活躍してくれた装備品たちに感謝。


「よし、これでもう大丈夫だな……」

「そうですね、そして余程の難敵が相手の場合以外、あの姿は控えたほうがいいかもしれません」

「……だな」


 ちなみに、トレントブラザーズのほうは新しいし、素材がもともと魔力を秘めたトレントだったこともあり、今のところ「まだ」大丈夫らしい。

 それに、魔力をとおしてないときはそこまでじゃないっぽい。

 でも、そういうポテンシャルはバッチリみたいだからね……徐々に武器としても成長してるようだし……

 とはいえそれもまだ先の話だし、そもそも武器で、俺の身分的にもあまりとやかくいわれなさそうだから問題なしのハズ!

 そんなわけで、通常フォームに移行して会話を続ける。


「それで、さっきいってた上役とやらの強さはどの程度だ? お前だけで勝てる相手か?」

「……私もアレス様付きになってから鍛えましたし、自滅魔法に抵抗するため自然と魔力操作も練度が高められましたからね……1対1ならまず負けることはないでしょう」

「ふむ、そうだろうな」


 俺も精神的にいくらか本調子でなかったとはいえ、多少押されたからな……ギドの強さは魔族の中でもまあまあ上のほうだろう。


「それで……お前はこの先、魔族と戦えるか?」

「……アレス様を守る盾としてならば戦えます……ですが、正直なことを申せば、矛として戦えるかは分かりません……もちろん、手加減して戦えるほど実力差のある相手なら無力化させて人魔融和派の族長にあとを頼めばいいのでしょうが……そうでなければ、命を奪うことにためらうかもしれません」

「お前は、本当にいい奴だな……」


 まあ、だからこそ原作アレス君も心を開くことができたのかもしれない。


「いや、いいんだ……お前に最前線に立てというつもりもないしな……それならば、今までどおり上役に適当に報告を続けろ」

「……いいのですか?」

「構わん……それに俺も学園に行くためソエラルタウト領を離れがちになるからな、下手に刺激して俺のいないあいだに魔族の上位者に攻め込まれても困る。加えて、王国も動き始めているのだから、今までどおりにして時間稼ぎをすればいい」

「かしこまりました」

「ま! そのあいだに鍛錬を積んで……それこそトップクラスの実力者になって手加減して戦える相手をもっと増やせ」

「はい、そうします」

「よし、決まりだな! それじゃあ、これからもよろしく頼むぞ!!」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします!!」


 ひとまずこれで、ソエラルタウト領のマヌケ族問題は片付いたって感じかな?

 それがギドだと知るまでは始末するつもりだったけど、こういう結末も悪くなかろう。

 いや、マヌケ族のギドは始末したって考え方もできるか……ギドは俺の仲間へと生まれ変わったのだから。


「はぁ~これで一件落着っと!」


 そういいながら一面の銀世界にダイブ……まだ、この雪と氷の始末が残っていたね。

 放っておいてもいいんじゃない? っていわれるかもしれないけど、ギドの灼熱の炎を凍らせるため、これでもかってぐらいに魔力を込めたからね……そう簡単に解けそうもないんだ……

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