第311話 こんなに楽しいのは久しぶりだよ!!
お姉さんたちとの楽しい模擬戦を終え、夕食の時間を過ごしている。
「アレス、昼間は元気いっぱいだったみたいだね?」
「はい、とても充実した時間を過ごさせていただきました!」
「それはよかった」
どうやら、訓練場で俺がお楽しみだったことについて、兄上に報告を上がっていたようだ。
まあ、別に隠していたわけでもなんでもないんだけどね。
「でも、そんな話を聞くと……僕もちょっと体を動かしたくなってしまうな」
「セス……」
そういえば、兄上はもともと宮廷騎士になることが夢だったってルッカさんがいってたっけ。
そんな戦闘魂を持つ男ならやっぱ、俺の話を聞いて血が滾っちゃうのかな?
フフッ、そうか……やはりあなたは俺の兄上で間違いないようだ……改めてそう認識できたよ。
ならば……
「兄上、もしよろしければ、一手御指南いただけませんか?」
「うん、いいよ! そうと決まったら、夕食のあと早速やろうか?」
「やっぱり……まったく、しょうがないわね……」
兄上のフットワークが軽い!
そんな兄上に対し、義姉上が若干あきれ気味だ。
もしや、義姉上は兄上に振り回されることが多いとか?
「あらあら、兄弟そろってやんちゃさんねぇ……でも、あんまり羽目を外し過ぎては駄目よ?」
「わかってるよ母上、ね?」
「はい、兄上のおっしゃるとおりです!」
義母上にちょいと釘を刺された格好だね。
でもまあ、俺も魔法の使用は制限するつもりだし、兄上も加減は理解しているハズ。
そのため、そこまで激しい模擬戦にはならないだろう。
それと、兄上は宮廷魔法士ではなく宮廷騎士を目指していたことからして、魔法より剣ってタイプなのだろう。
それなら、俺も剣術メインで挑みたいところ。
とまあ、そんな感じで急遽、兄上と模擬戦をすることが決まった。
そんなワクワク感に浸りながら夕食を平らげ、少々の休憩を挟んで訓練場へ移動する。
また、この兄弟対戦の話は屋敷中に広まっていたようで、既に訓練場は使用人たちというギャラリーでギッシリ。
この感じ、ロイターとの決闘が思い出されて、なんだか懐かしくなってくるよ。
ああ、あと前期試験前にやってた模擬戦もちょっと似てるかもしれないね。
なんてことを考えつつ、準備を整えていたところ……
「やあ、食後の運動かな?」
「本当に、好きですねぇ」
「それも~アレス様らしいですけどね~」
「そんなことよりアレス様よぉ、セス様はかなりつえぇから油断すんじゃねぇぞ!」
「頑張ってくださいっす!」
「アレス様の磨いてきた剣術、しっかりセス様に見せてあげるのよぉ」
護衛をしてくれたお姉さんたちが応援に来てくれた!
「私もね、馬の世話をちょっと休んでね、来たんだよね」
そして、御者をしていたシノリノさんも来てくれた!
よっしゃ! お姉さんたちのおかげで気合全開だ!!
「アレス様! 私たちこそ! 一番にアレス様の勝利を願っております!!」
「そうですとも! アレス様こそがソエラルタウト家の未来なのです!!」
アレス付きの使用人たちも応援に来たんだけど……なんか、次期侯爵を巡る対戦ってニュアンスになってる。
とはいえ、使用人たちがそういう感覚になってしまうのも無理はないか……
でもま、君たちもある程度は理解しているだろうけど、あのクソ親父が俺を次期侯爵に指名することは絶対ない。
だから、そういう期待の眼差しを向けないでくれたまえ。
「アレス、準備はいいかい?」
「はい!」
「二人とも、くれぐれも無理はしないようにね?」
「もちろんだよ」
「承知しております!」
「よろしい。それじゃあ二人とも構えて……始め!」
こうして、審判役の義母上から開始の声がかかる。
さて、どう攻めようか……
見たところ、使用武器はオーソドックスな木剣で構えは王国式。
なんとなく、ロイターの姿がダブって見えてくるね。
「来ないのかい? それなら、僕から攻めさせてもらうとしようかな」
そういって、斬りかかって来る兄上だが……速い!
間一髪で回避に成功。
「うん、いい反応だ」
「それはどうも!」
そして、兄上からの追撃を避けながら、こちらからも反撃の一振りを振るう!
さらに、連続斬りだ!
兄上に攻撃の隙を与えない!!
「おお、やるじゃないか!」
「兄上こそ!」
そんな俺の連続斬りを丁寧に捌いていく兄上。
このスピードでは、兄上の余裕を崩すのは無理なようだ。
ならば!
「へえ、剣速を上げてきたか……面白いね」
「まだまだぁ!」
今の俺では自力のスピードに限界があるので、魔力アシストで剣を振る速度を上げていく。
しかしながら、そのスピードにも兄上は対応可能なようだ。
「隙あり」
「クッ!」
俺の連続斬りに隙を見つけて、突きを入れてくる兄上。
それはなんとか回避することができたが……強い。
さっき、アイナさんが「セス様はかなりつえぇ」といっていたが、まさしくそのとおりだったようだ。
いやまあ、別にザコだと舐めていたつもりはなかったが……剣の腕だけで勝つのは難しいかもしれん。
「アレスは魔法のほうが得意なんだよね? 剣だけじゃなく、魔法も使ったらどうだい?」
「……どうやら、その必要がありそうですね」
というわけで、ストーンバレットをバラまいた。
それに対し兄上は障壁魔法で対処しようとした……ところで、阻害魔法を発動したった!
これぞ、ソイルリスペクトの魔法運用だ!!
「おっと、さすがにこれは厄介だね!」
とかなんとかいいながら、回避と剣技でストーンバレットの弾幕を攻略にかかる兄上。
あっぶね! なんか、上手い具合にストーンバレットを弾き返してくるし……なんて奴だ!
魔法を封じても、剣の技量だけでここまでやるとはね。
なるほど、こりゃ宮廷騎士を目指していただけはある。
だが、俺だってまだまだこんなもんじゃねぇ!
「凄い! 凄いよアレス!!」
「その言葉! そっくりそのままお返しします!!」
「フフッ! こんなに楽しいのは久しぶりだよ!!」
「それはそれは! 光栄です!!」
こうして、ヒートアップしていく攻防。
知らんかった、兄上がここまで強かったとはね!
でも、だからこそ燃えるってなもんだ!!
「さて、二人とも……それぐらいにしておきましょうか」
ここで、義母上の制止の声がかかる。
「……やれやれ……仕方ない」
「……フゥ……いいところだったんですけどね」
兄上との模擬戦はこれにて終了となった。
まあ、これ以上はシャレにならんレベルになってただろうからね。
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