第283話 良好な関係を築きたい
「ただいまキズナ君! 今までルッカさんっていう、ソエラルタウト家で義母上付きの侍女をしているお姉さんと面会してきたよ」
自室に戻ってきたところでキズナ君に挨拶をし、そのまま面会についての話を語って聞かせているところだ。
そこで改めて考えてみると、義母上が送ろうとしていた手紙を握りつぶしてたっぽいことからクソ親父は、やっぱり俺のことが気に入らないようだ。
それとは反対に、どうやら義母上は俺と良好な関係を築きたいと考えているみたいだね。
まあ、無理に敵対する必要もないし、そちらがそういうスタンスできてくれるのなら、俺も友好的な態度で臨む所存だ。
……それに、俺のお姉さんセンサーが義母上は信頼して大丈夫だと太鼓判を押してくれているのも大きい。
俺は、俺のお姉さんセンサーを信じる! だから義母上とも上手くやれるはず! そういう確信がある!!
あ、そうなると、しばらくこの部屋を空けることになるのか……
義母上やその周りの人はある程度気を許してもいいかもしれない。
しかしながら、そのほかのソエラルタウトの人間はな……クソ親父の意向で俺に不利益をもたらす存在になるかもしれん。
しかも、原作アレス君を破滅に導いたマヌケ族も紛れ込んでいるだろうし。
そんなところにキズナ君を連れて行くのは気が引けるな……
一応、環境を整えてくれる魔道具はこの部屋に設置しておいたから、世話とかそういう心配はないんだけどね。
だからといって、ひとりで置いておくっていうのもなぁ……どうしょっかな……?
それから、義母上はマヌケ族の暗躍を知ってるのだろうか?
ソエラルタウト侯爵婦人としてそれぐらいは知っててもおかしくないとは思うんだけど……どうなんだ?
義母上との会話中で何かの拍子に、知ってる前提でポロッとマヌケ族のことをしゃべったとき、実は知らなかったとかなったらマズいよな。
それに、上手くマヌケ族を発見できれば始末することになるだろう。
その場合、「お前! なんてことをしたんだ!!」ってなっちゃうかもしれないから、そういった対応についても考えておかなきゃだと思う。
正直、もともと夏休み中に実家へ帰るつもりがなかったから、その辺のところはきちんと考えてなかったんだよね……
よし! ここはエリナ先生に相談だ!!
……夏休み中、しばらく逢えなくなりそうだし。
今日のところは夕食までそんなに時間もないから、明日の授業後に行ってみるとしよう!
これで何も心配はないね!!
さて、そうと決まれば夕食までレミリネ流剣術の練習だ!
こうして、夕食の時間まで自室でひたすら剣を振り続けた……時間的に、運動場まで行くほどでもない気がしたからね。
そしてシャワーで汗を流し、食堂へ移動。
今日はお姉さんに対するソエラルタウト家モードという慣れないことをして疲れたからね、しっかりご飯を食べて気分転換をしよう。
そう思った瞬間、腹内アレス君から快哉の声が上がった。
まあ、腹内アレス君も気疲れしたよね。
そんなことを考えていたところで、ロイターとサンズが合流。
「ふむ、今日は何やら疲れるようなことがあったらしいな?」
「そうですね、顔に疲れの色が見えます」
「……よく分かったな」
「まあな」
「アレスさんの表情を読むことには慣れましたから」
「……そうか」
というわけで、ロイターとサンズに先ほどの面会の話をした。
もちろん、お姉さんに対するソエラルタウト家モードは疲れるって話も含めてね。
「使用人の年上女性に対する態度についてそこまで気にするとはな……」
「そこがアレスさんらしいといえば、らしいんですけどね」
「大事なことだからな」
ちなみに、この2人は今みたいな感じで、ロイターは上位者らしく、サンズは丁寧な態度で使用人に接するらしい。
やっぱ俺も、丁寧キャラでいくべきだったね……
「それにしても、まだそうと決まったわけではないのだろうが、手紙が途中で止められていたとはな……」
「まあ、嫉妬深い方だとそういうこともするという話は聞いたことがありますからね……」
「フッ、我が家の当主殿は器が小さいということだな」
とりあえずって感じで、クソ親父をディスっておいた。
フフフ、ソエラルタウト父子の不仲説が深まっちゃうねぇ。
そんでこの世界の貴族のあいだでは、こういうのは珍しいことじゃないみたいだね。
「いずれにせよ、これでソエラルタウト家の全てがお前に無関心だったわけではないことが分かったのだから、それはよかったのではないか?」
「そうですね、これを機会にお義母上との関係がよき方向へ進むといいですね」
「ああ、そうだな」
こんな感じの会話をしながら、夕食の時間は過ぎていった。
また、ロイターとサンズも夏休みは実家に帰省するらしい。
というか、この学園の生徒はほとんどそうするみたいだね。
「さて、それじゃあ運動場に移動するか」
「はい、そろそろいい時間ですものね」
「よっしゃ、気合いを入れてくぞ!」
そうして運動場へと向かい、ファティマとパルフェナも合流する。
それから少し間を置いて、4人の少年がこちらに向かってきた。
それは、ヴィーン一行だった……もちろんそこにはソイルもいる。
「アレスさん、そして皆さん……」
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