第135話 強固な魔力の壁

「おはよう、キズナ君! 今日も素敵に生い茂ってるね!!」


 というわけでキズナ君への挨拶を済ませたところで、今日は闇の日。

 そして、壁系統の魔法の練習を始めて2日目。

 それではさっそく、結果発表にいってみよう!

 魔纏は……失敗! 残念!!

 防壁は……成功! やったね!!

 ……え? 防壁魔法に慣れてなかったんじゃないの!? って思っちゃったよね?

 ふふっ、いいだろう、説明してあげようじゃないか。

 一言でいえば、魔力のごり押し! 実に俺らしい!!

 いやいや、わけわかんねぇって? ちゃんと説明するから、そう慌てなさんなって。

 俺が今回使った防壁は、魔力の防壁であって、防壁魔法ではないんだ。

 というのが、一般的な防壁魔法は魔法士が絶えず魔力を供給することで防壁魔法となっている。

 これにより、攻撃を受けたりして壁が削られても、その都度修復されて防御力を一定に保てるみたいな感じかな?

 そのほかにも防壁の部分ごとの強度を変えたりとか、いろいろと応用を利かせることができるみたい。

 ただここで俺は考えたのだ、野営で一晩防御するだけなら、魔力の供給なんか無視してメッチャ強度の高い壁を作ってそのままにしとけばよくね? ってさ。

 結局的には、石の壁を作ってそのままにするのと同じことって言えるかもしれない。

 魔法を発動するときのイメージにもよるだろうけど、魔力で作った石とかの物質もそのまま石として残るからさ。

 まぁ、魔力の壁だと物質としてのイメージが弱いからか、魔力が徐々に空気中に魔素として還元されていってしまうみたいだけどね。

 それもふまえてとにかくシンプルに、魔素に還元されようが関係ないってぐらいに魔力をつぎ込んだメッチャ強固な魔力の壁を生成しておいたのだ。


「その結果がコレってわけだね」


 そう言って、防壁をゴツンゴツンと殴ってみるがビクともしない。

 うん、防御力としては十分って感じかな?

 とりあえずこれで、野営で一晩寝ているあいだの防御って部分はクリアしたと言えるかな?

 ふっ、こんなことができるのはアレス君の魔力量あってのことってわけさ。

 とまぁ、ちょっとした自慢なんかもしてみたところで、魔纏について話を移そう。

 魔纏に関しては、昨日と同じように寝ているあいだも魔力を供給して魔法を維持するという方法を継続した。

 一応最終的な目標はこっちだからね。

 魔力の防壁も、そのうちちゃんとした防壁魔法の域に到達させたいし。

 まぁ、今回も維持できずに解除となり失敗したわけだが……

 とりあえず魔力の防壁により最低限は達成できたと思うので、ここからは気長にやっていけばいいかなって感じだ。

 このまま継続していれば、いつかそのうちできるようになるだろう、きっと! たぶん!!

 ちなみにであるが、そもそもとして魔力の防壁じゃなくて、石の壁でよくね? って思った方がいるかもしれない。

 確かに、それでもいいかもしれない。

 ただ、石の壁だと物理的な攻撃には対処できるが、闇属性魔法とかみたいな精神的な攻撃を防げないからね……

 あとはそうだな……ゴースト系のモンスターなんかも防げないだろうなぁ。

 とはいえ、野営研修で行く場所にそんな対処の面倒そうな敵が出るわけないけどね。

 基本的にはゴブリンレベル……ちょっと頑張っちゃうパーティーならオークレベルの領域ってところだろう。

 まぁね、アレス君の魔力量のせいと言うべきか、おかげと言うべきか……俺の強さの感覚ってたぶん普通とズレてきてるだろうから……

 オークレベルの領域で野営っていうのも簡単なことのように思ってしまうけど、本来なら結構大変なことのはず。

 なんてったって、原作のゲームならまだ最序盤なわけだからね。

 ゲーム上では普通の学生たちもまだレベルがそんなに上がっていない頃だし、それが現実となったこの世界でも状況は似たようなものだろう。

 とはいえ、一応戦闘能力的にオークレベルを倒せる学生も普通にいることはいる、でもそれは全員じゃない。

 それに加えて、野営全般もやれってなるとさらに難易度が上がっちゃうだろうからさ。

 まぁそんなわけで、自分の実力と相談しながら、そこまで極端に強いモンスターが出ないところで野営の練習を今のうちにやっておきなさいってことなんだろうね。

 そして、この世界の住人はまだ知らない……今回の野営研修に、はぐれオーガが出るかもしれないってことを……

 なんておそろし気に言ってはみたものの、王女殿下の取り巻き君たち筆頭に結構な数の学生が順調すぎるぐらいにレベル上げ的なことをしてるからね……意外と余裕かもしれないんだけどさ……

 そんなことを思いつつ、部屋中を囲む魔力の防壁に視線を向ける。


「さて、どうやって外に出ようか……」

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