あの世アイドル彼岸華!〜桃太郎〜

波野夜緒

プロローグ

あの世にもアイドルは存在する。


あの世で高い人気を誇る女性アイドルグループ『地獄☆8』。


そのメンバーの一人であり、センターもつとめる少女はマイクを持ち、カメラに向かって笑いかけていた。



「皆さん、こんにちは〜。『突撃!おとぎ話!』のお時間です!」



漆黒の着物に映える赤色の帯、彼岸花の髪飾りでひとつにまとめられた艶やかな髪の毛。


深紅の瞳に雪のように白い肌、完璧と称される美貌を持つ彼女は、彼岸ひがんはなという。


あの世ーーつまり、死後の世界でアイドルをしている、あの世の住人だ。



「今回は昔話桃太郎の主人公である桃太郎さんに突撃してみたいと思います!それでは、行ってみましょう!」


「はい、カット!」



そう声がかかり、華は前に伸ばしていた手を下げる。


現在は、おとぎ話の主人公や登場人物に取材をするバラエティ番組『突撃!おとぎ話!』の撮影中である。


華は次の予定を確認するべく、近くにいたスタッフに声をかけた。



「次は桃太郎さんにリポートするんですよね?」



ここは、桃太郎が現在いるというおじいさんが芝刈りをしている山の麓。


当然、次やるべきは桃太郎のリポートである。


スケジュールの予定もそうなっている。


が、華の問いに対し、スタッフは気まずそうに目を逸らした。



「えっと、そのことなんですけど……」



口篭るスタッフに華はキョトンとする。


この時、この場にいた全員は考えもしなかった。


まさか、桃太郎の物語があんな風になることをーー。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る