第2話

 夕食の時間になったので、カーリーは食堂に向かった。

「お母様もお父様も、喜んでいるのかしら?」

 カーリーは不安に思いながら、食堂のドアを開けた。


 食卓にはご馳走が並んでいた。

 カーリーが好きな、チーズのオムレツもちゃんと置かれている。

「お母様、お父様、今日はご馳走ですね」

「ええ、カーリーの婚約祝いですからね」

 母親も嬉しそうに笑っている。

「古くから続くガルシア侯爵家と、縁が結ばれるなんて喜ばしいことです」

 母親はそう言いながら、カーリーに微笑みを向けた。


「ああ。カーリーは魔法が使えるせいで避けられることも多いからな。」

 父親がにっこりと笑って、食前の祈りを捧げる。

 母親もカーリーも、父親に従い両手を組んで目を閉じた。

 いつもより少し長い祈りの言葉のあと、父親がぽつりと言った。

「良い縁談に恵まれてよかった」


 カーリーは回復魔法が使えたのだが、口の悪い他人は魔女の子と言って、カーリーを避けることもあった。その度にカーリーは自分の特殊な力を疎ましく思っていた。

「カーリー、好きな物を食べなさい。今日は貴方のお祝いなのですから」

「お母様、ありがとうございます」

 カーリーは熱々のチーズオムレツを食べ、パンを口に運んだ。

「さあ、クジャクの肉もあるぞ」

「ありがとうございます、お父様」

 カーリーは父親が切り分けたクジャクの肉を食べて微笑んだ。



「来週には両家族の顔合わせがある。失礼の無いよう、気をつけるんだぞ、カーリー」

「はい、お父様」

 カーリーは乱暴と言われるアレスと、上手くやっていけるかを考えて気が重くなった。

「きっと上手くいきますよ、カーリー」

 母親が優しく言うと、カーリーは静かに頷いた。


 食事が終わると、カーリーは先に部屋に戻った。

「お父様もお母様も喜んでいらっしゃったわ。……きっと、上手くいきますわ……」

 カーリーはベッドに入っても、中々眠りにつけなかった。

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