第3話 2大神の魂を持つ少年〜3〜

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


森林の中に続く一本の道を1台の馬車がカラカラと車輪が音を発しながら回転する。


金色を基調とした豪華なデザインがされた馬車は、側から見ても高貴な人物を乗せているのだろうと予想が出来る。


その馬車の周りには馬に騎乗した騎士が数人、馬車を守る様に囲っていた。


腰には太陽の光を反射し銀色に輝く剣を携え、変事が起れば主であろう馬車に乗っている高貴な人物を守れるように常に周りへと視線を向けながら警戒していた。




「慣れない馬車の中、疲れてはいないかリリス?」


「はい。大丈夫です、アウギスお父様」


金色に輝く艶のある髪を持ち、長さは肩あたりとショートヘアーで8歳ぐらいとまだまだ幼い容姿をしたリリスと呼ばれる少女は正面に座るアウギスと呼ばれる父親に大丈夫だと笑顔で答える。


アウギスと呼ばれる男性は端正な顔立ちをしてはいるが、その表情は威厳を感じる風格を纏っている。

リリスと同じ金色の髪を持ち、家族と居る場合は優しい眼をしているが、いざ仕事となるとその眼は威厳のある目力を発揮する。


「そうか。まだ小さい馬車での長旅に慣れていないであろうに、偉い子だ」


「ええ、そうね。だけどリリス?本当に辛くなったら我慢しないで言うのですよ?」


「はい、ナナリーお母様」


アウギスだけでなく母親であるナナリーにも心配されるリリスはアウギスに向けた様に笑顔を向ける。


金色で艶のある長髪の持つナナリーは、慈愛を秘めた優しい表情を娘であるリリスに向ける。



心配はかけたくないと思ってはいるが、これほどまで気にかけてくれる両親の存在を嬉しく思っている。



自分は愛されている。



厳しい時もあるけれど、それは愛があると確信しているからこそ感じられた。



リリスはそんな両親を尊敬している。



私も尊敬する両親みたいな大人になりたいと密かな夢を小さな体に秘めていた。



「リリスお嬢様、お飲み物は如何ですか?」


リリスの隣に位置し座っているメイド姿をした女性が飲み物を勧めてくる。


「ありがとうミリアさん。じゃぁ、お水を一杯だけ頂けますか?」


「私のようなメイドにはミリアで結構ですといつも仰ってますのに。お嬢様は私共のようなメイドにすらお優しいですね」


「ミリアさんはミリアさんですから。それに私よりも年上です。年長者を敬うのは当然ですよ」


嘘偽りの無い透き通った曇りない瞳をミリアに向けながら、リリスは丁寧な受け答えをする。


下々であるメイドにすら敬意を込めるリリス。


そんなリリスをミリアはお嬢様の1番の美点だと感じていた。


ミリアは鞄からコップと、透明な瓶に入れられている水を取り出す。


トクトクと透明な瓶に入れられている濁りない綺麗な水がコップへと注がれる。


ミリアはコップに注がれた透明の水を零れない様にリリスへと手渡そうとした。



その時、突如として馬車の外から耳をつんざく程の爆発音と共に爆発による衝撃が馬車を襲う。


手渡そうとしていた水は、不覚にもミリアの手を許可なく離れ、馬車の中で舞い散った。


馬車の外は土煙が立ち込め、辺りの視界を曇らせる。




一体何が起こったのか?




これから何が起こるのか?




そんな不安がリリスの小さな体を包み込み、意思とは反対に口から悲鳴が発せられた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る