第3話 ツンデレの破壊力
「そっとね、そっとしてくださいね、琴子さん 」
「大丈夫よ。腕とりあえず上がったんでしょ? 」
「はい、まぁ違和感はありましたが.. 」
「たぶんヒビくらいなもんだから 」
「ヒ・ビ・!? 」
「うん。そう! 」
「あれ? 包帯とめるテープがない。んっ、もぅ.. ねぇ、あなたちょっとここ押さえてて。ちょっとあっちの薬箱みてくるから.. 」
「え、は、はい 」
「.... 」
「 ....」
「(な、なんか気まずいなぁ)」
「あの、私が海に落ちたのも、あなたがケガしたのも、もとをただせばあなたが招いたことだから..」
「 .... (そういうこと言う? )」
「でも..ごめんなさい。 あと....背負ってくれてありがとう」
「( て、天然もののツンデレか! はじめて見た! )」
「あった! あった! ほれ、これでよし。
「はい。あの1箱まるまるもらえますか? 」
「それとあなた名前は? 一応、
「はやさか..
「はやさか....街の人? 」
「はい。でも、父はこの島出身で元の姓は田宮です 」
「田宮.... もしかして、次郎さんの? 」
「はい 」
「..(『たみや..じろう』って昔の俳優にいなかったっけ? )」
など心の奥で突っ込みながら、衣類をカバンに突っ込んだ。
「佑ちゃん、今日は蒔絵ちゃんと一緒に帰りなよ。いいでしょ? 蒔絵ちゃん 」
「は? なんで? 」
「いいよね? 蒔絵ちゃん? 」
「 ....はい」
こうして琴子さんの脅しに屈した形で早坂の御嬢さんは俺と街へ帰ることとなった。
彼女はセンターにあった黄色いギョサンを履き、俺の前をスタスタ歩いている。
俺は少しズキズキし始めた腕をかばいながら手持ちバッグを持ってトコトコ歩く。
突然彼女は立ち止まり俺の前にツカツカ歩いて来ると俺のバッグを奪い取り、お約束のように言葉を吐くのだった。
「遅いわね! フェリーが出向しちゃうじゃない! カバンは持つから早く歩いてよね 」
フェリーが港を離れる。
小さくなっていく荻島を遠い目でみる彼女の横顔を見て「ちょっと可愛いかな」なんて思う。
..と彼女が俺の気配に気づいたのか突然、俺を睨みつける。
まるで「ギリギリ」と効果音がするような目つきだ。
そして絞り出すような声で言うのだ。
「ふ..服....と下着....忘れたじゃない! 」
え?? それも俺のせいなの?
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