「(略)下鴨女子寮へようこそ」へようこそ!

鷲生智美

第1話 「毒親もの小説」どこまで作者の実体験?

カクヨムで「京都市左京区下鴨女子寮へこようこそ!」という小説を投稿しております鷲生智美(わしゅうさとみ)と申します。


↓小説の画面はこちらです。

https://kakuyomu.jp/works/16816927860159349467


この小説、サブタイトルまで全て表記すると、

「京都市左京区下鴨女子寮へようこそ! 親が毒でも彼氏がクソでも仲間がいれば大丈夫!」です。


毒親の許で育った首都圏在住の18歳の女の子が、遠方の大学に進学したのを機に、女子寮暮らしを通じて毒親から解放されていくお話です。


舞台は京都。

女子大学生にとっての京都の生活体験も背景に織り込まれています。


そんなにシリアスな内容ではなくて、森見登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』みたいなふんわりファンタジー風味の柔らかいお話です。

(完成済みの草稿があって、推敲しながら投稿しております)。


このエッセイは、この小説──長いので「(略)下鴨女子寮へようこそ!」と表記します──にまつわる私の体験記や取材記、参考資料などを書き記していきます。


今回は「毒親」について、です。


「毒親」という言葉が広く知られるようになりました。


「毒親」とは。

Wikipediaの解説によれば「毒親(どくおや、英: toxic parents)は、毒になる親の略で、毒と比喩されるような悪影響を子供に及ぼす親」です。


アメリカの心理学本が由来ですが、厳密には学術用語ではありません。

とはいえ、「ろくでもない親」一般をざっくり表現するのに便利な言葉だと思います。

最近では、安部元首相を殺害した容疑者の母親がそれだと言えるでしょう。


拙作「(略)下鴨女子寮へようこそ!」の毒親描写。

「こんな小説書くということは、これは作者の実体験?」とお思いの皆さま。

ええ、その通りです。

「第1話 退学命令」は私の身に降りかかった出来事と、ほとんど同じです。


拙作の主人公である美希の境遇は私自身のそれをそのまま書きました。

私の実家も祖父の代までわりと資産家で、なまじ、まとまった額の遺産があったため、三人の子どもの間で遺産相続がずっと棚上げになっていました。


この三人兄弟の中で末っ子だった父が、私の祖母と同居し、私の実母は姑の世話を引き受けさせられます。

そして、姑にいびられていた母は、何としても他の兄弟よりも多く遺産を手に入れたいと強く願っていました。

ですから、私が物心つく前から「○○ちゃんが頑張って、ママに遺産が来るようにしてね」と言われ続けたものです(小学校の低学年くらいには言われてた記憶があります)。


一方で、母は、わりと勉強が得意だった私をしょっちゅう攻撃してきました。

「勉強ができる子どもの何が悪いのか」ですか?

そりゃ「女の子のくせに勉強ができる」というのは、昭和の時代、非難されるべきことだったんですよ……。


私が母の思い通りに振る舞わなかったり、母の言動を批判したりすると、ネチネチ嫌味を言われたものです。

「あんたって子は冷たいねえ……。いくら勉強できても心が冷たいのはアカンねえ。人間は優しさが一番大事やのにねえ……」と。

ここらあたりは拙作の美希と同じです。


美希同様、私も遠く離れた学校に進学しようとしたところ、父が癌になったことを理由に実家に呼び戻されました。

私の場合は大学ではなく大学院だったのですが、それ以外は現実と拙作の美希はほぼ同じです。


私を地元に戻そうとする際の母の主張は、今回の「第1話 退学命令」に描写したのと全く同じです。

この部分は「小説」でありながら、書き手の私は「想像」も「創造」も全くしておりません。単に記憶をなぞっただけです。実録というか、ノンフィクションです。


ただ、現実の私が実家に戻らざるを得なくなったのに対し、私の書く小説の中の美希は幸運が重なり、かろうじて進学が叶います。


私は、この小説を書くことで、自分の断念した夢の続きを、自分の産み出した美希というキャラに託しているとも言えます。


今の私は毒親とほぼ絶縁し、没交渉です。

過去を振り返りながら自由に小説を書くことができます。

こうして、せっかく自分の好きなようにお話を紡ぐことができるのですから、拙作では美希に楽しい時間を過ごしてもらいたいと思っています。


なので、拙作は毒親の支配から離れて幸せになる物語です。

ちょっと苦い思いもしますが、美希は信頼できる仲間と共に、健康的であたたかな人間関係の中に踏み出します。

そんなハッピーエンドに向かうまで、おつきあいいただけましたら幸いです。


なお、拙作との現実の私との細かい相違点について書き加えますと。


拙作では首都圏在住の美希が、500キロ離れた京都の「西都大学」に進学するという設定です。

あきらかに「京都大学」がモデルですが、私が毒母に進学を阻まれたのは首都圏にある別の学校です。

また、私の実家は関西にあります。

美希と私とでは出身地と進学希望先地がちょうど反対になっています。


どうしてこのような設定にしたか。

理由は……。

現在首都圏の方が人口が多く、読み手様の多くが首都圏在住ではないかと思ったからです。

首都圏出身の美希が、親元を離れて進学できるのは、京都の京都大学法学部かなあと思いました。


また、私自身が現在京都に住んでおりますので、取材しやすいんですよw

この小説は、京都の見どころも交えながらの展開になります。

この点もお楽しみいただければと思います。


どうか小説「(略)下鴨女子寮」とこのエッセイ、最後までお付き合いくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。


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