第3.5話 別物の写真

 部活が終わって家に帰った後、柾はまだ両親が帰ってきていない静かなリビングで、ソファーに転がりながら考え事をしていた。


 家が裕福ということもあり、リビングは無駄に広い。テレビのサイズもだいぶ大きめで部屋の至る所に観葉植物まで置かれている。




 考え事というのは、今日の部活についてだ。まずそもそも、『写真を撮れない写真部員』というのがおかしな話である。


 そう思いながらリビングの隅に目を向ける。


 そこには何段もある大きな棚。その一段一段に写真と共に大量の賞状やトロフィーが置かれている。


 柾はゆっくりと棚に近づき、置いてある写真の一枚を手に取る。そこには、家からそう遠くないある公園の木陰で猫と戯れる山吹色の髪を纏った綺麗な少女が映っていた。


 その写真はしっかりとした額縁に入れられていて、横の【金賞】と書かれたトロフィーには『天井 柾殿』という文字が彫られていた。


「この頃は、ちゃんと撮れてたんだな」


 見渡すと、そこにある写真のほとんどは生き物の写真だった。

 画角や光の入れ方の癖など、撮り方自体は今とあまり変わっていないものの、柾には、それは全くの別人が撮ったもののように思えた。


 

 いつから撮れなくなったのだろうか…


 そんなことを考えていると、ピロンとスマホが鳴る音がし、画面を見ると『梅坂うめさか高校写真部2年生 に招待されました』という通知が来ている。


 夕方に鹿嶋が言っていた連絡とはこれのことだろう、と理解した柾はすぐさま参加のボタンを押した。

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