第150話 花見

『洗濯機にしな〜い?』


おもむろに声をあげ叫びだす姫。トイレトレーニングをしていたから、てっきり漏らしたかとパンツを確認。漏れてはおらず、疑問を感じる南山之寿。もう一度、姫に言うようにと依頼。


『今日、センタッキーにしなぁ〜い?』


なるほどと、瞬時に理解。某ファーストフードのチキンのCMを、間違えて口ずさんでいた姫。可愛いものだと微笑む南山之寿。止まらぬ姫のCM。もしやと、瞬時に理解。食べたいのかと問うと、頷く姫。


本日の闘いは、花見。良い場所を取るために、朝から若手を陣取らさせるブラックな企業。日陰が無いと暑いと、罵声を浴びせるブラックな家族。場所を取ったのに、誰も来ないブラックなサークル。花粉症の南山之寿が、絶対近寄らない集団の一例。


花見を兼ねた散歩、ではなく買出し。行き先は、某ファーストフード。桜は開花宣言があったが、まだ満開までには至っていない近所の桜並木。桜には見向きもせず一路店に向かう、花より団子の南山之寿。


暖かい日かつ、チキンのファーストフードに行くからと、服装を寄せてみた南山之寿。白いサマージャケット。カーネル南ダースの完成。そんなふざけたことを考えていると、目的の店に到着。


選択した商品は、バケツの様な入れ物、バーレルを購入。チキンだけでは物足りない、チキン南山。サイドメニューからポテトやビスケット、ツイスターやら選択。手渡された袋を持ち、バーベルなのかと錯覚。重りを減らすかと、自己暗示する南山之寿。こっそりと買った、コーヒーとチョコパイを口に詰め込みながら帰宅。


帰宅しての昼食。窓から見える、一本の桜。これで十分な花見。あとはYouTubeで桜の映像でも流せば、更に良し。花粉を長時間浴びながらの食事は回避。チキンを食べ終え、満足する姫。


『汚れついてるよ!』

『チョコの染みだな』


南山之寿の胸元を指差す若。視線の先には、黒い染み。先ほど帰りに食べたチョコパイが垂れたと理解。感謝を伝え、汚れを拭こうとする南山之寿。


『ぼくのは無いの?』

『わたしのは!』


帰り道のお供に購入したことを白状。悪事は自然とバレる。否、自爆しただけの話。


『洗濯機にしない?』

『一着なら、手洗い!』


ジャケットの汚れと、ツマミ食いの罪を洗い流した。

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