第68話 Dr.某

 戦国時代の武将である山本勘助は、武田信玄の『懐刀』として有名。重要な計画などに参画し、主君に忠実で絶大の信頼を得ている部下を指す。


『あいつは社長の懐刀だ』


 実際には、聞いたことがない南山之寿。そもそも、この言葉を使う人がいるのか疑問。


『あの社長は傀儡だ』


 これもあまり聞いたこともない南山之寿。世の中には、そんな社長も存在するのかもしれないが、南山之寿には無縁な話。


 水戸黄門の懐刀といえば、助さん格さん。海賊王を目指す主人公の懐刀といえば、三刀流剣士に料理人。懐刀というのか、両翼というのか。


 南山之寿の両翼といえば……。


 今日の対戦パートナーは、Dr.某。片割れのチョコミント野郎アイスは、冬季休暇中。


 学生時代、ディスカウントストアでバイトをしていた南山之寿。お酒やツマミに食品などを扱う店。陳列棚には所狭しと、様々なものを並べるスタイル。棚の一角に並ぶウイスキーのミニボトル。あまり売れないコーナーなどもある。

 

『サ○トリー R○D 』


 誰が買うのかわからないが、常にストックされている一品。誰が買うのか、分かる日が来た南山之寿。近所に住む、おじいさん。このウイスキーが好物らしい。昼に買いに来て、夕方にまた来る酒豪。必ず一本ずつ買うこだわり。この人のためだけに、商品を発注する店長。


 ある時、店に来る途中で転んだおじいさん。額からは赤い血が滲む。南山之寿の心配は受け取らず、R○Dを素早く購入して帰宅。


『赤い彗星』


 失礼極まりないが、他のバイト仲間とともに呼んでいた南山之寿。だが、その信念の買物スピリッツは、南山之寿に受継がれた。


 足繁く通うスーパー。南山之寿のために用意されている、Dr.某のコーナー。そう信じている南山之寿。チョコミントも同様。


 信念ある買物が、陳列棚を確保する。人気や流行りではない。最早、執念かもしれない。この想い出の引き金は、とある映画のタイトル。 


『ONE PIECE FILM R○D』


 Dr.某とチョコミント野郎が、メジャーになる新時代は未だ来ない。また一店舗、近所のスーパーからこの両翼が消え、衝撃をうける南山之寿。


 例えるならば、『青いイナズマ』。店長の采配に、心を狂わされた南山之寿。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る