第53話 思い込み

『幽霊の正体見たり枯れ尾花』


 幽霊だと思い怖がっていたものをよく見ると、風にゆれる枯れすすき。薄気味悪く思うものも、その正体を確かめてみると、実は少しも怖いものではないという例え。怖い怖いと思うと、なんでもないものまでとても恐ろしく感じてしまう心理。


 誰もいない部屋で聞こえる『ガタッ』という物音。怯えながら部屋を見渡す南山之寿。エアコンの上に乗せていた、防カビ剤が落ちただけ。


 今日の対決は、思い込み。思い込みで動くと、ろくなことがない。締切りが明日と思い込み、今日を過ごす。明日になり、実は昨日が締切りだと気が付き嘆き悲しむ。年に数回は陥る、南山之寿の思い込み。


 杏仁豆腐の食感が苦手な南山之寿。どことなく風味がDr.某。これは杏仁豆腐に非ず。杏仁豆腐の姿をしたDr.某。そう思い込むと飲める。不思議な体験をする南山之寿。


 胃袋と腸が丈夫と思い込んでいる南山之寿。大食いチャレンジや激辛チャレンジで、手痛いしっぺ返しを食らう。鞄の中に対策本部を設置。胃薬に整腸剤を常備。これで完璧と思い込む南山之寿。結果は、負のスパイラルに突入するだけ。


 ある時、体調が悪いと嘆く後輩。

『南山さん、俺、風邪っぽいんですよ……』

『風邪薬いる?』

 南山之寿は時に人を試す。渡したのは、整腸剤。


 夕方頃、後輩に確認。

『体調はどう?』

『南山さんのおかげでバッチリです!』


 思い込みで飲んだ薬は思わぬ効果を発揮する。


 ――プラシーボ効果

 仮病じゃないと、思い込みたい。

  


 


 

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