第13話 夢
『南山之寿が創っているものは、料理ではない。――夢そのものだ』
こんな評価を受ける飲食店を創くるという夢。無謀としかいいようの無い夢。叶う訳はない。以前にも綴った、カレーの惨劇が頭をよぎる。
『南山之寿が創っているものは、料理ではない。――悪意そのものだ』
妥当な評価である。ならば、もう少し現実的な夢を語ろう。
『南山之寿のおかげで、チョコミントが食べられる様になった!』
これならばどうであろうか。かなり、現実的ではなかろうか。チョコミント好きの南山之寿が、カクヨムを通じて読者に刷り込んだ結果。あながちあり得なくもないはずだ。宣伝を通り越し、最早洗脳かもしれない。
『チョコミントの伝道師、南山之寿! 令和に巻き起こしたチョコミント革命!』
夢が向こうから歩いて来たという、青い考え。チョコミント以上に、青く甘っちょろい考え。甘っちょろい考えも、混ぜ合わせれば不思議と尖る。
『泣く子も黙る飲食店! チョコミント専門店
自由が丘に縁もゆかりも無い。この地はスイーツ激戦区という検索結果だけを鵜呑みにしている南山之寿。気にしないで欲しい。多分、自由が丘を制すものは、世界を制す。
丁寧に淹れた珈琲。彫刻の様なチョコミントケーキの王道セット。常連客のみが口にすることを許される裏メニュー。
『チョコミントDive☆Dr.某パフェ! チョコミントマシマシ!』
こんな奇抜なメニューが売りだが、経営理念はまともにする。お客様ファーストが売り。
『全ての人に至福のひとときを』
さらに、異物混入対策もバッチリだ。
『あの〜、髪の毛が入っているんですけど……』
すかさず店員全員で整列、そして謝罪。素早い謝罪は、相手の怒りを鎮める。しかも全員坊主。『大丈夫です』の一言を引き出すまで、誠心誠意謝る。きっと相手も理解するはずだ。
こんな夢をいだきながら、会社を辞めることなく働いている。辞める勇気なんて無い。それならば、まずは軍資金を。そう思って購入するドリームジャンボ。
――夢が叶うことは無い。
『南山之寿が手にしているものは、夢への切符ではない。――外れた宝くじだ』
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