第17話 事件の影

 次の日、白鳥は精神科医の石田の病院を訪ねた、石田は院長で病院の

経営者だった。


捜査が終了したので残務処理で書類を纏めるために正人君の子供の頃の状況を聞きに来たと説明した。


石田は前に武内と一緒に来た精神科の教授に話した内容に変わりないと答えた。


正人の集合写真を見せたら顔色が変わった。


「これは何ですか? 何処ですか?」と慌てた様子で聞いてきた。


「旅行に行った時の集合写真で、何かの宗教団体の様ですが? 心当たりはありますか?」


「いいえ、ないです」少し動揺しているようだった。


「正人君が勝手に妄想してミクさんと義父を殺した事実は変わらないが、うちの担当医の教授の妄想の鑑定が不確定になって来ました。先生はどう思いますか?」


「私も妄想だと思います。本人にとって都合の悪い事は勝手に記憶から消してしまう事もありますから、ミクさんとの事は正人君の妄想と私も思います」


白鳥はどちらが本当か分らなくなってきた。が石田は正人がグループで旅行していた事は知っていたように感じた。


署に戻ってきた白鳥は署長に呼ばれた。


「もう済んだ事件だから余計な詮索はしはいように」


「残務処理で書類を作成しているだけです」


「重要な書類じゃないから適当に終われせるように」署長は険しい顔で話した。


白鳥は(石田の病院を訪ねたことが署長の耳に入った。誰が教えたのだろう?)と考えて席に着いた。


隣の席の上司の菊池に聞いた。


「公安だろう? ミクの義父が殺される前に公安が署長の処に来たらしい。新興宗教の捜査らしいが、本人達が死んでしまって没になったらしい。あとは精神科医の石田だろう?」


「石田と署長は親しいのですか?」


「大きい声では言えないが、政治家の黒岩氏の関連で知り合いらしい」


「じゃ、石田から署長に連絡が入ったのでしょう。それにミクさんの義父が新興宗教の教祖と分っていれば捜査の方向も違ったのに」


「つい最近まで極秘になっていて、事件が終了したので公表したらしい」


「えー 私は聞いてなかった? 武内さんも?」


「この事件の担当者には話すなと」


「えっ、如何して?」


「分らないが、何か後ろに大きいものがいるようで秘密裏に処理したかったじゃないの? 白鳥くんも詮索は止めて適当な書類を作成すれば良い」


白鳥はアパートで一人暮らしだった。


今日もコンビニで弁当と缶麦酒を買い部屋に帰った。


パジャマに着替えて、テレビを点けて缶麦酒を開けコップに注いだ。


(黒山)とテレビより聞こえて来た。衆議院選挙の放送をしていた。


あの正人の父親の黒山氏か? と思ったが次男が出馬するらしい。


長男も確か政治家だったと白鳥は思い出した。


政治家一家だが、正人だけは道を外れて死を選んだ、次男が当選すれば世間の注目になる、マスコミなどが色々と詮索して騒ぐだろう? 


黒山一族に取っては正人が死んで都合が良かったかも? 

でも武内さんや教授を自殺教唆で起訴した。その辺が分からない?


小選挙区で父親や長男と違う場所から出馬する予定らしいが、票は集められるのか? 


白鳥は次の日に署で政治家の黒山氏に付いてネットで調べた。


やはり票田にある中堅の宗教団体が後ろにいた。


今度の次男の出馬も宗教団体の後ろだてがあった。


この町は東京の直ぐ隣に位置している。


黒岩氏の地盤はこの町だった。そして、宗教団体の本拠地でもあった。

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