第16話 精神科教授の暗示

 白鳥は精神科医の教授の病院を訪ねた。


そして、正人のパソコンからプリントアウトした数枚の写真を見せた。


「先生が話された正人とミクとの事は全て妄想だったの鑑定は立証できませんが?」


「私が鑑定した時には、正人さんはミクさんとの恋人関係の話はしていました。

海を見に旅行したこともあると話していましたから、この写真は事実ですね。

でも団体で旅行していた記憶は消えています。恐らくこの集合写真の記憶は消されたと思います」


「消されたとは?」


「あー すいません、分り難いですね。細かく暗示に掛けられていたかも

知れません」


「誰が暗示をかけたのですか?」


「私の想像ですが、それが出来るのは精神科医か、一定の技術を持った人しかいません。一番可能性があるのが、正人君の子供の頃から診察している人です」


「その人は?」


「黒山氏の弁護士から名前を聞きました。確か?石田と言う精神科医だったと思います」


「そんなに簡単に掛かる物ですか?」


「掛かります。特に正人君のような精神病患者は簡単に掛かります。それに疑惑を持つ事もありません・・・・・・もしかしたら・・・・正人くんのミクさんへの妄想は暗示に掛けられていたかも知れません?」


「何故、そんな暗示を掛けるのですか?」


「私にも分りません。今更ですがその写真を見て全てが妄想でない可能性が出て来ました。私が間違っていた部分もあります」教授は申し訳なさそうに話した。


自分で思い込んで殺人を犯したのと、他人に暗示に掛けられて殺人を犯すのとは責任能力が違って来ると白鳥は考えたが、頭の隅に適当に書類を纏めで終わりにしようとする気持ちもあった。

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