第2話 ミクの浮気
話はミクが他の男と交際していて男女の関係になっていると、信二さんの付き合っている美鈴さんからの情報だった。
彼女が可哀そうだからそんなに責めないでと言っていたそうだ。私はまさかと衝撃を受けたが、その場は平静を装ったが嫉妬心で何も手に着かなく、その後の話も聞こえない状態だった。
次の日、どうしても気になり昼食を食べにミクのレストランに行った。ミクはどんな顔をしているのかと思い暫く見ていたが、何時もと変わらない表情で仕事をしていた。私は悶々として火曜日の夜9時が来るのを待った。
ミクは何時と変わらないようすでアパートに来た。
手提げ袋にツマミと缶麦酒が入っていた。
「今日、スーパーに寄ったけど遅かったので正人が好きな刺身は無かった。ごめんね。替りに唐揚げを買って来たから」と言いながら手提げ袋をテーブルの上に置いて支度を始めた。
「まだ、ご飯食べて無いでしょう? ちょっと待って直ぐ支度するから」
「うん・・・・」
「どうしたの? 元気ないね」
「ちょっと話しがある」
「えっ、どんな話?」
「飲みながら後で話す」
「うん、分かった」ミクは不安そうな顔をした。
テーブルの上の皿に盛られた唐揚げ、刺身の代わりの蛸とキュウリの酢物、ポテトフライなど私達には週に一度の贅沢だった。
私は缶麦酒のプルを開けコップに注ぎ一口飲んだ。
ミクが「話しってなに?」と聞いた。
私はもう一口飲んでコップを強めにテーブルの上に置いた。
その音にミクがビックと反応した。
「実は同僚から聞いたのだけど、ミクが他の男と付き合っていると?」
「えっ、誰が言ったの?」
「美鈴さんから」それを聞いて諦めたようだった。
「で、男女の関係もあると聞いた」
暫く黙っていたが「ごめんなさい・・・・店の人の送別会の二次会で偶然に店に良く来るお客と会い一緒に飲んで・・・・」
こんなに軽い女だったのか?
「でも、私は正人が大好きだよ。セックスと愛情は違うの!」
「うるさい! そんなへ理屈いうな! 俺は軽い女は嫌いだ!」
「嫌いだなんて言わないで! SEXと愛は違うの」
「意味が分からない!もう別れよう! こんな気持ちじゃ心が持たない!」
「嫌だ! 別れない!」顔をクシャクシャにしてミクは立ち上がり涙を流していた。
暫く沈黙が続いた。
立ったまま涙を流しているミクを見て急に可哀そうに思えて「今日は帰ろう」と優しく伝えた。
「うん」とミクは答え渋々玄関のドアから出て行った。
私はドアを半分ほど開け帰って行くミクを見送っていた。
小さい後姿が寂しそうだった。すると急に振り向き小走りに駆け寄って来て私に抱きついた。嗚咽して震えていた。私は仕方なくミクを中にいれた。
一緒にベッドに寝たがミクの体に触れる事はなかった。
田舎町なので蛙の鳴き声が響き、益々大きく聞こえてくるような気がした。
私が二十五歳でミクが二十一歳の切ない夏の夜だった。次の日の朝早くミクは帰って行った。
暫くは昼食を別のレストランに食べに行き、ミクの顔を見ないで自分の気持ちを整理しようと思った。
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