自主企画:対話体の小説を読みたい。

落花亭

001:それはヒーローか、あるいは

 「また、親父に殴られたって?」


 「うん」


 「俺を呼べば、助けに行ったのに」


 「我慢できると思ったから……」


 「そうやって毎回我慢して、そのザマだろ?」


 「そうだけど……」


 「いいか? 自分さえ我慢すればいつかは……なんて傲慢だ」


 「傲慢?」


 「お前はイエス・キリストみたいな聖人じゃないだろ?」


 「どういう事? 僕には分からないよ」


 「お前は人間なんだ。こうされたら痛い。苦しい。悲しい。むかつく。人間として当たり前の感情を持っている」


 「うん……」


 「俺は、お前が隠れて泣いている事を知っている。俺が一番、分かっている。なのに何も出来ないし、させてもくれない。辛いのはお前だけじゃないんだぞ」


 「そうだね……」


 「分かったら、次こそ俺を呼べよ?」


 「うん」


 「今日はもう寝ろ」


 「ありがとう。おやすみなさい」


   ◇ ◇ ◇


 「次のニュースです。昨夜、■■県■■市の住宅で父親(48)を包丁で殺害したとして、■■県■■■中央署は息子と見られる少年(17)を殺人の容疑で逮捕しました。警察の調べによりますと、少年は支離滅裂な供述をしており、少年の体に複数のあざがあることから、父親から日常的に暴力を振るわれていたと見られ……」

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