魔女に教えてもらった道を行くと、あっさり寒村に戻ることができた。


買い物をするため村の中央になる広場に向かうと、大勢の甲冑姿が見える。


「どうしたんだい?」

「おぉお前さんは……。いやな、何でも悪い魔女のいたずらがひどく、領主様に陳情していたんだが、ようやく兵隊さんを出してもらえることになってな。魔女が討伐されれば、ここら一帯はまた平和になるさ」

「!」


近くにいた村で知り合ったおっさんに話を聞いたら、ソバさんが討伐される?そんな悪い魔女には見えなかったが、どういうことだ?


買い物もなんてしている場合じゃない!急いでソバさんの元に戻る。


「あっそ」


村に領主の兵士達が集まっていること、ソバさんが討伐されることを伝えたが、ソバさんの答えはそっけなかった。


「なぁソバさん。俺にはソバさんが悪い魔女には見えないが」

「ふーん、お前さんの目は節穴だね」

「!」

「魔女の中では悪い方だよ。なんてったって人間に肩入れしているからね」

「!!」

「まあちょっと早く寿命を迎えると思えば、あきらめもつくさね」

「いや……。そ、そうだ、俺と一緒にどこか逃げないか」

「なぜ?どこに?」

「どこはか……、まだわからないが、目の前にいる恩人を見捨てるわけにはいかねぇ。どうだ、俺も一緒に行くぜ」

「お前さんにそこまでしてもらういわれはないが」


ソバさんは鼻を鳴らす。


「恩人だからだ」


そういうや否や、ソバさんを右肩に俵担ぎして走り出す。


「アハハ、気が早いね。奴らが来るまで数日はかかるわよ。さあ家に戻った戻った。時間があるんだ、何も手ぶらで出ていくことはないさね」


それでも時間がもったいなかったので、ソバさんを下ろさずに大きく右回りしてソバさんの家に戻った。

ソバさんは家の中に戻り、10分ぐらいで外に出てきた。


「おや、荷物は」

「ここにあるでしょ」


とたすき掛けにした肩掛け鞄をポフと叩く。


「色々入るんだよ。乙女の秘密さね」

「そんなとsh」

「は?」

「じゃ行こうか」


こうしてソバさんと俺は魔女のいなくなった「魔女の森」を抜け、寄り道をしながら湖畔の街で薬師と猟師(主に薬草摘み)として暮らし始めた。

残念ながら俺には魔法の素質がなく、結局は弟子入りを許されなかったが、魔女と所帯を持てたんだ。結果オーライというやつだな。


― 終 ―


A.寒村に戻る

https://kakuyomu.jp/works/16817139556996976710/episodes/16817139556997093263

B.マイページに戻る

https://kakuyomu.jp/my/antenna/works

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魔法使いに憧れて @a_tomi

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