第12話 昼食は一人で
お腹が空いてきたので、昼食を食べる。
今日の昼食は、切られたバケットと瓶に詰められた肉のペースト状のものと、キャベツに似た野菜、ヤベツの酢漬け。飲み物は紅茶だ。すでにピッチャーの中に入っていて、あとはティーカップに入れるだけ。デザートはラスが小皿に取り分けてある。
ワゴンに乗っている昼食をテーブルの上に綺麗に並べる。アザミがいる籠は、危ないので一応ベッドの上に避けておく。
一つ一つ、丁寧に零さないようにテーブルの上に置く。ここはこだわりは強く、綺麗に置く。ちゃんとしないと美味しそうに見えないからね。
バケットの入った籠は左側。ペーストの瓶と酢漬けの瓶は右寄りの中央。食べやすいように蓋を開けておく。右側には布巾をしいてそこにペーストをつけるためのバターナイフと酢漬けを取るためのフォークを乗せる。ラスが入った小皿は左の奥、ティーカップは布巾の奥。中央に皿を一枚置いて、これで配置は完璧だ。
よし、後は紅茶を入れるだけ。ピッチャーは持ち上げると重いので、魔法で飲み物をティーカップに入れるのだ。最初にティーカップをテーブルに置いてから紅茶を呼ぶ。
「紅茶さん、紅茶さん、俺のティーカップまで来てください」
ピッチャーの中に入った紅茶は、球体が連なってティーカップの中に入っていく。あんまり入れすぎても、飲みにくいので七分目くらいまで。
これで完璧だ!俺ってばすごい!
イスに座ってパンを一切れ取る。その上にペースト状の肉をまんべんなく塗って、その上にヤベツの酢漬けを乗せる。これはほんの少し。じゃないと、すっぱ過ぎてしまうから。
パンは結構歯ごたえがあって、ざくざくと音がする。多分だけど、前世の俺だったらパンでこの口の中をケガしてたと思う。そのくらい硬い…というよりは、前世の俺の口の中が軟だった?まぁ、気を取り直して、パンを味わう。パンはしっかりと小麦粉の味がして、肉のペーストの塩気とヤベツの酸味が美味しい。
皿の上に食べかけのパンを乗せて、紅茶を一口飲む。紅茶は、渋みが少なく砂糖を入れなくてもほのかな甘さがある。冷たくても香り高く、後味はすっきりしている。
喉を潤したら、皿に乗った残りのパンも全部食べてしまう。胃の容量が小さいため、二切れでお腹いっぱいになってしまった。もっと食べられたら良いのに。
食べ終わったらワゴンに戻して、ラスが入った小皿を取りやすいように真ん中に寄せる。紅茶をもう一度入れて、今度はデザートだ。
俺がラスを食べようとしたら、アザミが籠から抜け出して、テテテとテーブルの上に乗ってきた。上目遣いで、俺をジッと見つめる。もしかして、これが欲しいの?
俺はラスを持ち上げて、アザミの前でゆっくりと左右に動かすとアザミの目線がゆっくりとそれを追いかける。
「はい、どうぞ」
俺はアザミに持っていたラスを渡した。大切そうに両手で受け取り、アザミは美味しそうにガジガジと噛んで食べ始めた。俺も、一粒、口に放り込む。甘くてすっぱくて美味しい!
「もう一個食べる?」
食べ終わったアザミにラスを見せると、ジーっと見つめてくるので、渡してあげる。フフフ、可愛いなぁ。
アザミと一緒にラスを全部食べ終え、ティーカップに入れた紅茶も飲み干した。キチンとテーブルの上を片づけて、綺麗な布巾で拭く。ちゃんと後片付けも終わったら、ベッドの上に横になった。
「お腹いっぱいになるとなんで眠くなるんだろうね?」
ふわぁとあくびを一つする。目をこすって横向きになると、アザミが隣で丸くなっていた。
「一緒にお昼寝しようね」
お昼寝して、起きたらサァリーが帰ってきてくれてたら良いな。一人ぼっちは寂しいから。
「おやすみ、アザミ」
アザミをヨシヨシと撫でながら、目を瞑った。サァリーが帰ってきたら、たくさん褒めてもらおう。一人で頑張ってお留守番したんだよって。
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