私だけモンスター倒せる件〜労働スキルを持っていない奴は要らないと町から追放されたので、仲間の女の子達と好き放題生きてみる〜
アカバコウヨウ
第一話 働けない奴は追放
「エリゼ、悪いけどお前……追放な」
太陽が気持ちいい平日の昼間。
そんなことを言ってくるのは町長だ
彼はエリゼへとさらに言葉を続けてくる。
「スキル『清掃』もなければ、スキル『運搬』もない。正直ね、お前みたいな無能をこれ以上、町に置いておくメリットがないんだわ」
「で、でも……私はこれまで町に色々貢献してきたわ!」
と、エリゼは町長へと返す。
だがたしかに、エリゼは普通の人に比べ無能だ。
なんせ普通の人ならば全員持っている一般的な『労働スキル』。
いわゆるスキル『清掃』やスキル『運搬』、スキル『接客』、スキル『皿洗い』などを持っていない。
その代わりにあるのは——。
スキル『狩猟』
狩りをすることができる。
などという用途不明のスキル。
無論『狩り』はエリゼとて知っているが——不老不死のモンスターに支配され、野生の動物が絶滅したこの世界で、いったい何を狩るというのか。
そう、この世界はモンスターのものだ
だから人間達は各地にこのような町——シェルターを作って細々と暮らしているのだから。
さて、話はややそれだが。
それでもエリゼはしっかりとこの町に貢献してきた自負がある。
「私は両親の遺産の全てを、この町に無償で渡してきたわ!」
「お前の両親はこの町の前町長だ。その遺産を我々に明け渡すのは当たり前だろ!」
「それに私は、あなた達の理不尽な要求にも全部従ってきた! 家も全部明け渡して……言われた通り、あなた達の奴隷として長年ここで——」
「ちっ……うるせぇな!」
「痛っ」
と、エリゼは思わず声を上げてしまう。
町長がエリゼの髪を——母譲りの金の長髪を乱暴に掴み上げてきたからだ。
「服着せてもらってるだけ、ありがたく思え無能のクソ女が! まぁてめぇの服はただのボロ布だがな!! ギャハハハハッ!」
と、行ってくる町長。
彼はエリゼへとさらに言葉を続けてくる。
「たく……働けないし、もう金もこれ以上搾り取れねぇ! そんな奴に用はねぇって言ってんだよ!」
「っ……はな、して!」
「ほらよ!」
と、突き飛ばすようにエリゼを放してくる町長。
彼はエリゼへとさらに言葉を続けてくる。
「いいから、さっさとこの町から出て行け! お前みたいな能無しでも、人並みに飯は食うんだ——このご時世、食糧を確保するだけでも困難なのに、どうしてお前にその食糧をやらにゃあならんのだ」
「でも、外にはモンスターが——っ」
「人に迷惑かけて死ぬより、モンスターの餌になって死んだ方がいいだろうが!!」
と、エリゼの言葉を断ち切って言ってくる町長。
その直後。
ガッ!
と、エリゼの体にぶつかる硬い何か。
それは石だ。
「っ」
と、エリゼが周囲を見ると、そこにいたのは町の人々。
いったいいつの間に集まってきたのか、この町の住人達がエリゼを睨み、彼女へ石を投げながら言ってくる。
「でてけ!」
「役立たずはしね!」
「金がないなら出てけ!」
エリゼは思わず言い返したくなる。
二十世代ほどが遊んで暮らせるほど、両親がエリゼのために蓄えてくれた財産。
それら全てを半ば強引に彼女から奪い、使い潰した輩が何を言うのか。
だがしかし。
エリゼの直感がつげている。
外に出たらモンスターに殺される。
けれど、ここにこれ以上居ても、こいつらは本当にエリゼを殺す。
そして。
(死ぬのは嫌……だけど、こんな人たちに殺されるのは、もっと嫌)
などなど。
そんなことを考えている間にも、飛んでくる言葉と石。
エリゼはそんな彼等を一瞥したのち無言で背を向け、町の出口である門へと歩き出すのだった。
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