中年時代は踊る

羽弦トリス

第1話充実した人生

西正樹は後輩の田山と今月入社の小森光一改め、小森めぐみはヤードに並んだ中古車のチェックをしている。

外装のキズ、車内のオーディオ類の確認。

夏のこの作業は、サウナより暑い。

車内は70℃以上あるのだから当たり前である。

めぐみは、仕事の飲み込みが良く英語も得意なので戦力になった。

そう、この中古車は海外向けなので、書類は英語なのだ。

小森の大学は今一ピンと来ない大学だが、偏差値はまあまあである。

午前10時。

正樹は田山に千円渡し、コーヒーとかき氷買って来るように頼んだ。


3人は木陰でかき氷を食べていた。

「めぐみさんは、僕よりも仕事できますね。僕は英文、筆記体で書けないですから。西主任といい勝負じゃないですか?」

めぐみは照れて、

「西主任に拾われたんで、一生懸命頑張ってるだけです」

かき氷を食べて、アイスクリーム頭痛を喫した正樹は、

「くぅぅ、田山、子供はどうだ?」

「かわいくてたまんないっス」

「子供は直ぐに大きくなるから、精一杯思い出を作りなさい。それより、今日の仕事は3時半に終わりそうだ。また、事務所の裏側の階段でずらかろう。めぐみ今夜予定は?」

かき氷と格闘中のめぐみは、

「予定はないよ」

「田山は?」

「ないっス」

「じゃ、着替えたら『千代』に行くぞ!オレの奢りだ!」

「やったー。また、凛ちゃんいるかなぁ」

「凛って、かわいいよな。めぐみ」

「私には勝てないよ」

クスクス

クスクス

「何それ?何の笑い?」

「めぐみさんは、主任と同い年なんです。凛は19歳です。勝てません」

「じゃ、私のオッパイ見る?」

「……参りました」


予定通り3時過ぎに仕事が終わった。事務所に寄らず更衣室で正樹はスラックスと半袖ワイシャツを着て、田山はジーンズにTシャツを着た。めぐみは女子大学生見たいな格好をしていた。

3人は会社の裏から脱出した。


昼の11時開店の居酒屋千代に到着した。

「オッス、ばばあ」

「西さん、今日は早いわね」

「凛ちゃん、こんにちは」

「こんにちは。今日は生からですか?」

「当たり前だ、お前らも、生中でいいよな?」

「うん」

「はい」

3人は生ビールで乾杯した。今日は金曜日。

みんな、しこたま酒を飲んだ。

6時に二次会を予定したが、田山はまだ子供が生まれたばかりだから、帰宅した。

正樹とめぐみは二次会へ向かった。仕事が終わった犬飼広樹を二次会に誘った。

二次会の割烹料理屋早水に正樹とめぐみは一緒に徒歩で向かった。

「♪しっあわせは~、歩いてこないっ、だーから歩いて行くんだね~、一日一歩、三日で三歩、三歩進んで二歩下がる~じ~んせいはゼンジー北京~」

「正樹君、違う違う」

すると、夜の帳が下りた頃聞き覚えのある声がした。

「♪北京、ダブリン、キャプテン、マラリア」

「お、お前はケーシー高峰!否、ヒロだな!」

「バレたか。ま、いいだろう。今日は給料日だったんだ」

正樹と広樹は喫煙してから、3人で入店した。

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