第26話 やめました
すちゃ
体術の授業。
20年の地獄を生きた俺にとっては、ぬるい内容だ。
というか、そもそも、改変後の世界に比べると、数段ランクが下がっている。
「ば、ばかな。兎中単独に負ける、だと……?」
体術の授業でいつもトップ成績の、畑山。
ステータスでは正直負けているのだけど。
戦闘技術が全然違う。
ので、赤子の手をひねるように、負かした。
「凄いな、羽修。一気に強くなったな。スキルが自分に乗るようになったのか?」
「いや、ただ単に、レベルがたっぷり上がっただけだ」
龍二の問に、答える。
レベルやステータス以前に、戦闘経験のせいだとは思うけど。
龍二とも模擬戦をして。
あっさりと倒す。
改変後の龍二とやれば、一瞬で負けるけどな。
20年のアドバンテージは大きい。
実技でも、勉学でも、文句なしにトップの成績がとれた。
……
これ、学校行く理由ないよな?
--
「うわ、何これ。強くなりすぎて、自分じゃないみたい」
栗原が絶叫する。
目にもとまらぬ速度で、敵を屠っていく。
「自分じゃないというか、もはや人間やめている気がします」
模合が、困惑しながら言う。
さっき自分で出した炎にびびってた。
「レベルが大量に上がったと言ってたよな。支援スキルがチートどころじゃなくなっている」
やはり超人と化した龍二が言う。
結局。
授業の残り時間にかなりの余力を残したまま。
最下層に到着。
そして、あっさりと迷宮主を倒した。
僕でもあっさり倒せるような敵ばかりだったけど。
流石にステータス強化受けた龍二達の方が強い。
これは……何というか……
--
帰宅。
「おかえりなさいにゃ!」
「おかー」
ミアと杏那に迎えられる。
「学校どうだったにゃ?」
「そうだね。お日様の下を普通に歩いても殺されないって良いよね」
「……過酷な世界だったんだにゃ……私が裁定者やってた時も、そこまで酷い世界は見たことないにゃ」
「裁定者とやらがいないからこそ、あんな世界になったんだろうね」
どちらかの世界が完全に滅びるまで泥沼だったからなあ。
「もう学校行きたいとは、口が裂けても言わないけどね」
杏那がうんざりした顔で言う。
まさか、本当に世界が滅びるとは。
正確には滅びる寸前で無かった事になったけど。
「行かなくて良いよ……というか、僕も学校やめてきたしね」
「にゃ!?」
「え!?」
いや、だって。
「授業レベルはしょぼいし、将来仕事しなくてもお金はあるし、レベルを上げる必要もないし」
というか最後は世界1つと引き換えのチートアイテムでレベル上げてたしな。
「……あと、一番一緒に居たい人は、学校では会えないしね」
「にゃあ、照れるにゃあ」
ミアは2番目だね。
「そんなに私に会いたいの?しょうがないね!」
「うん、杏那と一緒にいたい」
「……」
いや、自分で言っておいて、認めたら赤くなって黙るってどうなの。
[学校に行かない……その選択が、世界を滅ぼす事になろうとは]
いや、本当に絶対にやめてよ?
僕が学校を辞めることと、内政コマンド関係ないよね?
世界改変しなくても、僕は学校やめられるよね?
[……そこに気づきますか]
気づきます。
[ですが……龍二さん達まで学校を辞めるとなると……流石に何らかの干渉が必要かと]
龍二が学校やめなくて良いよ!?
むしろちゃんと学校行ってて!
[あれも駄目、これも駄目では、私が内政コマンド使えませんよ?]
使うなああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
[大声で頭の中で怒鳴らないで下さい。もっと小声でもちゃんと聞こえます]
そもそも、何で僕の頭の中を常時読んでるの!
[自意識過剰ですね。ちゃんと隔たり無く、全人類の頭の中を読んでいますよ。自分だけ特別とか、恥ずかしいですね!]
いや、それどれだけ凄いのさ。
流石に嘘だと分かるよ。
[てへぺろ]
全人類の頭の中を常時読むとか。
アカシックレコードじゃないんだから。
「という訳で……明日は、朝から海に行こう」
めいいっぱい、今を楽しもう。
またいつ、世界の秩序が乱れるか分からないのだから。
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